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第89話
レオは私の背後に立つ人物に気付き頭をペコリと下げた。
「はじめまして、レオナ── 」
レオが挨拶しようとした途端、レニー様はあっと言う間にレオの前まで移動していた。
レニー様は吊っていない方の手でレオの肩をガッと掴んで言った。
「お前がレオか?」
低く地の底を這うような声にレオは顔を青くする。少し声を震わせながら答えた。
「は、はい……。デボラ様にはお世話に──」
私はただならぬ気配を感じ、レオとレニー様を引き剥がすつもりで、レニー様の肩に手をかけようとしたその時だった。
「頼む!デボラを返してくれ!」
レニー様はその大きな体を折りたたむ様に頭を下げ、そう叫んだ。
私の手は置くべき場所を失って空に漂う。レオはレニー様の声に圧倒され、目を白黒させていた。
レニー様は続ける。
「僕は良い夫ではなかった。だが、デボラが居なければダメなんだ。気付いたんだ……情けないことに今更、自分の気持ちに気付いたんだ」
唖然としていた私はその言葉に我に返る。
「レニー様、何を── 」
すると、レニー様は今度は私に向き直ってまた、深々と頭を下げた。
「すまなかった。君を何度も傷つけたし、僕は至らぬ所ばかりだった。だが……撤回させてくれ。愛人を作っていいと言った言葉を」
「愛人……?」
その言葉にレオも我に返ったようだ。そう言って首を傾げた。その様子に私は慌てて言った。
「レニー様、頭を上げて下さい!それにこんな所でそのような事を── 」
バザーの会場から離れたこの場所には他に人は居なかったが、誰がどこで何を聞いているか分からない。
「いや!君が許してくれるまで……そしてこのレオと別れると言ってくれるまで、僕は何度も謝り続ける!」
「レニー様、レオとはそんな関係ではないと言ったではないですか」
そう言ってもレニー様は一向に頭を上げてくれない。
レオも恐る恐るといった風に口を開く。
「デボラ様とはそんな関係では……」
「デボラ、許してくれ!あの夜に言った言葉も撤回する!僕が愛しているのは──」
これ以上、こんな場所で痴態を晒し続けるわけにはいかない。
「許します!許しますから!」
「なら、こいつとも別れてくれるな?」
やっとレニー様は私の様子を窺うように、顔を上げた。しかし体はまだ折れ曲がったままだ。
「別れるもなにも……レオは……女性です」
私はため息をつきながらそう小さな声で言った。
レニー様が目を見開いて、勢い良く姿勢を正した。レオも顔を青くさせる。
「デボラ様……ご存知だったので……」
「女!?」
二人の声が重なる。私は何だか頭が痛くなり、こめかみをもみながら言った。
「レオ、きっと貴女にも事情があるのだろうと黙っていたけれど、最初に会った時から、気づいていたの。黙っていてごめんなさい」
きっとあの社交クラブで働く為に嘘をついたのだろう。男性にしては小柄だが、短髪の彼女は綺麗な青年に見えた。
レニー様はまだ動揺しているのか、レオの姿を何度も上から下へと視線を走らせ確認していた。
「はじめまして、レオナ── 」
レオが挨拶しようとした途端、レニー様はあっと言う間にレオの前まで移動していた。
レニー様は吊っていない方の手でレオの肩をガッと掴んで言った。
「お前がレオか?」
低く地の底を這うような声にレオは顔を青くする。少し声を震わせながら答えた。
「は、はい……。デボラ様にはお世話に──」
私はただならぬ気配を感じ、レオとレニー様を引き剥がすつもりで、レニー様の肩に手をかけようとしたその時だった。
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レニー様はその大きな体を折りたたむ様に頭を下げ、そう叫んだ。
私の手は置くべき場所を失って空に漂う。レオはレニー様の声に圧倒され、目を白黒させていた。
レニー様は続ける。
「僕は良い夫ではなかった。だが、デボラが居なければダメなんだ。気付いたんだ……情けないことに今更、自分の気持ちに気付いたんだ」
唖然としていた私はその言葉に我に返る。
「レニー様、何を── 」
すると、レニー様は今度は私に向き直ってまた、深々と頭を下げた。
「すまなかった。君を何度も傷つけたし、僕は至らぬ所ばかりだった。だが……撤回させてくれ。愛人を作っていいと言った言葉を」
「愛人……?」
その言葉にレオも我に返ったようだ。そう言って首を傾げた。その様子に私は慌てて言った。
「レニー様、頭を上げて下さい!それにこんな所でそのような事を── 」
バザーの会場から離れたこの場所には他に人は居なかったが、誰がどこで何を聞いているか分からない。
「いや!君が許してくれるまで……そしてこのレオと別れると言ってくれるまで、僕は何度も謝り続ける!」
「レニー様、レオとはそんな関係ではないと言ったではないですか」
そう言ってもレニー様は一向に頭を上げてくれない。
レオも恐る恐るといった風に口を開く。
「デボラ様とはそんな関係では……」
「デボラ、許してくれ!あの夜に言った言葉も撤回する!僕が愛しているのは──」
これ以上、こんな場所で痴態を晒し続けるわけにはいかない。
「許します!許しますから!」
「なら、こいつとも別れてくれるな?」
やっとレニー様は私の様子を窺うように、顔を上げた。しかし体はまだ折れ曲がったままだ。
「別れるもなにも……レオは……女性です」
私はため息をつきながらそう小さな声で言った。
レニー様が目を見開いて、勢い良く姿勢を正した。レオも顔を青くさせる。
「デボラ様……ご存知だったので……」
「女!?」
二人の声が重なる。私は何だか頭が痛くなり、こめかみをもみながら言った。
「レオ、きっと貴女にも事情があるのだろうと黙っていたけれど、最初に会った時から、気づいていたの。黙っていてごめんなさい」
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