明るいパーティー(家族)計画!勇者になれなかった僕は…

にゃも

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港町サーレ

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マイオ村から旅をすること数日、旅は順調に進みようやく目的地である街が見えてくる。

 道中、忘れていた冒険者ギルドのクエストである薬草などの地味な小遣い稼ぎもし荷台には魔物討伐の証である魔物の部位や珍しい草などのギルド報酬になりそうなものや単純に売れると思われるティナの盗賊時代の知恵により冒険者らしい馬車になっていた。

 しかし、冒険者のパーティーとして稼働しているかというとそれは残念ながらそれはできていないと言わざるをえない。

 まだまだ三人の熟練度や連携は低く能力は個別(冒険者カード)に見ると相当なはずなのだが、いざ戦闘となるとティナが突っ込み、ユウキがたまに戦闘に混ざろうとし経験不足で邪魔になり、レイランは応援しているだけであり、フレミアに至ってはユウキの胸ポケットから、ああだこうだと無茶な指示を出すばかりである。

 はっきり言って、ティナ以外がまともに機能していないのだ。

 ユウキは自己身体機能こう上昇能力を使えばここ数日に出会った魔物などは素手でも倒せるのではないかと思われる。かといって暴走した時にこのメンバーの誰をどのタイミングで抱いてしまうかわからないし残りのメンバーに見られるという欠点がある。その際に仲間の身体機能をあげる能力を使えば確かに連携?というには甚だ疑問ではあるがエンチャントとして魔術をかけていると言い張ればいいのだろうが…。いいのかだろうか?とにかく身体に触れてる必要がある魔術は他にもあるわけでそれで強大な敵を倒せればその場では何の問題もないだろうがその後にはきっと大きな問題がやってくるに違いがない。

 ユウキは個別に二人を抱いてはいるがティナとレイランはお互いがお互いにユウキに抱かれたとは知らないのだ。…とユウキは勘違いしているのだ。

 ティナは知らないがレイランは知っているという事実をユウキは知らない。

 知っていたとしても戦闘中にティナを襲ってしまったら、どちらかというと非戦闘員であるレイランが果たしてそんな敵を倒す為にお互いの能力を上げている最中ずっと持ちこたえられるかというとそれもまた難しいだろう。残念ながらユウキはそこまで早漏ではなかった。少なくとも5分もちこたえないといけないだろう。

 この能力は強いが不便すぎる…というか、酷すぎる。未知の能力が何かはわからないが、今の所この三人(と一匹)メンバーでは使い勝手が悪すぎるのだ。

 フレミアの言う通り、ハーレムでこそ力を発揮する能力であるのは間違いない。

 出来れば次の街で前衛の仲間だけは確保しておきたい所である。出来れば女性の女剣士が好ましい。

 そうすればティナかその剣士を順番に抱けば戦闘効率もよく、ようやくユウキも邪魔者ではなくパーティーメンバーとして先頭でも機能するのになとユウキは旅の間ずっと考えていた。

 そしてそれは段々と普通の人間の価値観から外れていく物である事にユウキは気づかなくなっていた。

 この世界でも一人を愛する事は普通であり、一部の貴族や王族が多人数を囲う習わしがあるだけなのだが、一人を愛することを一度失敗したユウキには二人以上を抱いた経験を得た事で知らぬうちに一人を愛して裏切られる悲しみのリスクから無意識に一人以上を愛して誰かを失っても誰かがいるという自身の心を守ろうとする気持ちが意識下で生まれていた事に気づいていなかった。

 ユウキに取って都合のいい事にティナは盗賊時代に頭目が複数の女性を侍らしているのが当たり前でユウキが他に女性を抱いてもイラッとはすれどもそれによってユウキを嫌いにはならないだろう。

 レイランはレイランで複数の男性と関係を持っていた事のある踊り子であった為、独占したい気持ちはあれど強く言い出せない事情があったし、ティナがユウキに抱かれているのを知っていながら好きになってしまったので数人なら仕方がないと割り切っていた。

 仲間になる相手がそれを望み、ティナとレイランが認めればこのパ――ティーはいくらでも母体を広げられるハーレムパーティーになる事をこの時彼らは知らずにいた。


*************************************
港街サーレ

 「凄い!凄い!ユウキ見て!でかい湖!」

 ティナが目の前に広がる大海原を見て叫び出す。

 「あんた…こんなのも知らないの?あれは大河っていうのよ!それにしても海はどこにあるのかしら?大河より凄いって聞いているのだけれども。」

 妖精になる前はあったのかもしれないがその姿で胸を張られても虚しいだけである。

 そして、数行前に書いた通り目の前に広がるのは海である。

 「…言難いのですがフレミア様、あれが海です。」

 ユウキが黙って二人を見ていたのでレイランが代わりに二人に説明する。

 胸を張ったまま紅潮していくフレミアが段々とプルプルと震えるとレイランを見てギラリッと鋭く吊り上がった目を向けレイランの胸に飛びつき叩き始める。

 「し、知ってるし!!ちょっとティナを試しただけだし!私の後で言おうとしてた答えを先に言って!この胸か!!この胸が私の計画邪魔したのか!!」

 ぽゆんっ!たゆんっ!とすぐさま元に戻る弾力のある胸をフレミアはひたすら叩き続ける。

 「い、痛いです!!フレミア様!お許しを!」

 これをユウキが代わりに言っていたらレイランだからこそ隠されている爪楊枝が襲ってきたに違いない。

 「…無知って罪だよな。」

 「なにが、むちむちって罪だよなよ!どこ見てんの!!喧嘩売ってんの!無い姿になった私を!」

 「誰もレイランの胸を言ってねーよ!」

 どちらにしてもユウキに矛先が向く未来だったようだ。

 「くらー!」

 フレミアがマイ楊枝を構えるとユウキに向かい突っ込む。

 (結局こうなるのか!)

 ユウキが久しぶりにコンビニ袋を出そうとした時、何かが地面から物凄い勢いで飛び出してきた。

 パクリッ!

 「へ?」

 漏れ出たのは地面すれすれに顔をつけているフレミアのものであった。

 「あの…ユウキ……ゆうきいいいいいいいいいいや~~~~~~~~~!!!!!!!」

 「……。」

 「……。」

 「……あっ!ユウキ!助けないと!!」

 いち早く素に戻ったのはティナであった。

 「そ、そうだな。レイラン!ティナ!お願いだ。馬車を預けてきてくれ!俺はアレを追う!」

 「わ、わかったわ!確かこの街にパティオっていう酒場があるはずよ!そこに集合しましょう!」

 走りながらユウキはレイランにわかったと手をあげると久しぶりに全力で目標物を追いかけて行った。

 「ルーズボールを追って捕まえるのは得意中の得意だ!」

 「ルーズボール???」

 ティナが首を傾げ手に持った馬車の手綱を引き始める。

 「あれって猫よね。猫に咥えられる妖精って…いえ、その前に王女様って。」

 レイランは全力で猫を追っていくユウキをただただその姿が消えるまで見送っていたのだった。 
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