133 / 163
第133話 Sideレニー
〈レニー視点〉
その後、僕は実際に皇太子殿下とアリシアが寄り添っている姿をこの目で見ることになってしまった。
「どんなに頑張って急いでも出発は明日の朝になりそうです」
僕が皇太子殿下にそう告げると、彼は不快感を顕にした。
「今日は無理なのか?」
「リカルド、仕方ないわよ。護衛にも計画があるのでしょうから」
皇太子殿下にしなだれるように寄り添うアリシアが殿下の胸に手を置いた。
「やっと弟の身柄を拘束したと連絡があったんだ。早く帰って安心したかったんだが……仕方ない」
渋々了承しながら、殿下はアリシアの頭を抱いた。
正直、見てられない。僕はあまり皇太子殿下の護衛に関与してこなかったが……人目も気にせずにこういう振る舞いを王宮という場所で平然とやってのける彼の気持ちが分からない。
アリシアは既に殿下の心をしっかりと掴んでいるようで、殿下はアリシアをとろけるような目で見つめていた。
というか……皇太子殿下は我が国の言葉を流暢に話しているじゃないか。あの晩餐会で兄さんがデボラを同伴した理由を思い出して、改めて不快に思った。……女を口説く時には流暢になるのか?
「そんなに急がなくても貴方の立場は確固としたものになったのだから、大丈夫よ。── ねぇ、本当に私のことを側妃じゃなく皇妃にしてくれるの?」
「あぁ、もちろん。今、私の正妃の席は空いている。帰ったら君をちゃんと婚約者として国民に周知するよ」
僕は何を見せられているのだろう。初恋だったはずのアリシアが下品な娼婦に見える。
一刻も早くこの場を去りたい気持ちでいっぱいだ。
「宿屋の手筈等を考えると今日中の出発は難しく……申し訳ありません」
形だけ頭を下げる。急に帰国を決めたお前のせいだろ!と言えたらどんなにスッキリするだろう。
「あぁ……もういいよ。じゃ、出ていってくれ」
皇太子殿下は僕をシッシッ!と追い払うように手を振った。僕は再度頭を下げて、部屋を出る。最後に扉を閉めるそのすき間から、殿下とアリシアが濃厚な口づけをしているのが目に入った。
騎士団の詰所に戻りながら僕はため息をついた。あんな姿を見せられると……兄さんがほんの少し可哀想に思えてくる。男娼の件もそうだが、僕はすっかりアリシアのか弱そうな見た目に騙されていたようだ……というか、身体が弱いっていうのも単なる設定だった可能性が高い。
「僕は本当に見る目がないな……」
アリシアのか細く大人しそうな様子にすっかり騙され彼女を守らなくては……といつの日かそう強く思うようになっていた。
それに引き換え、デボラは……なんというか芯の強そうな瞳のクールビューティだ。だからといってぞんざいに扱っていいわけではなかったのに……そんな反省と後悔を繰り返しながら、僕は明日からの皇太子殿下の護衛の計画書を何度も確認した。
その後、僕は実際に皇太子殿下とアリシアが寄り添っている姿をこの目で見ることになってしまった。
「どんなに頑張って急いでも出発は明日の朝になりそうです」
僕が皇太子殿下にそう告げると、彼は不快感を顕にした。
「今日は無理なのか?」
「リカルド、仕方ないわよ。護衛にも計画があるのでしょうから」
皇太子殿下にしなだれるように寄り添うアリシアが殿下の胸に手を置いた。
「やっと弟の身柄を拘束したと連絡があったんだ。早く帰って安心したかったんだが……仕方ない」
渋々了承しながら、殿下はアリシアの頭を抱いた。
正直、見てられない。僕はあまり皇太子殿下の護衛に関与してこなかったが……人目も気にせずにこういう振る舞いを王宮という場所で平然とやってのける彼の気持ちが分からない。
アリシアは既に殿下の心をしっかりと掴んでいるようで、殿下はアリシアをとろけるような目で見つめていた。
というか……皇太子殿下は我が国の言葉を流暢に話しているじゃないか。あの晩餐会で兄さんがデボラを同伴した理由を思い出して、改めて不快に思った。……女を口説く時には流暢になるのか?
「そんなに急がなくても貴方の立場は確固としたものになったのだから、大丈夫よ。── ねぇ、本当に私のことを側妃じゃなく皇妃にしてくれるの?」
「あぁ、もちろん。今、私の正妃の席は空いている。帰ったら君をちゃんと婚約者として国民に周知するよ」
僕は何を見せられているのだろう。初恋だったはずのアリシアが下品な娼婦に見える。
一刻も早くこの場を去りたい気持ちでいっぱいだ。
「宿屋の手筈等を考えると今日中の出発は難しく……申し訳ありません」
形だけ頭を下げる。急に帰国を決めたお前のせいだろ!と言えたらどんなにスッキリするだろう。
「あぁ……もういいよ。じゃ、出ていってくれ」
皇太子殿下は僕をシッシッ!と追い払うように手を振った。僕は再度頭を下げて、部屋を出る。最後に扉を閉めるそのすき間から、殿下とアリシアが濃厚な口づけをしているのが目に入った。
騎士団の詰所に戻りながら僕はため息をついた。あんな姿を見せられると……兄さんがほんの少し可哀想に思えてくる。男娼の件もそうだが、僕はすっかりアリシアのか弱そうな見た目に騙されていたようだ……というか、身体が弱いっていうのも単なる設定だった可能性が高い。
「僕は本当に見る目がないな……」
アリシアのか細く大人しそうな様子にすっかり騙され彼女を守らなくては……といつの日かそう強く思うようになっていた。
それに引き換え、デボラは……なんというか芯の強そうな瞳のクールビューティだ。だからといってぞんざいに扱っていいわけではなかったのに……そんな反省と後悔を繰り返しながら、僕は明日からの皇太子殿下の護衛の計画書を何度も確認した。
あなたにおすすめの小説
三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで
狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。
一度目は信じた。
二度目は耐えた。
三度目は――すべてを失った。
そして私は、屋上から身を投げた。
……はずだった。
目を覚ますと、そこは過去。
すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。
――四度目の人生。
これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、
同じように裏切られ、すべてを失ってきた。
だから今度は、もう決めている。
「もう、陸翔はいらない」
愛していた。
けれど、もう疲れた。
今度こそ――
自分を守るために、家族を守るために、
私は、自分から手を放す。
これは、三度裏切られた女が、
四度目の人生で「選び直す」物語。
騎士の妻ではいられない
Rj
恋愛
騎士の娘として育ったリンダは騎士とは結婚しないと決めていた。しかし幼馴染みで騎士のイーサンと結婚したリンダ。結婚した日に新郎は非常召集され、新婦のリンダは結婚を祝う宴に一人残された。二年目の結婚記念日に戻らない夫を待つリンダはもう騎士の妻ではいられないと心を決める。
全23話。
2024/1/29 全体的な加筆修正をしました。話の内容に変わりはありません。
イーサンが主人公の続編『騎士の妻でいてほしい 』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/96163257/36727666)があります。
真実の愛の裏側
藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。
男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――?
※ 他サイトにも投稿しています。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!
さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」
「はい、愛しています」
「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」
「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」
「え……?」
「さようなら、どうかお元気で」
愛しているから身を引きます。
*全22話【執筆済み】です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/09/12
※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください!
2021/09/20
【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?
チカフジ ユキ
恋愛
伯爵令嬢のアメルは、公爵令嬢である従姉のリディアに使用人のように扱われていた。
そんなアメルは、様々な理由から十五の頃に海を挟んだ大国アーバント帝国へ留学する。
約一年後、リディアから離れ友人にも恵まれ日々を暮らしていたそこに、従姉が留学してくると知る。
しかし、アメルは以前とは違いリディアに対して毅然と立ち向かう。
もう、リディアに従う必要がどこにもなかったから。
リディアは知らなかった。
自分の立場が自国でどうなっているのかを。