愛人を作ってもいいと言ったその口で夫は私に愛を乞う

初瀬 叶

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第63話

私はある個室に連れて行かれた。

「ここは私専用のお部屋。前回はご挨拶出来なくてごめんなさいね。……ちょうど忙しかったものだから」

何で?と訊くのはやめよう。そうしよう。それがいい、きっと。

豪華な調度品は金とワインレッドで統一され、眩しすぎて何だか落ち着かない。

大きな長椅子に優雅に腰掛けたマドリー夫人を挟むように右に二人、左に三人の男性が控えている。右の一人は夫人の手を握り、左の一人は夫人に甘えるように彼女の肩に頬を寄せていた。
何となく目のやり場に困る光景だ。


「いえ。私もご挨拶もしないままお暇してしまいまして── 」

「で、気に入った子はいたかしら?」

「はい?」

思わず聞き返す。

「貴女のお眼鏡にかなう男性はいたの?と訊いたのよ。なんと言っても美丈夫で有名なレニー様の奥様ですもの……そんじょそこらの男では満足出来ないでしょう?でもうちの子達も綺麗な子ばかりよ?ね?」

夫人が頬を寄せていた男性の頭を撫でる。

「あの……私、前回ここにご招待いただきましたが、ここがその……そういう場所だとは知らずに……」

「あら?そうなの?彼女が貴女のことをそう言っていたから……」

嫌な予感がする。

「『彼女』とは……ここで、アリーと呼ばれている方のことでしょうか?」

「フフフッ。そうよ?アリーが『レニーに構って貰えなくて寂しがっているようだから』って。どうしてもと言うから、貴女をここの会員にする許可を出したのよ」

夫人はそう言いながら、ニッコリと笑う。その目は何となく私を哀れんでいるように見えた。

私はそう言われて頭が真っ白になる。何故私とレニー様との間に営みがないことをアリシア様が知っているのか……答えは一つだ。レニー様が言わなきゃ、誰が言うというのか。

次に私は頭が痛くなった。
なんてことを他人に話しているのだ、あの恥知らずは!
私は思わず頭を抱える。夫人だけでなく、周りの男性達からも哀れまれている気がしてきた。

そんな視線に負けるわけにはいかない。私は少し大袈裟に驚いてみせた。

「まぁ!彼女はそんな誤解を?ウフフフッ。心配して下さったのかしら?でも、全くそんなこと御座いませんのよ?」

誰がこんな所で本当のことを言うものか。
しかしレニー様には呆れ果てた。好きな女に誤解されたくないからって、まさか夫婦の夜のことまで話しているなんて。……あぁ、もう顔も見たくない。

しかし、私にはもう一つ疑問があった。良い機会だ、夫人ならその答えを持っているかもしれない。

「あら……そうなの?」

夫人は少し残念そうだ。

「ええ。まだ新婚ですから。……ところで……何故アリシ……アリーはここの会員に?」

「彼女は私の学園時代の同級生なの。一応学友って言うのかしらね。彼女が仲良くしているご婦人がここの会員で、そのツテでね。ほら……彼女のご主人はお仕事が忙しいし、彼女も寂しいんじゃないのかしら?レニー様も結婚しちゃったし」

そう言って夫人はまた私を哀れんだ目で見た。

ん?これって……どういう意味?もしやレニー様とアリシア様って……禁断の関係なの??

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