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第一部。オリム、恋人に浮気された腹いせに男娼を買う(後編)
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見目の良かったクロノスも、顔に傷を負い、右目と職を失うと、
今まで散々彼をちやほやしてきた者たちのほとんどは手のひらを返したようになった。
婚約者には障害者だからという理由で婚約破棄されたし、
それなりに親しいと思っていた友人も腫れ物を扱うような態度で徐々に離れていった。
口には出さないが、両親からの失望も伝わってくる。
そんななか、オリムだけはいつもと同じ態度だった。
いままで業務連絡しかしたことのなかったオリムに、
初めて話しかけられたのは、顔に傷を負った後だ。
王の外遊の護衛から帰ってきた彼は、わざわざクロノスに会いに来てくれた。
「傷がなんだよ。中身は変わらないだろ。変えたらダメだ。」
それは物事の真理を見極めようとする彼らしい発言だった。
クロノスは勝手にその言葉に励まされた。
「オレがヒールしてみる?まぁ、もう変わらないだろうけど。他の魔術師がかけるよりは多少強いから」
そう言ったオリムに、クロノスは小さく首をふった。
「大丈夫です。中身は変わらないから」
少なくともオリムは表面だけを見ている訳じゃない。ますますオリムを好きになった。
小さい頃、一方的に気に入られ、婚約させられていた他国の王女から、
婚約を破棄されたことは、不幸中の唯一の幸いだった。
これからは堂々とオリムを好きでいられる。
「あの、もし良かったら、今度飲みに行きませんか?退職金、バカみたく出たので、奢らせてください」
勇気を出した誘いは、すげなく断られる。
「ごめんな、恋人が妬くから、そういう誘いは全部断ってるんだ。他のやつ誘ってくれ。
…でも、そのくらい元気なら良かった。」
クロノスは笑って頭を下げた。
王様から王子の剣の指南役にと、打診を受けた時に、受け入れたのは、
我ながら、往生際が悪いと思いつつ、
まだオリムの近くにいたかったからだ。
ただし、爵位を継ぐまでの半年の間だけだ。
不毛な想いをいつまでも引きずっているのだから、期限があってちょうどいいのかもしれない。
常にオリムを見ていたクロノスは、オリムがいつも誰を見ていたか、わかっていた。
オリムには恋人がいた。
そいつは、外見にステ全振りの、手の早い、金とセックスが大好きな男だったはずだ。
オリムに気に入られたいばかりに、別人レベルまでネコをかぶっているあの男。
悪趣味だ、騙されてると思いながら、
ヴァイオレットに笑いかけるオリムの顔は、クロノスには眩しかった。
あいつもオリムの笑顔のために自分を変えたのだと思った。
でもそれは間違っていた。あいつはオリムを欺いていたに過ぎなかった。
今まで散々彼をちやほやしてきた者たちのほとんどは手のひらを返したようになった。
婚約者には障害者だからという理由で婚約破棄されたし、
それなりに親しいと思っていた友人も腫れ物を扱うような態度で徐々に離れていった。
口には出さないが、両親からの失望も伝わってくる。
そんななか、オリムだけはいつもと同じ態度だった。
いままで業務連絡しかしたことのなかったオリムに、
初めて話しかけられたのは、顔に傷を負った後だ。
王の外遊の護衛から帰ってきた彼は、わざわざクロノスに会いに来てくれた。
「傷がなんだよ。中身は変わらないだろ。変えたらダメだ。」
それは物事の真理を見極めようとする彼らしい発言だった。
クロノスは勝手にその言葉に励まされた。
「オレがヒールしてみる?まぁ、もう変わらないだろうけど。他の魔術師がかけるよりは多少強いから」
そう言ったオリムに、クロノスは小さく首をふった。
「大丈夫です。中身は変わらないから」
少なくともオリムは表面だけを見ている訳じゃない。ますますオリムを好きになった。
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婚約を破棄されたことは、不幸中の唯一の幸いだった。
これからは堂々とオリムを好きでいられる。
「あの、もし良かったら、今度飲みに行きませんか?退職金、バカみたく出たので、奢らせてください」
勇気を出した誘いは、すげなく断られる。
「ごめんな、恋人が妬くから、そういう誘いは全部断ってるんだ。他のやつ誘ってくれ。
…でも、そのくらい元気なら良かった。」
クロノスは笑って頭を下げた。
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我ながら、往生際が悪いと思いつつ、
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ただし、爵位を継ぐまでの半年の間だけだ。
不毛な想いをいつまでも引きずっているのだから、期限があってちょうどいいのかもしれない。
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悪趣味だ、騙されてると思いながら、
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あいつもオリムの笑顔のために自分を変えたのだと思った。
でもそれは間違っていた。あいつはオリムを欺いていたに過ぎなかった。
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