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第104話 Sideレニー
〈レニー視点〉
そっと目を開けて横を見る。高い鼻が月の光に照らされて、やけに白く見えた。長く濃い睫毛に彩られた彼女の瞼はしっかりと閉じられている。
彼女の寝顔を見るのはこれで二度目だ。馬車の中でうたた寝をした彼女の寝顔が、いつもより少し幼く見えて、胸が痛いくらいにときめいたことを思い出す。
結婚して約半年。相手の寝顔を見ることが珍しい夫婦なんて、僕たち以外にいるのかな?……本当に僕は馬鹿だったと思い知る。
彼女の心ごと全部欲しい……なんて格好をつけてしまった手前、手を繋ぐだけで我慢している……が、辛い。僕も健全な男だ。……辛い。
ムクムクと湧き上がる欲望をみて見ぬふりでやり過ごす。これ以上彼女を傷つけたくはなかった。
彼女の小さな寝息が聞こえる。ドキドキして眠れないのは、僕だけのようだ。彼女に僕を好きになって貰いたいが、それは随分と険しい道のりに思えた。なんせ、最初の印象が最悪だ。
……しかし。デボラにアリシアのことがバレていたなんて……。兄の嫁に恋心を抱いてるなんて気持ち悪いと思われただろうな。
どうすればここから今の状況を打破出来るのだろう。特に今のところ良いアイデアなんて一つも浮かんでいない。僕に出来ること……それはデボラに自分の気持ちを伝え続けることだけだ。
そう言えば、僕はアリシアに気持ちをはっきりと伝えたことはなかった。アリシアが兄さんを選んだ……なんて思っていたけれど、元々僕はスタートラインにすら立っていなかったことに気付く。兄さんはアリシアに気持ちを伝えた。僕はそれすらしようとしなかった。……僕のアリシアへの気持ちって、それぐらいのものだったのかもな……。
そんなことを考えていたら、僕はいつの間にか意識を手放していた。
「そう言えば、昨晩は言い忘れていたのですが、クラッド様が……」
デボラが僕の怪我をした片手の代わりに、パンを千切ってジャムを乗せながら、ポツリと言った。
「晩餐会の件か?兄さんに聞いたよ。だが兄さんもなんでデボラに……」
僕は彼女の手からパンを受け取り頬張った。彼女は目の前の朝食を一通り小さく切り分け、パンを千切ると、それらを皿に乗せる。
「私も何故なのか……。言葉の問題は理解しましたが、それならばクラッド様がアリシア様をフォローして差し上げれば問題ないのではないかと思うのです」
「その通りだと僕も思うよ。だが皇太子殿下を囲んだ晩餐会か……僕の耳には届いていなかったんだが」
怪我で休んでいるとはいえ、僕は副団長だ。全く何も聞かされていないなんて、変な話だ。
「急に決まったような印象でしたが……。実は今日、クラッド様がドレスを一緒に買いに行こうと仰ってて」
そう言った彼女は困ったように眉を下げた。
今度は自分のパンを千切りながら彼女は小さくため息をついている。
彼女が何も言わずとも僕の手の代わりを務めてくれたことに勝手に感動していて、聴き逃すところだった。
「は?ドレス?兄さんと?」
僕は我に返り、素っ頓狂な声を出した。
そっと目を開けて横を見る。高い鼻が月の光に照らされて、やけに白く見えた。長く濃い睫毛に彩られた彼女の瞼はしっかりと閉じられている。
彼女の寝顔を見るのはこれで二度目だ。馬車の中でうたた寝をした彼女の寝顔が、いつもより少し幼く見えて、胸が痛いくらいにときめいたことを思い出す。
結婚して約半年。相手の寝顔を見ることが珍しい夫婦なんて、僕たち以外にいるのかな?……本当に僕は馬鹿だったと思い知る。
彼女の心ごと全部欲しい……なんて格好をつけてしまった手前、手を繋ぐだけで我慢している……が、辛い。僕も健全な男だ。……辛い。
ムクムクと湧き上がる欲望をみて見ぬふりでやり過ごす。これ以上彼女を傷つけたくはなかった。
彼女の小さな寝息が聞こえる。ドキドキして眠れないのは、僕だけのようだ。彼女に僕を好きになって貰いたいが、それは随分と険しい道のりに思えた。なんせ、最初の印象が最悪だ。
……しかし。デボラにアリシアのことがバレていたなんて……。兄の嫁に恋心を抱いてるなんて気持ち悪いと思われただろうな。
どうすればここから今の状況を打破出来るのだろう。特に今のところ良いアイデアなんて一つも浮かんでいない。僕に出来ること……それはデボラに自分の気持ちを伝え続けることだけだ。
そう言えば、僕はアリシアに気持ちをはっきりと伝えたことはなかった。アリシアが兄さんを選んだ……なんて思っていたけれど、元々僕はスタートラインにすら立っていなかったことに気付く。兄さんはアリシアに気持ちを伝えた。僕はそれすらしようとしなかった。……僕のアリシアへの気持ちって、それぐらいのものだったのかもな……。
そんなことを考えていたら、僕はいつの間にか意識を手放していた。
「そう言えば、昨晩は言い忘れていたのですが、クラッド様が……」
デボラが僕の怪我をした片手の代わりに、パンを千切ってジャムを乗せながら、ポツリと言った。
「晩餐会の件か?兄さんに聞いたよ。だが兄さんもなんでデボラに……」
僕は彼女の手からパンを受け取り頬張った。彼女は目の前の朝食を一通り小さく切り分け、パンを千切ると、それらを皿に乗せる。
「私も何故なのか……。言葉の問題は理解しましたが、それならばクラッド様がアリシア様をフォローして差し上げれば問題ないのではないかと思うのです」
「その通りだと僕も思うよ。だが皇太子殿下を囲んだ晩餐会か……僕の耳には届いていなかったんだが」
怪我で休んでいるとはいえ、僕は副団長だ。全く何も聞かされていないなんて、変な話だ。
「急に決まったような印象でしたが……。実は今日、クラッド様がドレスを一緒に買いに行こうと仰ってて」
そう言った彼女は困ったように眉を下げた。
今度は自分のパンを千切りながら彼女は小さくため息をついている。
彼女が何も言わずとも僕の手の代わりを務めてくれたことに勝手に感動していて、聴き逃すところだった。
「は?ドレス?兄さんと?」
僕は我に返り、素っ頓狂な声を出した。
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