恋人に浮気された腹いせに男娼を買ったら人生狂った。(完全版)

まりあ

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第二部。過去の回想。偽物だった男娼の純情な感情(クロノス)

3

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会いに来たクロノスの婚約者が、一番怒っていた。

クロノスの姿を見ると、怒りで身体を震わせた。

我を忘れた言葉は刃だった。

ヒステリックに罵り、言葉を吐き捨てる。

そして、出されたお茶を掴み、

一瞬の迷いもなくクロノスに投げつけた。

クロノスはけることをしなかった。

カップがクロノスの醜い顔に当たり、そのまま床に落ちて砕けた。

また傷ができたけど、もうどうでも良かった。



数日後に正式な婚約破棄の知らせが届き、そのことだけは、クロノスは感謝した。



そしてクロノスは、それを知った王子にプロポーズされた。

「妃として迎えたい。必ず幸せにするから。お前だけを愛して、生涯側室はもたないと約束する」
そう言われ、笑って断る。
「贖罪なら気にしないで。僕は誰を責める気もありません」



「違う、本気で好きなんだ。僕の気持ちわかってるよね?」


「殿下こそ知っていますよね?僕には好きな人がいる。」



「でも、あいつには恋人が…」



「うん。こんな姿になって、うまくいくわけはないのはわかっています。

同じ想いを返してもらえるとは思わない。

だけど、せっかく婚約破棄をされて、

堂々と想うことを許されるようになったから、僕はひとりでいいんです。

一生その人だけを想って生きたいんです。」



そう、クロノスはいままでオリムを堂々と想うことさえ許されなかった。



「いつかお前がオリムを忘れられるまで、待つから。待っててもいいよね?」

なおも言い募る王子にクロノスは首をふる。

「ありがとう。だけどダメです」



王子は泣いて、クロノスはいつまでも泣き止まないその背中を優しくさすった。



数日後、オリムそっくりのだっちワイフが、王子から、クロノスに贈られた。

拘って作らせたらしく、等身大のそれは、普通に見ると本人と間違えるほどの精巧な作りになっている。

実は王子からのプレゼントは今回で3体目だ。

クロノスの家には、それぞれ年齢の違うオリムそっくりのだっちワイフが3体いる。




ちょうどそんな頃、

本物のオリムが、王の外遊の護衛から戻ってきた。



今までまともに話したこともなかったオリムが話しかけてくれた。

彼の目には、憐れみも、嫌悪もなかった。



「傷がなんだよ。中身は変わらないだろ。変えたらダメだ。」



それは物事の真理を見極めようとする彼らしい発言だった。



「オレがヒールしてみる?まぁ、もう変わらないだろうけど。他の魔術師がかけるよりは多少強いから」



オリムのヒールは他の魔術師とは桁違いだ。

だけどなんとなくわかっている、この傷は消えないということを。

クロノスは首を振った。

「大丈夫です。中身は変わらないから」

中身は変わらない。

オリムが言った言葉を反芻しただけで、なんだか強くなれたように感じた。




その言葉が背中を押した。

どうしても伝えたかった。

最後に一度だけ…

「……あの、もし良かったら、今度飲みに行きませんか?

退職金、馬鹿みたいに出たので。奢らせてください。」

そう言い終えた瞬間、心臓の鼓動がやけにうるさく響いた。

こんな醜い自分が、彼を誘うなんて。

でも、婚約者がいなくなったことで、気持ちを抑えることができなかった。


オリムは少し困ったように眉を寄せて、
ほんのわずかに口元を緩めた。

「ごめんな。恋人が妬くから、そういう誘いは全部断ってるんだ。

……でも、そのくらい元気なら良かった。」

その言葉は、丁寧に研がれた刃のようだった。

想定済みのはずなのに、思っていた以上に、深く刺さる。

言葉も出ず、ただ頷くしかなかった。




それでもうすべてを諦めて、領地に帰るつもりだった。クロノスにはナイトレイ家を継ぐ義務がある。



それでも、王子の剣の指南役にと乞われれば、

こんな状態になってまで、身の丈をわきまえずに、オリムのそばにいたい自分をとめることが出来ない。

わがままは、領地に戻るまでの半年間だけだからと、自分自身を誤魔化した。





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