愛人を作ってもいいと言ったその口で夫は私に愛を乞う

初瀬 叶

文字の大きさ
147 / 164

第147話

「そこで、是非とも謝礼をしたいと思ってな」

陛下の言葉に妃陛下も頷きながら私に顔を向けた。

「何でも欲しいものを言ってちょうだい。出来る限り希望のものを謝礼として差し上げるわ」

「そんな!謝礼なんて──! 」

何にもしていない私が謝礼なんて……そんな気持ちが口をつく。断ろうとそう思った……が、ふと私にある考えが浮かぶ。

「遠慮しないで。本当に感謝してるのよ」

妃陛下が優しく微笑む。陛下も隣でウンウンと頷いていた。……今なら、多少のわがままが許されるのかもしれない。

「であれば、お願いがございます」

心臓がドキドキと音を立てる。無礼だと言われませんようにと心の中で祈りながら、私は言葉を続けた。

「ブラシェール伯爵領に隣接している王家が管理されている土地、あれを譲ってくださいませんでしょうか?」

口から心臓が飛び出しそうだ。レニー様もおや?という風に私を見た。

おじ様との約束をレニー様に話したことはない。あの荒れた土地を欲しがる私を不思議に思ったことだろう。


陛下も同じように思ったようだ。

「あの土地か?あそこは今は殆ど何の手入れもしていない、荒れた土地だぞ?然程広くもないし……あんな土地を?領地を広げたいのか?」

ブラシェール伯爵領の民の数を考えると、領地を広げる必要がないことぐらい、陛下も承知だろう。
私はここで下手に誤魔化すより、素直に話をした方が有利だと判断した。

「実は……あの土地を整地して王都まで最短距離で馬車が通れるよう道を整備したいのです。うちの領は果物を特産としております。ただ、周りに売れる領地はありません。出来れば王都で売りたい。その為にはあの土地を通る必要があるのです」

私の言葉に妃陛下が声を上げた。

「そう言えば!ブラシェール伯爵領産のジャムをプレゼントされたわ!凄く美味しかったの。また食べたいと丁度思っていたところよ」

「今は回り道をしなければ運ぶことが出来ませんので、新鮮な果物を売ることは不可能。ジャムに加工したのは輸送のしやすさからですが、お陰様でご好評をいただいております。でも、果物そのものを王都の皆様にも味わっていただきたいのです。間違いなくうちの領地の果物は我が国一だと自負しておりますので」

私は説明に思わず熱が入る。その様子に陛下は大きく頷いた。


あなたにおすすめの小説

愛していると気づいたから、私はあなたを手放します

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
愛しているのに、触れられない。 幼なじみの夫は、こう言った。 「もう、女性を愛することはできない」と。 それでも「君がいい」と言い続ける彼と、 子どもを望む現実の間で、私は追い詰められていく。 だから決めた。 彼のためにも、私は他の誰かを探す。 ――そう思ったのに。 なぜあなたは、そんな顔で私を追いかけてくるの? これは、間違った優しさで離れた二人が、 もう一度、互いを選び直すまでの物語。 ※表紙はAI生成イラストを使用しています。

騎士の妻ではいられない

Rj
恋愛
騎士の娘として育ったリンダは騎士とは結婚しないと決めていた。しかし幼馴染みで騎士のイーサンと結婚したリンダ。結婚した日に新郎は非常召集され、新婦のリンダは結婚を祝う宴に一人残された。二年目の結婚記念日に戻らない夫を待つリンダはもう騎士の妻ではいられないと心を決める。 全23話。 2024/1/29 全体的な加筆修正をしました。話の内容に変わりはありません。 イーサンが主人公の続編『騎士の妻でいてほしい 』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/96163257/36727666)があります。

【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!

さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」 「はい、愛しています」 「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」 「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」 「え……?」 「さようなら、どうかお元気で」  愛しているから身を引きます。 *全22話【執筆済み】です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/09/12 ※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください! 2021/09/20  

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

真実の愛の裏側

藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。 男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――? ※ 他サイトにも投稿しています。

貴方でなくても良いのです。

豆狸
恋愛
彼が初めて淹れてくれたお茶を口に含むと、舌を刺すような刺激がありました。古い茶葉でもお使いになったのでしょうか。青い瞳に私を映すアントニオ様を傷つけないように、このことは秘密にしておきましょう。