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第2話 人間界の第一印象は「甘くて美味しい」
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人間界最北端の都シジャックでは秋の祭りが行われていた。2百年前魔界から解放された日を祝うまつりだった。人々は角や魔女の帽子などの形をした神輿を担いで進行し、子供たちは魔族や幽霊に変装して駆けずり回った。
昔は都市のみんなを恐れさせていた要素全部、楽しい祭りと文化の一部になっていた。この都市にはもう魔界の侵略を心配するものはいなかった。もちろん、町の中央にある広場の『勝利の祭壇』が魔王城に繋がるポータルであることを知ってる者もいなかった。
2百年ぶりにそのポータルは開かれた。そこで出たのは赤いフードを被った魔王のユリア。
「ここが人間界か。」
魔王は賑わっている街を見下ろした。ゆっくり、上品に祭壇からおりる階段に足を運んだ。そして見事に。
「うあああっ!」
転び落ちてしまった。古い階段の壊れた所を踏み外れて倒れたのだ。
「痛い…」
魔王は痛むおしりをこすりながら座っていた。すると、祭壇の管理役の人が近づいてきた。
「おい!ここで何してるんだ!」
魔王はビビッた。帝王学を学ぶときいつも聞いたからだった。人間は魔族を理由もなく殺すと。しかも今は護衛が誰もいなかった。
「ヒイッ!」
魔王はフードをもっと深く被った。角は魔族であることの証。ばれたら危ないめに遭うに違いない。
「何者だ!」
すぐ前まで近づいてきた管理役が怒鳴りながら魔王のフードを外した。これで終わりか、ピーマンなんかから逃げなければよかったと魔王は思った。彼女は怖かった。それでも魔王はいつも堂々とするべき存在。彼女は目の前の管理役に負けずに大きな声で答えた。
「あたしは魔王だ!」
管理役は驚いた。
「魔王だと…?」
彼は首をかしげて言い続けた。
「魔王にしては角が小さすぎるんじゃないかな…」
「なんだって?」
「魔王は巨大な角を持ってるって言われてるから。見たことはないけど。」
「角小さくても魔王だもん!」
魔王は自尊心を傷つけられて顔が真っ赤になった。
「分かった、分かった。それに大声出してごめん。驚いただろう。祭壇に落書きするやつがいるから…その子だと思ってつい。」
祭壇の管理役は魔王を攻撃する気はなさそうだった。むしろ親切にポケットからロリポップを出して魔王に渡した。魔王はそのロリポップを持ってじっと見るばかりいた。
「食べなよ。怖がらせのお詫び。」
魔王はこわごわ包装をはずしてロリポップを口に入れた。甘い味が口内を占領するように覆いつくした。魔界では感じたことのない優しくて柔らかい味だった。
「おいしい。」
「でしょう?うちの特性キャンディーだから。」
彼女は感激したように言葉を吐いた。そして一息してからキャンディーをかみ壊して一気に飲み込んだ。管理役はびっくりして言った。
「歯いたくない?」
「もう一本ちょうだい。」
「ははは、そんなにおいしかった?でもごめんね。もうない。」
魔王はしょげて残ったロリポップの棒を見つめた。
「俺にはもうないけど…住宅街に行ってみたらどう?」
「住宅街?」
「今日は祭りだからみんな訪れた人にキャンディー配ってくれるはずだよ。」
「本当?」
「もちろん。君シジャックの人じゃないみたいだね。こんなに北側まで旅する人は珍しいけど、どこから来た?」
「魔王城。」
「設定ははっきり守る主義?」
「住宅街はどっち?」
管理役は人差し指で子供たちがはしゃいでいる方向を指した。
「あっちだよ。ドアごと丁寧にノックして、『お菓子をくれないと、いたずらしちゃうぞ!』というとキャンディー貰えるはずだよ。」
「分かった!」
そう言った途端魔王は立ち上がり、管理役がさした方に走っていった。
「えっ!」
彼女の後姿をみた管理役は戸惑った。子供だと思い込んでいた彼女の背が成人の女性の平均ぐらいに高かったからだ。
「あの年でツインテール…?しかも変装なんて。いや、成長が早いだけなのかな。」
シジャックでツインテールは子供だけのものだった。管理役は首を振りながら仕事に戻った。
昔は都市のみんなを恐れさせていた要素全部、楽しい祭りと文化の一部になっていた。この都市にはもう魔界の侵略を心配するものはいなかった。もちろん、町の中央にある広場の『勝利の祭壇』が魔王城に繋がるポータルであることを知ってる者もいなかった。
2百年ぶりにそのポータルは開かれた。そこで出たのは赤いフードを被った魔王のユリア。
「ここが人間界か。」
魔王は賑わっている街を見下ろした。ゆっくり、上品に祭壇からおりる階段に足を運んだ。そして見事に。
「うあああっ!」
転び落ちてしまった。古い階段の壊れた所を踏み外れて倒れたのだ。
「痛い…」
魔王は痛むおしりをこすりながら座っていた。すると、祭壇の管理役の人が近づいてきた。
「おい!ここで何してるんだ!」
魔王はビビッた。帝王学を学ぶときいつも聞いたからだった。人間は魔族を理由もなく殺すと。しかも今は護衛が誰もいなかった。
「ヒイッ!」
魔王はフードをもっと深く被った。角は魔族であることの証。ばれたら危ないめに遭うに違いない。
「何者だ!」
すぐ前まで近づいてきた管理役が怒鳴りながら魔王のフードを外した。これで終わりか、ピーマンなんかから逃げなければよかったと魔王は思った。彼女は怖かった。それでも魔王はいつも堂々とするべき存在。彼女は目の前の管理役に負けずに大きな声で答えた。
「あたしは魔王だ!」
管理役は驚いた。
「魔王だと…?」
彼は首をかしげて言い続けた。
「魔王にしては角が小さすぎるんじゃないかな…」
「なんだって?」
「魔王は巨大な角を持ってるって言われてるから。見たことはないけど。」
「角小さくても魔王だもん!」
魔王は自尊心を傷つけられて顔が真っ赤になった。
「分かった、分かった。それに大声出してごめん。驚いただろう。祭壇に落書きするやつがいるから…その子だと思ってつい。」
祭壇の管理役は魔王を攻撃する気はなさそうだった。むしろ親切にポケットからロリポップを出して魔王に渡した。魔王はそのロリポップを持ってじっと見るばかりいた。
「食べなよ。怖がらせのお詫び。」
魔王はこわごわ包装をはずしてロリポップを口に入れた。甘い味が口内を占領するように覆いつくした。魔界では感じたことのない優しくて柔らかい味だった。
「おいしい。」
「でしょう?うちの特性キャンディーだから。」
彼女は感激したように言葉を吐いた。そして一息してからキャンディーをかみ壊して一気に飲み込んだ。管理役はびっくりして言った。
「歯いたくない?」
「もう一本ちょうだい。」
「ははは、そんなにおいしかった?でもごめんね。もうない。」
魔王はしょげて残ったロリポップの棒を見つめた。
「俺にはもうないけど…住宅街に行ってみたらどう?」
「住宅街?」
「今日は祭りだからみんな訪れた人にキャンディー配ってくれるはずだよ。」
「本当?」
「もちろん。君シジャックの人じゃないみたいだね。こんなに北側まで旅する人は珍しいけど、どこから来た?」
「魔王城。」
「設定ははっきり守る主義?」
「住宅街はどっち?」
管理役は人差し指で子供たちがはしゃいでいる方向を指した。
「あっちだよ。ドアごと丁寧にノックして、『お菓子をくれないと、いたずらしちゃうぞ!』というとキャンディー貰えるはずだよ。」
「分かった!」
そう言った途端魔王は立ち上がり、管理役がさした方に走っていった。
「えっ!」
彼女の後姿をみた管理役は戸惑った。子供だと思い込んでいた彼女の背が成人の女性の平均ぐらいに高かったからだ。
「あの年でツインテール…?しかも変装なんて。いや、成長が早いだけなのかな。」
シジャックでツインテールは子供だけのものだった。管理役は首を振りながら仕事に戻った。
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