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第105話 Sideレニー
〈レニー視点〉
「はい……必要ないとお断りしたのですが……」
そう言ったデボラは心底困っているように見える。
「新しいドレスが必要なら、僕が買うよ。既製品で良いんだろう?」
妻のドレスを他の男が買う。これがこんなにも不快なことなのだと、僕は初めて知った。
「いえ、別に新しいものを買う必要もないと思っているんですが、クラッド様は自分の見立てで選びたい……と」
兄さんはどういうつもりなんだ?僕がしかめっ面をしていると、家令が食堂に顔を出した。
「……クラッド様がお見えです」
デボラが驚いた声をあげる。
「もう?!まだ朝よ?」
「まだ朝食中だ。……非常識過ぎるだろう」
僕は文句を言いに行こうと立ち上がる。隣で食事をしていたデボラが僕の服の裾をツンと引っ張った。
「あまり言い争うのは……」
「昨日も一方的に『デボラを借りる』と言われただけで、僕は許可をしていない。ドレスどころか、晩餐会自体断ってくるよ」
僕は気合いを入れて、食堂を出て玄関ホールへ向かう。
今まで兄さんに面と向かって文句を言ったことなど数える程度だ。最後は……そうだ、結婚しろと言われた時だ。
兄さんは玄関ホールに現れた僕の姿を見て、驚いたようにまばたきをした。
「レニー、お前を呼んだんじゃない。デボラは?」
「晩餐会ならアリシアと行けばいいだろう?デボラは行けない」
僕の言い方が悪かったのか、兄さんの顔が曇る。
「昨日も言っただろ。アリシアでは力不足だ。彼女は役に立たない」
僕は兄さんの言葉に違和感を覚える。今まで兄さんがアリシアのことをこんな風に言ったことがあっただろうか?
「そんな言い方……。仕方ないだろう?アリシアは勉強が、その……苦手だから」
僕も勉強は苦手だ。勉強というか机にずっと付いているのが苦痛なタイプだ。
「……子どもの頃はそれでも良かったさ。でも今はそんな訳にはいかないんだよ。何度も何度も彼女には言い聞かせたし、家庭教師も付けた。でも無理だったんだ」
家庭教師……それは知らなかった。アリシアからも聞いたことがなかった。
僕が黙ると兄さんは続けた。
「知らなかったか?……お前には泣き言を言っているかと思ったが、お前にも勉強が嫌だと言うのは格好悪いと思ったんだな」
「兄さん……今までアリシアを甘やかしていたじゃないか。急にどうしたんだ?」
「いつまで子どもの頃の話をしてるんだ。もう……そんなことは言ってられないんだよ」
兄さんの眉間には深い皺が刻み込まれる。最後の言葉には諦めの色が滲んでいた。
「はい……必要ないとお断りしたのですが……」
そう言ったデボラは心底困っているように見える。
「新しいドレスが必要なら、僕が買うよ。既製品で良いんだろう?」
妻のドレスを他の男が買う。これがこんなにも不快なことなのだと、僕は初めて知った。
「いえ、別に新しいものを買う必要もないと思っているんですが、クラッド様は自分の見立てで選びたい……と」
兄さんはどういうつもりなんだ?僕がしかめっ面をしていると、家令が食堂に顔を出した。
「……クラッド様がお見えです」
デボラが驚いた声をあげる。
「もう?!まだ朝よ?」
「まだ朝食中だ。……非常識過ぎるだろう」
僕は文句を言いに行こうと立ち上がる。隣で食事をしていたデボラが僕の服の裾をツンと引っ張った。
「あまり言い争うのは……」
「昨日も一方的に『デボラを借りる』と言われただけで、僕は許可をしていない。ドレスどころか、晩餐会自体断ってくるよ」
僕は気合いを入れて、食堂を出て玄関ホールへ向かう。
今まで兄さんに面と向かって文句を言ったことなど数える程度だ。最後は……そうだ、結婚しろと言われた時だ。
兄さんは玄関ホールに現れた僕の姿を見て、驚いたようにまばたきをした。
「レニー、お前を呼んだんじゃない。デボラは?」
「晩餐会ならアリシアと行けばいいだろう?デボラは行けない」
僕の言い方が悪かったのか、兄さんの顔が曇る。
「昨日も言っただろ。アリシアでは力不足だ。彼女は役に立たない」
僕は兄さんの言葉に違和感を覚える。今まで兄さんがアリシアのことをこんな風に言ったことがあっただろうか?
「そんな言い方……。仕方ないだろう?アリシアは勉強が、その……苦手だから」
僕も勉強は苦手だ。勉強というか机にずっと付いているのが苦痛なタイプだ。
「……子どもの頃はそれでも良かったさ。でも今はそんな訳にはいかないんだよ。何度も何度も彼女には言い聞かせたし、家庭教師も付けた。でも無理だったんだ」
家庭教師……それは知らなかった。アリシアからも聞いたことがなかった。
僕が黙ると兄さんは続けた。
「知らなかったか?……お前には泣き言を言っているかと思ったが、お前にも勉強が嫌だと言うのは格好悪いと思ったんだな」
「兄さん……今までアリシアを甘やかしていたじゃないか。急にどうしたんだ?」
「いつまで子どもの頃の話をしてるんだ。もう……そんなことは言ってられないんだよ」
兄さんの眉間には深い皺が刻み込まれる。最後の言葉には諦めの色が滲んでいた。
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