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第43話
私はそのまま王宮を飛び出した。
私を迎えに来ていた公爵家の馬車の御者は門から出てきた私に驚き声を掛ける。
「奥様?!」
「お願い!手分けして銀色の毛並みを持つ犬を探し出して欲しいの!」
私は御者の腕をギュッと掴む。そんな私に御者も面食らっていた。
「銀色?ネルが逃げ出したんですか?」
「違うの!代わりの銀色の犬を探さなきゃ、ネルがとられちゃう!私はあっちを探すから、貴方はあっちね!」
私は説明もそこそこに、走り出した。
「ちょ、ちょっと奥様!」
御者の声にも振り返る事は出来ない。足を止めている時間はないのだ。
だからと言っても何処を探せばいいかも分からない。何のあてもなく、私は闇雲に走り回った。
白っぽい犬や、灰色っぽい犬は見かけたが、銀色の毛並みの犬は見当たらない。
周りはもう真っ暗だ。流石に走り続けることは出来なくなった。だけど私は足を止めることなくトボトボと犬を探して歩き続けた。
「奥様……!」
暗闇にランタンの光がぼんやりと近づいて来た。
「スティーブ?」
庭師のスティーブの声だ。
「心配しました……!もう夜半になります!さぁ、お屋敷へ戻りましょう」
光に照らされたスティーブの額には汗が浮かんでいた。私を探し回ってくれていたのだろう。
「でも……っ!」
「何があったかわかりませんが、皆心配しています。詳しいことは帰りながらゆっくりと」
私はスティーブに背を押され、家の方へと歩き始めた。
屋敷に戻った私は、食事を食べる気にもならず、着替えをして部屋で項垂れていた。リンジーも探してくれていたようで、私の無事な顔を見て目を潤ませていた。心配をかけたことは申し訳なく思うが、今は何も手につかない。
── コンコンコン
ノックの音にノロノロと返事をする。
「……はい」
扉から顔を覗かせた執事は心配そうに声をかけてきた。
「奥様、スティーブから話は聞きました。……ネルのことは諦めては如何でしょうか?」
スティーブにもそう言われた。他の犬を飼ったらどうですか?なるべく似た犬を探しましょう、と。
私は首をブンブンと横に振った。
「ダメなの。ネルじゃないと……」
「奥様がネルを大切に思っていらっしゃることは分かっております。しかしお相手は王女です。殿下もきっと『諦めてくれ』と仰るでしょうね。私達臣下はそう言われれば従うしかありません」
私だって頭では分かっている。でも私が諦めたら旦那様はどうなるの?そう思うと胸が締め付けられる。
私の膝の上の手の甲に涙がポタリと落ちた。
私を迎えに来ていた公爵家の馬車の御者は門から出てきた私に驚き声を掛ける。
「奥様?!」
「お願い!手分けして銀色の毛並みを持つ犬を探し出して欲しいの!」
私は御者の腕をギュッと掴む。そんな私に御者も面食らっていた。
「銀色?ネルが逃げ出したんですか?」
「違うの!代わりの銀色の犬を探さなきゃ、ネルがとられちゃう!私はあっちを探すから、貴方はあっちね!」
私は説明もそこそこに、走り出した。
「ちょ、ちょっと奥様!」
御者の声にも振り返る事は出来ない。足を止めている時間はないのだ。
だからと言っても何処を探せばいいかも分からない。何のあてもなく、私は闇雲に走り回った。
白っぽい犬や、灰色っぽい犬は見かけたが、銀色の毛並みの犬は見当たらない。
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「奥様……!」
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「スティーブ?」
庭師のスティーブの声だ。
「心配しました……!もう夜半になります!さぁ、お屋敷へ戻りましょう」
光に照らされたスティーブの額には汗が浮かんでいた。私を探し回ってくれていたのだろう。
「でも……っ!」
「何があったかわかりませんが、皆心配しています。詳しいことは帰りながらゆっくりと」
私はスティーブに背を押され、家の方へと歩き始めた。
屋敷に戻った私は、食事を食べる気にもならず、着替えをして部屋で項垂れていた。リンジーも探してくれていたようで、私の無事な顔を見て目を潤ませていた。心配をかけたことは申し訳なく思うが、今は何も手につかない。
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ノックの音にノロノロと返事をする。
「……はい」
扉から顔を覗かせた執事は心配そうに声をかけてきた。
「奥様、スティーブから話は聞きました。……ネルのことは諦めては如何でしょうか?」
スティーブにもそう言われた。他の犬を飼ったらどうですか?なるべく似た犬を探しましょう、と。
私は首をブンブンと横に振った。
「ダメなの。ネルじゃないと……」
「奥様がネルを大切に思っていらっしゃることは分かっております。しかしお相手は王女です。殿下もきっと『諦めてくれ』と仰るでしょうね。私達臣下はそう言われれば従うしかありません」
私だって頭では分かっている。でも私が諦めたら旦那様はどうなるの?そう思うと胸が締め付けられる。
私の膝の上の手の甲に涙がポタリと落ちた。
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