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第120話
「ケインという男性を知ってるよね?」
クラッド様の声はあくまでも穏やかだが、アリシア様を見る目は冷たい。
「さ、さぁ……知らないわ」
アリシア様は声を震わせながら、そう答えた。私も無表情ではいられない。レニー様はそんな私の変化を見逃さなかった。
「デボラ、君はその『ケイン』っていう人物を知ってるの?」
私の方をキッと睨むアリシア様。── 黙っていろということだろう。
私が答えに困っていると、クラッド様がフッと笑った。
「あぁ、そういえばあのクラブにはあの場所の秘密を口外しないっていう規則があったね。デボラ、君は答えなくていいよ」
そんなことまでクラッド様は把握済みということのようだ。私は諦めたように口を開きかけた。── その時。
「クラッド!私は別にやましいことなどしてないわ。話し相手になってもらっていただけ。だってクラッドはお仕事、お仕事で毎日忙しそうだし、レニーも近衛の副団長になってからというもの、暇がなさそうだし……寂しかったの。知ってるでしょう?私がお友達が少ないって……」
「それは君が社交に積極的じゃないからだろう?何度も言ったはずだよ。お茶会を開いてみたらどうだい?って」
「でも── 」
「それに学園でも君はレニーとばかり行動を共にして、他のご令嬢とはお喋りすらしてなかったじゃないか。……気持ちが良かったんだろう?レニーのような美丈夫が、自分をお姫様のように扱ってくれるのが。それを皆に見せつけるのが。マドリー夫人が言っていたよ『皆アリシアの高飛車な態度が気に入らなかった』ってね」
クラッド様はマドリー夫人から直接話を聞いているのだと、その時わかった。もちろんそれを理解したのは私だけではない。アリシア様もそれに気付いた筈だ。アリシア様の唇は小さく震えていた。
クラッド様の情報源がマドリー夫人なのであれば、もう隠しようがない。私は何も言えずにアリシア様を見つめた。しかしアリシア様はまだ諦めない。
「彼女は私を妬んでいたの。よく学園でも虐められたわ。だからきっと嘘を── 」
クラッド様が扉の方へと視線を移す。そこに立っていた執事は大きく頷くと、扉を大きく開けた。そこに立っていたのは──
「ケイン。さぁ、入ってくれ」
顔色を悪くしたケインが入り口に立っている。彼もこの場でどう振る舞えば良いのか分からず、戸惑っているようだった。
アリシア様はパニックを起こす。
「な、なんで!」
「誰だあれは?」
レニー様は困惑。
「ケイン、もう少し近づいて。ほらアリシア、君の可愛がっている彼だ」
クラッド様はケインを手招いた。ケインはオドオドとしながら、私達のテーブルに近づいた。そしてケインは頭を下げる。
「アリーごめん。オーナーから全部喋っていいって言われて……喋っちゃった」
「喋っちゃったって……そんな!」
そしてケインはクラッド様にも頭を下げた。
「し、仕事とはいえ……申し訳ありません」
クラッド様は目を細める。
「君は金の為にやったんだ。責めるつもりはないよ」
色んな想いがこの応接室に渦巻いている。私は頭が痛くなってきた。
クラッド様の声はあくまでも穏やかだが、アリシア様を見る目は冷たい。
「さ、さぁ……知らないわ」
アリシア様は声を震わせながら、そう答えた。私も無表情ではいられない。レニー様はそんな私の変化を見逃さなかった。
「デボラ、君はその『ケイン』っていう人物を知ってるの?」
私の方をキッと睨むアリシア様。── 黙っていろということだろう。
私が答えに困っていると、クラッド様がフッと笑った。
「あぁ、そういえばあのクラブにはあの場所の秘密を口外しないっていう規則があったね。デボラ、君は答えなくていいよ」
そんなことまでクラッド様は把握済みということのようだ。私は諦めたように口を開きかけた。── その時。
「クラッド!私は別にやましいことなどしてないわ。話し相手になってもらっていただけ。だってクラッドはお仕事、お仕事で毎日忙しそうだし、レニーも近衛の副団長になってからというもの、暇がなさそうだし……寂しかったの。知ってるでしょう?私がお友達が少ないって……」
「それは君が社交に積極的じゃないからだろう?何度も言ったはずだよ。お茶会を開いてみたらどうだい?って」
「でも── 」
「それに学園でも君はレニーとばかり行動を共にして、他のご令嬢とはお喋りすらしてなかったじゃないか。……気持ちが良かったんだろう?レニーのような美丈夫が、自分をお姫様のように扱ってくれるのが。それを皆に見せつけるのが。マドリー夫人が言っていたよ『皆アリシアの高飛車な態度が気に入らなかった』ってね」
クラッド様はマドリー夫人から直接話を聞いているのだと、その時わかった。もちろんそれを理解したのは私だけではない。アリシア様もそれに気付いた筈だ。アリシア様の唇は小さく震えていた。
クラッド様の情報源がマドリー夫人なのであれば、もう隠しようがない。私は何も言えずにアリシア様を見つめた。しかしアリシア様はまだ諦めない。
「彼女は私を妬んでいたの。よく学園でも虐められたわ。だからきっと嘘を── 」
クラッド様が扉の方へと視線を移す。そこに立っていた執事は大きく頷くと、扉を大きく開けた。そこに立っていたのは──
「ケイン。さぁ、入ってくれ」
顔色を悪くしたケインが入り口に立っている。彼もこの場でどう振る舞えば良いのか分からず、戸惑っているようだった。
アリシア様はパニックを起こす。
「な、なんで!」
「誰だあれは?」
レニー様は困惑。
「ケイン、もう少し近づいて。ほらアリシア、君の可愛がっている彼だ」
クラッド様はケインを手招いた。ケインはオドオドとしながら、私達のテーブルに近づいた。そしてケインは頭を下げる。
「アリーごめん。オーナーから全部喋っていいって言われて……喋っちゃった」
「喋っちゃったって……そんな!」
そしてケインはクラッド様にも頭を下げた。
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クラッド様は目を細める。
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