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第158話
「ソロモン博士……?」
「ソロモン博士は肺研究の権威でね。お義父さんは肺が悪いと聞いたから── 」
「え?父の病気……肺が悪いのですか?」
兄は私に父の病名を口にしなかった。あの時は動揺していたし、今でははっきりと聞くのが怖くて私はそれを知ろうとはしなかった。
「あ……あぁ、ごめん。知りたくなかったかな。つい興奮してしまって」
レニー様は改めて冷静になったようで、私の反応にシュンとなってしまった。
「あ、いえ!ただ、あれから兄に尋ねる勇気がなかっただけなので……」
「出過ぎた真似かと思ったんだが、あの後直ぐ義兄殿にお義父さんの病状を尋ねた。病名ははっきりしないが、肺の病だと聞いてね。ずいぶんと前になるが、北の果ての果てにある小さな村に引退した高名な医者が居ると聞いた覚えがあって、殿下に確認したんだ」
「それが……ソロモン博士?」
「そうだ。殿下が言うには、彼はもう医者として診察はしていないんだが、色んな病原体の研究を続けてるらしく、特に肺の病気に詳しいらしい。昔、風の噂程度で聞いただけだったが、思い出して良かった」
レニー様はどこか安堵したような表情を浮かべた。
「でも、そのソロモン博士が何故……?もう患者を診ることはないと引退されたのですよね?」
「僕がしつこかったからね。呆れて諦めてくれたようだ。だが、博士も御高齢。バーケット領まで行くのは負担だ。だからお義父さんにこの王都まで来てもらうことが出来れば……だが」
最近の兄からの手紙では、然程具合は悪くなさそうだが……兄が私を心配させない為に嘘をついているという可能性は否めない。
「兄に訊いてみます」
「あぁ。もちろん無理はさせられないが」
私はレニー様の顔をジッと見つめた。彼はまるで父を本当の親のように心配してくれているように見える。
「レニー様……何故ここまで── ?」
「僕は父を亡くしているが……あの時は何もしてあげられなかった。罪滅ぼし……というわけではないが、自分に何か出来ることはないかと思って──」
私はそこまで聞いて、レニー様の胸に飛び込んで彼を抱き締めた。
「……ありがとうございます。父の為に……」
レニー様はそっと私の背に腕を回す。
「もちろん診てもらったからといって、治るという保証はない。期待をさせるだけさせて、失望させてしまうかもしれない。だけど……何もしないで諦めてしまうのは、君らしくないだろう?僕もいつの間にか、君に感化されたらしい」
レニー様は優しくそう言った。私は彼を見上げる。
「動揺してしまって……私は何も考えられなくなってしまっていたみたいです。冷静でいたつもりなのですが……」
「当たり前だよ。自分の父親のことだ。冷静でいろという方が無理な話だ。なるべくお義父さんには体に負担がかからない方法を考えよう。ハルコン侯爵家に大きな馬車があってね。あれなら横になったままでも移動できる。兄さんに頼んでみよう」
レニー様がずいぶんと色んなことを既に考えてくれているのだと分かって、心が温かくなる。
気を緩めると涙が溢れ出しそうだ。私はあえて笑顔を作った。
「はい!私も直ぐに兄に手紙を書きます」
そんな私を見て、レニー様は微笑んだ。
「その調子だ。諦めず出来る限りのことをしよう」
そう言って彼は私の頭を優しく撫でた。
「ソロモン博士は肺研究の権威でね。お義父さんは肺が悪いと聞いたから── 」
「え?父の病気……肺が悪いのですか?」
兄は私に父の病名を口にしなかった。あの時は動揺していたし、今でははっきりと聞くのが怖くて私はそれを知ろうとはしなかった。
「あ……あぁ、ごめん。知りたくなかったかな。つい興奮してしまって」
レニー様は改めて冷静になったようで、私の反応にシュンとなってしまった。
「あ、いえ!ただ、あれから兄に尋ねる勇気がなかっただけなので……」
「出過ぎた真似かと思ったんだが、あの後直ぐ義兄殿にお義父さんの病状を尋ねた。病名ははっきりしないが、肺の病だと聞いてね。ずいぶんと前になるが、北の果ての果てにある小さな村に引退した高名な医者が居ると聞いた覚えがあって、殿下に確認したんだ」
「それが……ソロモン博士?」
「そうだ。殿下が言うには、彼はもう医者として診察はしていないんだが、色んな病原体の研究を続けてるらしく、特に肺の病気に詳しいらしい。昔、風の噂程度で聞いただけだったが、思い出して良かった」
レニー様はどこか安堵したような表情を浮かべた。
「でも、そのソロモン博士が何故……?もう患者を診ることはないと引退されたのですよね?」
「僕がしつこかったからね。呆れて諦めてくれたようだ。だが、博士も御高齢。バーケット領まで行くのは負担だ。だからお義父さんにこの王都まで来てもらうことが出来れば……だが」
最近の兄からの手紙では、然程具合は悪くなさそうだが……兄が私を心配させない為に嘘をついているという可能性は否めない。
「兄に訊いてみます」
「あぁ。もちろん無理はさせられないが」
私はレニー様の顔をジッと見つめた。彼はまるで父を本当の親のように心配してくれているように見える。
「レニー様……何故ここまで── ?」
「僕は父を亡くしているが……あの時は何もしてあげられなかった。罪滅ぼし……というわけではないが、自分に何か出来ることはないかと思って──」
私はそこまで聞いて、レニー様の胸に飛び込んで彼を抱き締めた。
「……ありがとうございます。父の為に……」
レニー様はそっと私の背に腕を回す。
「もちろん診てもらったからといって、治るという保証はない。期待をさせるだけさせて、失望させてしまうかもしれない。だけど……何もしないで諦めてしまうのは、君らしくないだろう?僕もいつの間にか、君に感化されたらしい」
レニー様は優しくそう言った。私は彼を見上げる。
「動揺してしまって……私は何も考えられなくなってしまっていたみたいです。冷静でいたつもりなのですが……」
「当たり前だよ。自分の父親のことだ。冷静でいろという方が無理な話だ。なるべくお義父さんには体に負担がかからない方法を考えよう。ハルコン侯爵家に大きな馬車があってね。あれなら横になったままでも移動できる。兄さんに頼んでみよう」
レニー様がずいぶんと色んなことを既に考えてくれているのだと分かって、心が温かくなる。
気を緩めると涙が溢れ出しそうだ。私はあえて笑顔を作った。
「はい!私も直ぐに兄に手紙を書きます」
そんな私を見て、レニー様は微笑んだ。
「その調子だ。諦めず出来る限りのことをしよう」
そう言って彼は私の頭を優しく撫でた。
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