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第75話
全ての参加者の入場が終わり、最後に王族の皆様が姿を現した。
王太子殿下の隣には、この国の公爵令嬢イメルダ様が、晴れて婚約者という立場で誇らしげな表情を浮かべ立っていた。
「結局、我が国のご令嬢になりましたね」
私が小声でレニー様に言うと、彼はその高い背を少しだけ屈めて、答えた。
「宰相が国内の地盤強化を押していたからな。国外に目を向けるのは、もう少し先になりそうだ」
という事は、次の代── 二人の子どもに王子が生まれたら他国から姫を娶ることになるという意味だろうか。
「議会もそのお考えで?」
するとレニー様は更に私の耳元に口を近づける。
「数代前。他国の王女を王妃にした時に随分と干渉されてな。それ以降他国の王女との婚姻に慎重なんだ。議会だけでなく、今は殆どの貴族が同じ考えだろう」
おじ様にも聞いたことがある。他国からの干渉が原因で、随分昔に国が荒れた……と。
私はまた背筋をピンと伸ばして立つ、隣のレニー様をチラリと見る。
脳筋で剣を振るしか能のない男だと思っていたが、それだけでもないらしい。
「ん?何か僕の顔についてるか?」
私の視線に気付いたレニー様が若干頬を赤く染め、私に尋ねる。
「いえ……。最近はまともに会話出来ているなぁと思いまして」
「まとっ……!僕はいつもまともだろうが!」
小声ながらも、反論するレニー様。
「いえ、そういう事ではなく。ブラシェール伯爵になられたという自覚が── 」
「それなら……君のお陰だ」
『自覚が芽生えたような気がします』という少し失礼な私の言葉を遮ったのは、彼の意外な一言だった。
「私の……?」
「そうだ。君が僕の目を覚まさせてくれた。君がブラシェール家の為に考えてくれること、努力してくれていることの全てが、僕に当主としてもっとしっかりしろ!と言ってくれているようだった。とはいえ、僕はまだまだ努力が必要だがな」
「レニー様……」
私が当然だと思ってやっていた一つ一つが、レニー様にもきちんと届いていたようで嬉しくなる。
「そ、そこで……だな。君に謝らなくては……」
口籠りながらレニー様が私の方へと身体ごと向き直った── と、同時に、音楽が鳴り響き、王族の皆様がフロアへと歩み出た。ダンスのスタートだ。
「あの……その、子作──」
「へ?あの、聞こえませんけど?」
真っ赤になりながら喋るレニー様の声が小さすぎて、音楽に掻き消される。
「あ、あの……いや、いい。帰ってから話そう」
レニー様は諦めたように肩を落とす。まぁ、こんなところで大声で話すのも不躾というものだ。私は「分かりました」と微笑んで頷いた。
王太子殿下の隣には、この国の公爵令嬢イメルダ様が、晴れて婚約者という立場で誇らしげな表情を浮かべ立っていた。
「結局、我が国のご令嬢になりましたね」
私が小声でレニー様に言うと、彼はその高い背を少しだけ屈めて、答えた。
「宰相が国内の地盤強化を押していたからな。国外に目を向けるのは、もう少し先になりそうだ」
という事は、次の代── 二人の子どもに王子が生まれたら他国から姫を娶ることになるという意味だろうか。
「議会もそのお考えで?」
するとレニー様は更に私の耳元に口を近づける。
「数代前。他国の王女を王妃にした時に随分と干渉されてな。それ以降他国の王女との婚姻に慎重なんだ。議会だけでなく、今は殆どの貴族が同じ考えだろう」
おじ様にも聞いたことがある。他国からの干渉が原因で、随分昔に国が荒れた……と。
私はまた背筋をピンと伸ばして立つ、隣のレニー様をチラリと見る。
脳筋で剣を振るしか能のない男だと思っていたが、それだけでもないらしい。
「ん?何か僕の顔についてるか?」
私の視線に気付いたレニー様が若干頬を赤く染め、私に尋ねる。
「いえ……。最近はまともに会話出来ているなぁと思いまして」
「まとっ……!僕はいつもまともだろうが!」
小声ながらも、反論するレニー様。
「いえ、そういう事ではなく。ブラシェール伯爵になられたという自覚が── 」
「それなら……君のお陰だ」
『自覚が芽生えたような気がします』という少し失礼な私の言葉を遮ったのは、彼の意外な一言だった。
「私の……?」
「そうだ。君が僕の目を覚まさせてくれた。君がブラシェール家の為に考えてくれること、努力してくれていることの全てが、僕に当主としてもっとしっかりしろ!と言ってくれているようだった。とはいえ、僕はまだまだ努力が必要だがな」
「レニー様……」
私が当然だと思ってやっていた一つ一つが、レニー様にもきちんと届いていたようで嬉しくなる。
「そ、そこで……だな。君に謝らなくては……」
口籠りながらレニー様が私の方へと身体ごと向き直った── と、同時に、音楽が鳴り響き、王族の皆様がフロアへと歩み出た。ダンスのスタートだ。
「あの……その、子作──」
「へ?あの、聞こえませんけど?」
真っ赤になりながら喋るレニー様の声が小さすぎて、音楽に掻き消される。
「あ、あの……いや、いい。帰ってから話そう」
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