恋人に浮気された腹いせに男娼を買ったら人生狂った。(完全版)

まりあ

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第一部。オリム、結婚するので退職する

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出した退職届けを、中身も読まずに宰相に返された。





「オリムくんさぁ、うちオリムくんがいなかったら回っていかないのわかっているでしょう?」



「…まぁ、戦争とかになればそうかもしれませんけど。今平和だし」



「じゃあ戦争始まったら戻って来てくれんの?」



「それは、その時にならないとわからないですけど。もう自分一人で決められることじゃないし」



「ほら、受け取れないよ」



納得がいかずオレが動けずにいると

「ここやめて、どうするつもりなの…」

「…寿退職ですけど!?」



「あぁ、相手はヴァイオレットだっけ。



彼は次男だし、お兄さんが爵位をついでたよね?

オリムくんのことは小さな頃から知っているし、幸せになってもらいたいとは思ってるけど、結婚するからって仕事まで辞める必要あるのかな?

ヴァイオレットもちょうど王宮勤めだし、このままふたりともずっといてよ。というか、どちらかが仕事をやめるにしても、高収入のキミがやめるより、ヴァイオレットがやめるほうがいいんじゃないか?

王宮ほど厚待遇の職場ってないと思うよ」



ヴァイオレットじゃない、と言おうとして、

もしクロノスと言ったら、クロノスに迷惑がかかるんじゃないかと思えて言葉を呑んだ。



「それとも他国から声がかかったかい?」宰相の目が途端に鋭くなり、オレは首を振った。



「とんでもない」









※※※



「ってことで、退職届け、受け取ってもらえなかった…



あ。これ、うまい」



仕事終わり、ナイトレイ家の王都用の家タウンハウスで、彼の作ったチキンステーキを頬張りながらオレは言った。

使用人がじゃなくて、クロノスがわざわざオレのために自分で作ってくれたものだ。

パリパリだしジューシーでめちゃくちゃうまい。





隣で、チキンをオレの口に入るサイズまで切り分けてくれながらクロノスが言う。



「やっぱり…」

不安そうなクロノスにオレは笑いかけた。

「大丈夫。本気度伝わってなかったのかも、もう一度言ってみるから。」

クロノスがナプキンでオレの口を拭いてくれる。

その隙に、オレは付け合わせの人参をこっそりクロノスの皿に移す。

「こーら、食べないと」

オレに母親がいたらこういうことを言うんだろうか?



「えー。嫌いなんだけど」

「じゃぁ、一個だけ、がんばれる?」

オレが弱いキラキラした瞳で見つめられて

「…うん」頷かざるをえなかった。



あーんで、食べさせてくれる。「あ。意外と食える」



「うん、味付け工夫したんだ。も一個いけますか?」



一個だけ、って約束したのに、もう一個口元に差し出してくるから、オレは口を固く結んだ。

諦めたクロノスが自分で頬張ってから、オレの頬を掴んで、自分のほうをむかせると、口移しで、オレに食わせてきた。

さすがに母親だったらここまではしないだろう。



仕方ないから、受け入れると、

「えらいえらい」と子供にするみたいに頭を撫でてくれた。

好きで堪らないって顔で。

照れて、視線を反らした。

本当卑怯だ、そういう顔。めちゃくちゃ幸せを感じるじゃないか。クロノスの笑顔に、心臓が一際大きく高鳴る。人参の味もわからなくなって、丸のみした。

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