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第60話
私はぐっすり眠っていて知らなかったのだが、夜中に帰って来たレニー様は大層ご立腹だったらしい。
「今朝早くに辺境へと出発されました」
執事の言葉に私は朝食をとりながら、頷いた。
「どうして隣国は護衛をもっとたくさんつけておかなかったのかしら?」
今回の王太子殿下の婚約式に、隣国の皇太子殿下がお祝いに駆けつける事が決まったことも急だったらしいのだが、皇太子殿下の乗った馬車が襲われたという一報が入ったのが、昨晩だった。
襲われた場所は国境沿いの山道。そこで随分と隣国側の護衛が減ってしまったとのことで、こちらから助っ人として選り抜きの近衛が派遣されることとなった。……らしい。まぁ、私は執事に聞いただけだが。
私の問いに執事は声を潜めた。
「どうも……隣国では皇太子を亡き者にしようと画策している連中がいるとか」
「えっ?!それ本当?!」
私は思わず大きな声を出して、両手で口を覆った。
改めて私も何故か声を潜める。
「誰が?」
「あちらの国では側妃がどうも力を持っているようで、その息子を皇太子に据えたいと思っている連中が少なからず居るとか……」
「はぁ……跡継ぎ問題ね。じゃあ護衛の数もわざと少なく?」
「そこは想像でしかない……と、旦那様は仰っておりましたが、あながちその予想は外れてはいないのかもしれません」
「もしかして皇太子殿下が来たのって……」
「『避難』でしょうなぁ。もちろん正妃のお子様でいらっしゃっる殿下をそのまま皇帝に……と強く望んでいる勢力もありますので」
「じゃあゴタゴタが終わるまで我が国に滞在なんてこと……」
「ありえますね」
執事はウンウンと頷いた。こりゃ、変な火種にならなければ良いが。
「面倒なことにならなければ良いわね」
「旦那様もそれを懸念しておりました。『何で僕が?』と言いながら出発しましたので」
今回の派遣隊の隊長に任命されたレニー様はどうも嫌々旅立ったらしい。まぁ、面倒事に巻き込まれそうで、嫌だったのだろう。私はそう思っていたのだが。
「ダンスレッスンが出来ない事を嘆いておりました。せっかく覚えたステップを忘れたらどうしてくれるんだ!とも」
その執事の言葉に私は目を丸くした。どれだけダンスに自信がないのかしら?
「運動神経は良いんだもの。既に身体が覚えているわよ」
私の言葉に執事は少しだけ厳しい顔をした。
「ところで……昨日の件ですが……」
あぁ……レニー様からの追求を免れたと思っていたのに……。
「何か?」
「……平民にお知り合いですか?」
御者も執事の追求から逃げられなかったと見える。
「ええ。メイドや使用人にも居るでしょう?」
もちろん、ここでもたくさん働いている。
執事は私の答えが不満だったようで眉を思い切り顰めた。でも、それに反論することが出来なかったようで、黙り込む。
私は彼の存在を無視して朝食を食べ進めた。
執事は諦めたように私に背を向ける。しかし、一言。
「ブラシェール伯爵家の名を汚すことだけはしないでください」
そう言って食堂を出て行った。
「今朝早くに辺境へと出発されました」
執事の言葉に私は朝食をとりながら、頷いた。
「どうして隣国は護衛をもっとたくさんつけておかなかったのかしら?」
今回の王太子殿下の婚約式に、隣国の皇太子殿下がお祝いに駆けつける事が決まったことも急だったらしいのだが、皇太子殿下の乗った馬車が襲われたという一報が入ったのが、昨晩だった。
襲われた場所は国境沿いの山道。そこで随分と隣国側の護衛が減ってしまったとのことで、こちらから助っ人として選り抜きの近衛が派遣されることとなった。……らしい。まぁ、私は執事に聞いただけだが。
私の問いに執事は声を潜めた。
「どうも……隣国では皇太子を亡き者にしようと画策している連中がいるとか」
「えっ?!それ本当?!」
私は思わず大きな声を出して、両手で口を覆った。
改めて私も何故か声を潜める。
「誰が?」
「あちらの国では側妃がどうも力を持っているようで、その息子を皇太子に据えたいと思っている連中が少なからず居るとか……」
「はぁ……跡継ぎ問題ね。じゃあ護衛の数もわざと少なく?」
「そこは想像でしかない……と、旦那様は仰っておりましたが、あながちその予想は外れてはいないのかもしれません」
「もしかして皇太子殿下が来たのって……」
「『避難』でしょうなぁ。もちろん正妃のお子様でいらっしゃっる殿下をそのまま皇帝に……と強く望んでいる勢力もありますので」
「じゃあゴタゴタが終わるまで我が国に滞在なんてこと……」
「ありえますね」
執事はウンウンと頷いた。こりゃ、変な火種にならなければ良いが。
「面倒なことにならなければ良いわね」
「旦那様もそれを懸念しておりました。『何で僕が?』と言いながら出発しましたので」
今回の派遣隊の隊長に任命されたレニー様はどうも嫌々旅立ったらしい。まぁ、面倒事に巻き込まれそうで、嫌だったのだろう。私はそう思っていたのだが。
「ダンスレッスンが出来ない事を嘆いておりました。せっかく覚えたステップを忘れたらどうしてくれるんだ!とも」
その執事の言葉に私は目を丸くした。どれだけダンスに自信がないのかしら?
「運動神経は良いんだもの。既に身体が覚えているわよ」
私の言葉に執事は少しだけ厳しい顔をした。
「ところで……昨日の件ですが……」
あぁ……レニー様からの追求を免れたと思っていたのに……。
「何か?」
「……平民にお知り合いですか?」
御者も執事の追求から逃げられなかったと見える。
「ええ。メイドや使用人にも居るでしょう?」
もちろん、ここでもたくさん働いている。
執事は私の答えが不満だったようで眉を思い切り顰めた。でも、それに反論することが出来なかったようで、黙り込む。
私は彼の存在を無視して朝食を食べ進めた。
執事は諦めたように私に背を向ける。しかし、一言。
「ブラシェール伯爵家の名を汚すことだけはしないでください」
そう言って食堂を出て行った。
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