亭主関白の堅物公爵がいつの間にかモフモフになって甘えて来ます

初瀬 叶

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第6話

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「こんな事で私、離縁しないわよ?」

私にはそんな気持ちはない。実家に帰るのは負けた様に感じる……それも本心だが、たったこれだけの事で?とも思うのだ。お母様も結婚は辛い事、悲しい事もあると言っていたし……何よりまだ半年だ。この先に何が起こるか分からない。

「……。分かりました。じゃあ、とにかく今日は断りましょう!」

「断るの?でも今日が妊娠しやすい日らしいのだけど……」

「もしかして……この月一ルールを決めたのも旦那様?奥様が嫌がるから……ではなく?」

「そうよ?妊娠しやすい日に営みを行うのが一番合理的だって……。でもまだ妊娠しないのよね」

私はペタンコの自分のお腹に手を当てる。こればかりは神のみぞ知る……だ。

「奥様、今日は体調が悪いと言って断りましょう。それで旦那様が怒り出す様であれば、離縁です!離縁一択!」

「じゃあ、怒らなければ?」

「その時は私に考えがあります。旦那様にほんの少し猶予を与えてやっても良いです」

何故かリンジーの方が物凄く立場が上の様な物言いで、彼女はこの話を締めくくった。

私には自室で休む様に……とリンジーは言って、旦那様の元へと今夜の営みを断りに言った様だ。

「断って良かったのかしら……?」

私は自分の寝台に寝っ転がりながら呟いた。
高い天井を眺めていると、何となく実家での事が思い出される。私は本当に世間知らずだったと。


その夜。断られた旦那様が何と言ったのかは知らないが、翌日、朝食の時に珍しく旦那様に話しかけられた。

「体調はどうだ?」

パクパクとパンを食べている私は一瞬、何を尋ねられているのか分からなかった。

「体調……?」

「昨晩、具合が悪かったのだろう?」

ハッとした。そう言えば体調が悪いことにしてたんだった。

「あ!えっと……全くもって大丈夫です!一晩寝たら治っちゃったみたいで……アハ、アハハ……」

冷や汗が出る。嘘をつくのは苦手な性分だ。


「だろうな。それだけ食欲があれば問題ないだろう」

殆ど空になった私の皿に視線が注がれる。……もう少し遠慮すれば良かったかもしれない。


「ハハハ……」

「来月には体調を整えておくように。こちらも準備しておく」

旦那様はそう言い残すと、食堂を出て行った。準備……?はて?


「奥様、今日はとても綺麗な苺が手に入りましたよ」
旦那様が出て行った食堂で、給仕が私に声を掛けた。

「苺?!私、大好きだわ」

ニッコニコの私につられて給仕も笑顔になる。私は昨晩体調が悪いと嘘をついた事を、すっかりまた忘れてしまった。
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