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第130話
「頭が固い……ね。元々私のやることが気に入らなかったことは承知してるわ。……でも、私を選んだのは執事の彼が敬愛しているクラッド様でしょう?矛盾してるわ」
私は肩を竦め、パンを千切った。
我が領産のジャムをたっぷりつけて、大口で齧る。ほどよい甘さが口に広がり、イライラした気分が少し解れた気がした。
「あいつが敬愛していたのは『前』侯爵様です。それを継いだクラッド様のことを支えていこうと心に決めていた矢先── 」
「ブラシェール伯爵家の執事になれと言われて拗ねたってこと?── 馬鹿馬鹿しい。仕事を何だと思っているのかしら」
「まったくです」
家令は私に同意するように頷いた。しかし一つ問題がある。
「新しい執事を募集しなきゃね……貴方に負担をかけてしまうわ」
「私の心配なら無用ですよ。体は丈夫なので」
家令はそう言ってくれるけど、彼に甘えてばかりはいられない。私はあまり気乗りはしないが、実家に連絡してみることにした。……兄に頼りたくはないが、仕方ない。
「執事の分の仕事は私に回して。私も手伝うわ」
「奥様、それよりもあと三日で店のオープンですよ。奥様はそちらに尽力されてください」
あ……忘れていた。
「そうだった……。レオナは?引っ越しは終わったかしら?」
「大した荷物もありませんでしたから、もう終わってますよ。今日、見に行かれますか?」
開店準備に新しい執事探し。ハルコン侯爵家を出て行ったアリシア様の行方に、クラッド様の離縁。あぁ、皇太子殿下の帰国もあったか。考えることもやるべき事も山積みだ。
「ええ。様子を見に行くわ。今日、レニー様は帰ってくることができるかしら?」
私は最後のお茶を飲み干すと、おもむろに立ち上がった。
実家に一筆手紙を書いてから、開店準備中の店に顔を出した。
「デボラ様!」
私の顔を見たレオナが笑顔で私に駆け寄った。
「引っ越し終わったって聞いたわ。手伝えなくてごめんなさい」
「とんでもない!こんな素晴らしい所に住まわせて貰えるなんて、本当に有り難くて」
レオナは今だに男性のような格好だ。
「もう、性別を偽る必要はないのよ?」
そう言われたレオナは自分の姿を見下ろして苦笑した。
「この方が動きやすいので。あ!でもお店で着用する洋服は届いてます」
彼女は「少し待っていてください」と笑顔で言うと、二階に駆け上がった。
降りてきた彼女の手には大きな箱。
彼女はテーブルにその箱を置くと、箱の蓋を開く。
「まぁ!可愛らしく出来たわね」
ストライプのワンピースはフリルが多く使われていて、パフスリーブが可愛らしい。ワンピースに着けるエプロンにもフリルがたっぷりだ。実はこのデザインも私が考えたものだ。出来るだけ明るく可愛らしくと必死で頭を悩ませた。
レオナはワンピースを摘んで自分の体に当ててみる。
「可愛らしすぎて私に似合うか心配ですけど」
彼女はワンピースを体に当てたまま、体を揺らして見せた。彼女の口元は綻んでいて、嬉しそうに見える。
あぁ、やっぱり彼女もこうした格好をしてみたかったのかもしれない。私もそんなレオナの様子に笑みが溢れた。
私は肩を竦め、パンを千切った。
我が領産のジャムをたっぷりつけて、大口で齧る。ほどよい甘さが口に広がり、イライラした気分が少し解れた気がした。
「あいつが敬愛していたのは『前』侯爵様です。それを継いだクラッド様のことを支えていこうと心に決めていた矢先── 」
「ブラシェール伯爵家の執事になれと言われて拗ねたってこと?── 馬鹿馬鹿しい。仕事を何だと思っているのかしら」
「まったくです」
家令は私に同意するように頷いた。しかし一つ問題がある。
「新しい執事を募集しなきゃね……貴方に負担をかけてしまうわ」
「私の心配なら無用ですよ。体は丈夫なので」
家令はそう言ってくれるけど、彼に甘えてばかりはいられない。私はあまり気乗りはしないが、実家に連絡してみることにした。……兄に頼りたくはないが、仕方ない。
「執事の分の仕事は私に回して。私も手伝うわ」
「奥様、それよりもあと三日で店のオープンですよ。奥様はそちらに尽力されてください」
あ……忘れていた。
「そうだった……。レオナは?引っ越しは終わったかしら?」
「大した荷物もありませんでしたから、もう終わってますよ。今日、見に行かれますか?」
開店準備に新しい執事探し。ハルコン侯爵家を出て行ったアリシア様の行方に、クラッド様の離縁。あぁ、皇太子殿下の帰国もあったか。考えることもやるべき事も山積みだ。
「ええ。様子を見に行くわ。今日、レニー様は帰ってくることができるかしら?」
私は最後のお茶を飲み干すと、おもむろに立ち上がった。
実家に一筆手紙を書いてから、開店準備中の店に顔を出した。
「デボラ様!」
私の顔を見たレオナが笑顔で私に駆け寄った。
「引っ越し終わったって聞いたわ。手伝えなくてごめんなさい」
「とんでもない!こんな素晴らしい所に住まわせて貰えるなんて、本当に有り難くて」
レオナは今だに男性のような格好だ。
「もう、性別を偽る必要はないのよ?」
そう言われたレオナは自分の姿を見下ろして苦笑した。
「この方が動きやすいので。あ!でもお店で着用する洋服は届いてます」
彼女は「少し待っていてください」と笑顔で言うと、二階に駆け上がった。
降りてきた彼女の手には大きな箱。
彼女はテーブルにその箱を置くと、箱の蓋を開く。
「まぁ!可愛らしく出来たわね」
ストライプのワンピースはフリルが多く使われていて、パフスリーブが可愛らしい。ワンピースに着けるエプロンにもフリルがたっぷりだ。実はこのデザインも私が考えたものだ。出来るだけ明るく可愛らしくと必死で頭を悩ませた。
レオナはワンピースを摘んで自分の体に当ててみる。
「可愛らしすぎて私に似合うか心配ですけど」
彼女はワンピースを体に当てたまま、体を揺らして見せた。彼女の口元は綻んでいて、嬉しそうに見える。
あぁ、やっぱり彼女もこうした格好をしてみたかったのかもしれない。私もそんなレオナの様子に笑みが溢れた。
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