愛人を作ってもいいと言ったその口で夫は私に愛を乞う

初瀬 叶

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第74話

レニー様がおかしい。

赤くなったり青くなったり、百面相のようだ。本人が気づいているかは別だが。

エスコートされて私の手を添えたレニー様の腕が熱い。……熱でもあるのかしら?
え?今、胸を押さえた?……心臓に病でも……?
正直心配だ。一曲踊ったら帰りましょうと提案したのに、否定されたし……何故そんなに夜会に残る事にこだわるのか……。

そうこうしていると名前が呼ばれ会場に入る。

王宮での夜会など、久しぶりだ。やはり今回は殿下の婚約者のお披露目を兼ねているせいか、いつもより豪華に思えた。
皆の装いを見るだけでも心がウキウキしてしまう。……こんな私だがやはり綺麗なものは好きだ。


「会場も凄く豪華ですね。皆様も華やかでとても綺麗」

私の口から思わずため息が漏れる。

「君が一番綺麗だろ」

え?聞き間違い?それとも空耳?レニー様が私を綺麗だと言った?いやいやいや、そんなわけがない。あ~もしかしてこのドレスを褒めてくれたのかしら?緑色に金色の細かい刺繍が美しい。私も気に入っている。……ちょっと露出過多だが。


私は驚いたせいで、ついレニー様の顔を穴が空くほど眺めてしまった。
え?次は咳?やはりレニー様は体調が悪いのではないだろうか。


ホールに到着した私達は歩みを止める。これから次々と上位貴族が入場するのを、待っておかなければならない。私はレニー様の腕をそっと離した。

その途端、レニー様がキッと私を睨む。

「何故離す」

「立ってるだけですから、エスコートしていただかなくても大丈夫です」

「そ、そうか……。ところでショールはどうした?」

「は?入り口預けてきましたよ?気づきませんでした?」

「そ、そうだったか?……というか寒くないのかその格好」


レニー様が顔をしかめる。

「おしゃれには我慢が必要です」

「……女は大変だな」

レニー様は少し呆れたように言った。
会話が途切れ、私達はまた入場者に視線を移す。

「あ……クラッド様とアリシア様です」

今入場してきた二人の姿に私は名を口にした。

「あれ?兄さんも参加か?アリシアは欠席だと言っていた気がしたが」

「予定が変わったのかもしれませんわね」

アリシア様はクラブに行く時の大人っぽいドレスではなく、まるで少女のようなフワフワとした装いだ。それが彼女に良く似合った。

アリシア様は私達の姿を見つけると、小さく手を振った……もちろんレニー様に。やはり私は彼女の視界に入っていないらしい。うん、分かってた。



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