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第141話
私はレオナから少し体を離して、その姿を頭から爪先まで確認する。
彼女の頬にはほんの少し煤が付いているが、涙がそれを流したようだ。
改めて見ても怪我をしている様子はなく、私はホッとする。そんな私達の手をシルビアがチョンチョンと突いた。
私は直ぐにシルビアの方へと屈み込んだ。
「シルビアも大丈夫?どこも痛い所はない?一応お医者様に診ていただきましょうね」
見た目には何もなくても、体の中はどうなっているか分からない。煙を吸っている可能性も十分にある。
「私は元気よ!起きたら焦げ臭くてびっくりしちゃった!私も火を消すの手伝ったの」
シルビアが思った以上に元気で安心する。しかしこんな小さな子が怖い思いをしただろうと思うと心が痛んだ。
「偉いわシルビア。貴女も店を守ってくれたのね」
私がシルビアの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに笑った。
私は立ち上がり周りを見渡す。気づけばレニー様の姿がない。すると私達に執事が近づいて来た。
「奥様、旦那様は店の様子を見に行きました。それと犯人なのですが── 」
そう言えば、この火事は放火だと言われたことを思い出す。するとレオナが口を開いた。
「犯人は縛り上げて店の裏に転がしておきました。そいつ……デボラ様を口汚く罵っておりまして、煩いので口に布を詰めときました」
レオナは改めて怒りが湧いてきたのか、物凄く不機嫌そうにそう言った。
「レオナ、貴女が捕まえたって聞いたわ。そんな危ないこと……」
「あの女、火をつけた時に自分も火傷を負ったようで、ヒィヒィ言っていたんです。私と目が合って突然背を向けて走り出したんで、怪しいと思って追いかけて捕まえましたが……見覚えのある顔でびっくりしました」
レオナの言葉に私は目を見開いた。
「貴女の知ってる人なの?」
「まぁ……」
レオナは口籠る。
するといつの間にかレニー様が私達の方へと戻って来ていた。その顔は苦虫を噛み潰したようだ。
「デボラ、店は裏の扉と壁、厨房の一部が燃えたぐらいで、大した被害はない。これなら直ぐに店を再開出来るだろう……ただ、な」
「どうされました?」
すると店の裏側からギャーギャー喚く女の掠れた甲高い声が聞こえた。私がそちらに目を向けると護衛が女の腕を掴んでこちらに連れて来ているのが見える。── あれは。
「アリシア……様?」
私は護衛の腕から逃れようと藻掻いている女の薄汚れた顔を見て絶句した。
後ろ手に縛られ、薄汚れたワンピースを来ている。美しかった彼女の髪はまるで鳥の巣のようにゴワゴワとしていて、見る影もない。
私はレニー様を見た。
「あれは……アリシア様ですか?」
レニー様は難しい顔で頷く。
「あぁ、あんななりをしているが、間違いなくアリシアだ。それと……これ」
レニー様が手を開くと、掌にアンティークのイヤリングが乗せられていた。
「これは……?」
「アリシアのワンピースのポケットに入っていた。確かなことは言えないが……これは王妃のイヤリングだと思う」
私はレニー様の言葉に一層驚いて思わず口をポカンと開けてしまった。
彼女の頬にはほんの少し煤が付いているが、涙がそれを流したようだ。
改めて見ても怪我をしている様子はなく、私はホッとする。そんな私達の手をシルビアがチョンチョンと突いた。
私は直ぐにシルビアの方へと屈み込んだ。
「シルビアも大丈夫?どこも痛い所はない?一応お医者様に診ていただきましょうね」
見た目には何もなくても、体の中はどうなっているか分からない。煙を吸っている可能性も十分にある。
「私は元気よ!起きたら焦げ臭くてびっくりしちゃった!私も火を消すの手伝ったの」
シルビアが思った以上に元気で安心する。しかしこんな小さな子が怖い思いをしただろうと思うと心が痛んだ。
「偉いわシルビア。貴女も店を守ってくれたのね」
私がシルビアの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに笑った。
私は立ち上がり周りを見渡す。気づけばレニー様の姿がない。すると私達に執事が近づいて来た。
「奥様、旦那様は店の様子を見に行きました。それと犯人なのですが── 」
そう言えば、この火事は放火だと言われたことを思い出す。するとレオナが口を開いた。
「犯人は縛り上げて店の裏に転がしておきました。そいつ……デボラ様を口汚く罵っておりまして、煩いので口に布を詰めときました」
レオナは改めて怒りが湧いてきたのか、物凄く不機嫌そうにそう言った。
「レオナ、貴女が捕まえたって聞いたわ。そんな危ないこと……」
「あの女、火をつけた時に自分も火傷を負ったようで、ヒィヒィ言っていたんです。私と目が合って突然背を向けて走り出したんで、怪しいと思って追いかけて捕まえましたが……見覚えのある顔でびっくりしました」
レオナの言葉に私は目を見開いた。
「貴女の知ってる人なの?」
「まぁ……」
レオナは口籠る。
するといつの間にかレニー様が私達の方へと戻って来ていた。その顔は苦虫を噛み潰したようだ。
「デボラ、店は裏の扉と壁、厨房の一部が燃えたぐらいで、大した被害はない。これなら直ぐに店を再開出来るだろう……ただ、な」
「どうされました?」
すると店の裏側からギャーギャー喚く女の掠れた甲高い声が聞こえた。私がそちらに目を向けると護衛が女の腕を掴んでこちらに連れて来ているのが見える。── あれは。
「アリシア……様?」
私は護衛の腕から逃れようと藻掻いている女の薄汚れた顔を見て絶句した。
後ろ手に縛られ、薄汚れたワンピースを来ている。美しかった彼女の髪はまるで鳥の巣のようにゴワゴワとしていて、見る影もない。
私はレニー様を見た。
「あれは……アリシア様ですか?」
レニー様は難しい顔で頷く。
「あぁ、あんななりをしているが、間違いなくアリシアだ。それと……これ」
レニー様が手を開くと、掌にアンティークのイヤリングが乗せられていた。
「これは……?」
「アリシアのワンピースのポケットに入っていた。確かなことは言えないが……これは王妃のイヤリングだと思う」
私はレニー様の言葉に一層驚いて思わず口をポカンと開けてしまった。
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