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第一部。オリム、恋人に浮気された腹いせに男娼を買う(前編)
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ショックだった。
両思いだと、疑ったこともない恋人だったから。
声をかける勇気などなく、ふたりが振り向くよりも前に、その場から逃げ出した。
オリムは、もともと平民の生まれだった。
しかし彼には、類い稀な魔法の才能があったため、将来は明るかった。
頭の中がぐちゃぐちゃで、
あてもなく走って、走って、
気づいたら、娼婦が客をとるような路地裏にいた。
普段の運動不足がたたり、
それ以上走れなくなって、はぁはぁと、肩で息をする。
「どうしました?何かありました?」
淫靡な雰囲気をまとわりつかせた、あきらかにセックスワーカーとわかる男に心配そうに声をかけられた。
艶やかな黒髪に濡れたような紫の瞳を持つ男娼だった。
夕闇の中でも陶器のようなキメの細かい白い肌だとわかる。
第一印象は醜い傷だな、ということだ。
まともじゃないセックスワーカーは店に属することができないため、こうやって個人的に路地裏で客をとる。
その男娼は、小さな顔と高い身長で整った顔をしているけれど、顔に大きな傷があった。右の額から始まり、そのまま真っ直ぐ真下に、頬まで続く傷。
右目は傷にかかっていて、義眼であることがわかった。
色恋営業で客に散々貢がせたあげく、切りつけられたというところだろうか。
傷さえなければ、人気のセックスワーカーだと言われても納得できるような外見なのに、
それが全てを台無しにしていた。
そのせいでこんなところで客引きをしているのだろうと納得できた。
「いくらだ?」
「え?」
オリムの問いかけに男娼は驚いたように左目を瞬かせた。
ぱさりと音がしそうなほど長いまつげだが、
右のまぶたが傷でひきつれて、僅かしか動かないので、
美形すぎるのが逆に
不気味に感じる。
「お前を買う。いくらだ?」
もう一度言った。
ビビとは、終わりだ。
諦めなきゃならない。
オリムの大好きだったビビの笑顔が浮かぶ。
やけくそになっていたのもあるし、
セックスが下手と言われたことも気になって、
今すぐにでも、誰かを抱いて、そんなことはないと証明したかった。
「僕を買うんですか?…もう少しむこうに僕よりいくらかマシそうな男娼が何人かいましたけど、案内しましょうか?」
驚いた顔で言われ、逆にオリムが驚いた。
「お前こそセックスワーカーのくせに客を選り好みするのか?」
「ええっ!
違います。
僕でいいんですか?
…僕こんな外見なので、
あなたみたいに綺麗な人にそんなこと言われるなんて…嬉しいです。それに僕…」
頬を染めて目元を潤ませ、口元を押さえて言ったその姿に、オリムは気を良くした。
綺麗なんて言われ慣れているのに、嬉しかった。
「…なんですけど、いいですか?」
何か言われたが、聞き逃した。
多分醜い傷があるけど、とかそんなことだろう。
抱くのならこの男がいいとオリムは思った。
「お前でいい、いくらだ」
気を良くしていたオリムは、男の提示した額が安いか高いのかもわからなかったが、了承して、提示の倍額払った。
その場でズボンのチャックを脱がせてきたので、
さすがに初対面の男娼と路地裏で致す勇気はなく、
宿に行くことにした。
両思いだと、疑ったこともない恋人だったから。
声をかける勇気などなく、ふたりが振り向くよりも前に、その場から逃げ出した。
オリムは、もともと平民の生まれだった。
しかし彼には、類い稀な魔法の才能があったため、将来は明るかった。
頭の中がぐちゃぐちゃで、
あてもなく走って、走って、
気づいたら、娼婦が客をとるような路地裏にいた。
普段の運動不足がたたり、
それ以上走れなくなって、はぁはぁと、肩で息をする。
「どうしました?何かありました?」
淫靡な雰囲気をまとわりつかせた、あきらかにセックスワーカーとわかる男に心配そうに声をかけられた。
艶やかな黒髪に濡れたような紫の瞳を持つ男娼だった。
夕闇の中でも陶器のようなキメの細かい白い肌だとわかる。
第一印象は醜い傷だな、ということだ。
まともじゃないセックスワーカーは店に属することができないため、こうやって個人的に路地裏で客をとる。
その男娼は、小さな顔と高い身長で整った顔をしているけれど、顔に大きな傷があった。右の額から始まり、そのまま真っ直ぐ真下に、頬まで続く傷。
右目は傷にかかっていて、義眼であることがわかった。
色恋営業で客に散々貢がせたあげく、切りつけられたというところだろうか。
傷さえなければ、人気のセックスワーカーだと言われても納得できるような外見なのに、
それが全てを台無しにしていた。
そのせいでこんなところで客引きをしているのだろうと納得できた。
「いくらだ?」
「え?」
オリムの問いかけに男娼は驚いたように左目を瞬かせた。
ぱさりと音がしそうなほど長いまつげだが、
右のまぶたが傷でひきつれて、僅かしか動かないので、
美形すぎるのが逆に
不気味に感じる。
「お前を買う。いくらだ?」
もう一度言った。
ビビとは、終わりだ。
諦めなきゃならない。
オリムの大好きだったビビの笑顔が浮かぶ。
やけくそになっていたのもあるし、
セックスが下手と言われたことも気になって、
今すぐにでも、誰かを抱いて、そんなことはないと証明したかった。
「僕を買うんですか?…もう少しむこうに僕よりいくらかマシそうな男娼が何人かいましたけど、案内しましょうか?」
驚いた顔で言われ、逆にオリムが驚いた。
「お前こそセックスワーカーのくせに客を選り好みするのか?」
「ええっ!
違います。
僕でいいんですか?
…僕こんな外見なので、
あなたみたいに綺麗な人にそんなこと言われるなんて…嬉しいです。それに僕…」
頬を染めて目元を潤ませ、口元を押さえて言ったその姿に、オリムは気を良くした。
綺麗なんて言われ慣れているのに、嬉しかった。
「…なんですけど、いいですか?」
何か言われたが、聞き逃した。
多分醜い傷があるけど、とかそんなことだろう。
抱くのならこの男がいいとオリムは思った。
「お前でいい、いくらだ」
気を良くしていたオリムは、男の提示した額が安いか高いのかもわからなかったが、了承して、提示の倍額払った。
その場でズボンのチャックを脱がせてきたので、
さすがに初対面の男娼と路地裏で致す勇気はなく、
宿に行くことにした。
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