愛人を作ってもいいと言ったその口で夫は私に愛を乞う

初瀬 叶

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第118話

「お前、そんな約束を── 」

「違う!」

クラッド様の言葉を遮ったレニー様は私の手を握った。

「ごめん、確かにそんな約束をした……が、もうすっかり忘れてたんだ。本当だ!僕の気持ちは君に話した通りだ。君の心ごと全部僕のものにしたいから、急がなくてもいい、子どものことはその後で考えればいいって、頭の中からその約束ごといつの間にか排除してた」

レニー様の顔は必死で、これまた嘘をついている様には思えなかった。
レニー様はキッとアリシア様を睨む。

「約束したことも忘れていた。今はデボラの気持ちが僕に向くことを待っているだけで、子作りする気は満々だから!」

レニー様がそう大きな声で叫ぶ。私はその言葉の内容に顔を赤く染めた。

「レニー様!そんなことを大声で言わないでください!」

「あ、あぁ……ごめん」

素直に謝ったレニー様はシュンとしたものの、アリシア様に続けて言った。

「アリシア。僕はもう君との約束なんて守るつもりもないよ。── それに、兄さん」

レニー様は次はクラッド様の方に視線を向けた。

「ハルコン家を守りたいなら、アリシアと向き合ったらどうだ?アリシアは兄さんが相手にしてくれないと── 」

レニー様の言葉を今度はクラッド様が遮った。

「ハハハハハッ!レニー、お前はアリシアに何と吹き込まれたんだ?相手にしない?それは彼女の方だ。彼女が子を生みたくないと言ったんだ」

クラッド様とレニー様、それと私の視線が一斉にアリシア様へと向いた。
アリシア様は顔を青くした。

「そ、そんな事、私は── 」

「『妊娠したら体型が崩れるから生みたくない』そう侍女に話していたじゃないか」

クラッド様の言葉にアリシア様はますます顔を青ざめさせた。

「そ、それを誰から── 」

「自分の耳で聞いたんだ。だから避妊薬を飲んでるとね。笑いながら話していたじゃないか。それに僕の容姿にも不満を漏らしていたね。『あんなにぶくぶく太るとは思っていなかった。見た目だけなら、レニーの方が良かった』って。僕たちの部屋は扉続きだ。不用意だったね、僕が出かけている時間だとしても。急に戻ることもあると肝に銘じた方がいい。……いや、今さら手遅れか」

クラッド様はそう言って皮肉っぽく笑った。

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