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第58話
「でも、どうしてその叔父さんがあなたからお金を?」
「家を出て行った後……今まで世話をしてやった恩を返せって。お前たちを食わせる為に金がかかったんだから、返すのは当然だろうって」
「そんな……っ!」
「叔父さんも仕事出来なくなって……仕方ないんですよ。でも俺も学がないし、その時はまだ子どもだったから碌な仕事に就けなくて。成人してから、何とか仕事に就いても、叔父さんからの金の無心は酷くなっていって」
「それであそこで働くことになったの?」
「あそこ給料良くて。妹ももう十歳になったし、一人で留守番出来るって言うから……」
レオはそう言いながらも妹を心配している気配を漂わせていた。夜、家を空けるのは不安だろう。
「なら……うちの屋敷で働── 」
思わず言った一言を、レオは少し強い口調で遮った。
「止めてください。同情されたくありません」
あぁ……余計な一言だったと後悔する。調子に乗りすぎた。
「ごめんなさい。そんなつもりじゃ──」
「いえ……俺の方こそすみません。でも、もうこれ以上は世話になりたくありませんので」
レオの心が閉ざされた音がした。
「──そうね。ごめんなさい。もう帰るわ。妹さん、早く良くなると良いわね」
そう言って立ち上がった私に、レオは慌ててまた謝った。
「こんなにお世話になっておきながら、生意気なことを言ってしまって、すみません。お金は返さなくて良いって言っていただいたので、いつの日か何かお礼を──」
「……なら、またクラブに顔を出した時には私のお話相手になってもらえるかしら?」
もう二度とあそこへは足を踏み入れる気持ちは無かった。でも、今の私にはあのクラブしかレオとの接点はない。この言葉ぐらいしか、彼の肩の荷を降ろす手段が見つからなかった。
手を差し伸べることは容易い。でも、それをレオは望まないだろう。
「もちろんです。俺で良ければ」
レオは少しぎこちない笑顔を見せた。私はもう何も言わず、ここから立ち去るべきだと考える。
「じゃあ、元気で。頑張ってね」
もう会えないかもしれない。そう思いながら言葉をかけた私にレオは意外な返答をした。
「待ってます。あのクラブで」
と。
馬車に着いた時にはすでに日が傾きかけていた。
「さっきはありがとう」
御者に声をかけて、私は馬車に乗り込もうとするも、御者は心配そうに私に言った。
「あの……先ほどの若者は……?」
クラブの事は秘密。私が言葉を探していると、御者は何かを察したように頷いた。
「……旦那様には内緒にしておきます」
「違うわ。別にそんな言えないような関係じゃ── 」
そんな私の言葉に被せるように御者は馬車の扉に手をかけながら言う。
「私にも旦那様の態度に思う所があります。いいんです、いいんです。さぁ、帰りましょう」
御者が私に手を差し出す。馬車に乗れと言っているのだろうが、誤解されては困る。
「違うの!違うのよ!」
あぁ、あのクラブのことをどこまで口にして良いのだろう。本当のことを言えないことがもどかしい。
「分かっておりますとも!さぁ、さぁ!」
御者の勢いに押され、私は馬車に乗り込んでため息をついた。
「家を出て行った後……今まで世話をしてやった恩を返せって。お前たちを食わせる為に金がかかったんだから、返すのは当然だろうって」
「そんな……っ!」
「叔父さんも仕事出来なくなって……仕方ないんですよ。でも俺も学がないし、その時はまだ子どもだったから碌な仕事に就けなくて。成人してから、何とか仕事に就いても、叔父さんからの金の無心は酷くなっていって」
「それであそこで働くことになったの?」
「あそこ給料良くて。妹ももう十歳になったし、一人で留守番出来るって言うから……」
レオはそう言いながらも妹を心配している気配を漂わせていた。夜、家を空けるのは不安だろう。
「なら……うちの屋敷で働── 」
思わず言った一言を、レオは少し強い口調で遮った。
「止めてください。同情されたくありません」
あぁ……余計な一言だったと後悔する。調子に乗りすぎた。
「ごめんなさい。そんなつもりじゃ──」
「いえ……俺の方こそすみません。でも、もうこれ以上は世話になりたくありませんので」
レオの心が閉ざされた音がした。
「──そうね。ごめんなさい。もう帰るわ。妹さん、早く良くなると良いわね」
そう言って立ち上がった私に、レオは慌ててまた謝った。
「こんなにお世話になっておきながら、生意気なことを言ってしまって、すみません。お金は返さなくて良いって言っていただいたので、いつの日か何かお礼を──」
「……なら、またクラブに顔を出した時には私のお話相手になってもらえるかしら?」
もう二度とあそこへは足を踏み入れる気持ちは無かった。でも、今の私にはあのクラブしかレオとの接点はない。この言葉ぐらいしか、彼の肩の荷を降ろす手段が見つからなかった。
手を差し伸べることは容易い。でも、それをレオは望まないだろう。
「もちろんです。俺で良ければ」
レオは少しぎこちない笑顔を見せた。私はもう何も言わず、ここから立ち去るべきだと考える。
「じゃあ、元気で。頑張ってね」
もう会えないかもしれない。そう思いながら言葉をかけた私にレオは意外な返答をした。
「待ってます。あのクラブで」
と。
馬車に着いた時にはすでに日が傾きかけていた。
「さっきはありがとう」
御者に声をかけて、私は馬車に乗り込もうとするも、御者は心配そうに私に言った。
「あの……先ほどの若者は……?」
クラブの事は秘密。私が言葉を探していると、御者は何かを察したように頷いた。
「……旦那様には内緒にしておきます」
「違うわ。別にそんな言えないような関係じゃ── 」
そんな私の言葉に被せるように御者は馬車の扉に手をかけながら言う。
「私にも旦那様の態度に思う所があります。いいんです、いいんです。さぁ、帰りましょう」
御者が私に手を差し出す。馬車に乗れと言っているのだろうが、誤解されては困る。
「違うの!違うのよ!」
あぁ、あのクラブのことをどこまで口にして良いのだろう。本当のことを言えないことがもどかしい。
「分かっておりますとも!さぁ、さぁ!」
御者の勢いに押され、私は馬車に乗り込んでため息をついた。
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