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第二部。過去の回想。偽物だった男娼の純情な感情(クロノス)
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それから数年経ち、25歳になったクロノスは、騎士団のエースにまでのぼりつめていた。
そしてある日魔物が各地で沸いていると言う報せが入る。この程度はよくある話だ。
王子が実地練習をしたいというので同行させることになった。
しかし現場に着いた時、クロノスは退く指令を出そうか迷った。
魔物が鬼沸きしていたからだ。
いまのメンバーで勝ち目は薄かった。
とくに魔術師が不足していた。
かと言って、城に戻って隊列を組み直せば、その間に被害が広がるだろう。
オリムだったら、魔物が増える僅かな兆候を見逃さなかったかもしれない。全部自分の責任だ。
そう考えている一瞬の隙に、
王子が魔物にむかって飛び出して行ったのだ。
王子は軽装備だった。
思わず王子を庇って前に出たクロノスは、顔にドラゴンの爪を受ける。
剣を引き抜き、ドラゴンと対峙する。
魔術師がクロノスにヒールをかけようとするのを彼は止めた。
魔物の量を考えると、ヒールするMPさえ攻撃にまわさないと倒せないと思ったからだ。
それだけギリギリの戦いだった。
片目で見たあの光景はいまも瞳に焼きついている。
ドラゴンは喉の奥から大地を揺るがす咆哮を響かせていた。
翼を打ち鳴らすたびに、空気が裂けるように渦を巻く。
わずかに通った物理攻撃に鱗が剥がれ落ち、赤黒く煮えたぎる肉が露出する。
その肌からは、沸騰する血の匂いが立ち上り、熱が周囲の空気を揺らしていた。
焦げた空気を伴う炎が吐き出されるたびに、肌も喉も焼かれるように痛んだ。
深紅の瞳に理性はなく、ただ純粋な破壊の本能だけが息づいていた。
結果的に寸でのところで魔物を殲滅した。ほとんどクロノスの力だった。必死だった。
バフがかかっていたとは言え、他の魔物も襲ってくる中でよく倒せたなと、あとから冷静になると無謀さに震えた。
端でずっと泣いていた王子にクロノスは近づく。
「大丈夫ですか?」
王子は「大丈夫」と答えながらもクロノスにしがみつき震えて泣きながら謝った。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「僕こそ怖い思いをさせてごめんね」
クロノスは、王子に怪我がなくて良かったと思いながら、そっと王子を撫でて微笑んだ。
別の場所でも魔物が沸いていたため、城に戻っても、魔術師は不足していた。
クロノスは自分を後回しにして、他の負傷者へのヒールを優先させるように指示した。
それでも死者を出さなかったことに、クロノスは強い安堵を感じていた。
そして、その時を境に王子以外のみんなの態度が変わったことを
クロノスはなんとなく感じていた。
鏡を見て、自分自身でも気づく。
胃が捻れる感覚に、そのまま吐いた。
それはあまりにも醜かった。
見るだけで不快になる傷。
綺麗な顔は最早何の意味もなさない。
上位の魔物につけられた傷は、呪いだった。忌み嫌われる。
そういうことだ。
やっとクロノスがヒールを受けられた時には、その傷は禍々しく存在を主張し、消える気配はなかった。
どれだけ沢山のヒールがかけられても、だ。
みんな、手のひらを返したように、クロノスから離れていった。
王子だけが傷が気にならないのか、罪悪感からなのか、
前と態度は変わらず、相変わらずクロノスにべったりだったことが、クロノスの心を救った。
それでも両親にも明らかに落胆され泣かれると、合わせる顔もなくなる。
傷は右目にも及び、右目の視力は眼球ごと失われ、義眼をいれた。
片眼になって騎士を続けるのは難しいと、仕事もやめることになった。
そしてある日魔物が各地で沸いていると言う報せが入る。この程度はよくある話だ。
王子が実地練習をしたいというので同行させることになった。
しかし現場に着いた時、クロノスは退く指令を出そうか迷った。
魔物が鬼沸きしていたからだ。
いまのメンバーで勝ち目は薄かった。
とくに魔術師が不足していた。
かと言って、城に戻って隊列を組み直せば、その間に被害が広がるだろう。
オリムだったら、魔物が増える僅かな兆候を見逃さなかったかもしれない。全部自分の責任だ。
そう考えている一瞬の隙に、
王子が魔物にむかって飛び出して行ったのだ。
王子は軽装備だった。
思わず王子を庇って前に出たクロノスは、顔にドラゴンの爪を受ける。
剣を引き抜き、ドラゴンと対峙する。
魔術師がクロノスにヒールをかけようとするのを彼は止めた。
魔物の量を考えると、ヒールするMPさえ攻撃にまわさないと倒せないと思ったからだ。
それだけギリギリの戦いだった。
片目で見たあの光景はいまも瞳に焼きついている。
ドラゴンは喉の奥から大地を揺るがす咆哮を響かせていた。
翼を打ち鳴らすたびに、空気が裂けるように渦を巻く。
わずかに通った物理攻撃に鱗が剥がれ落ち、赤黒く煮えたぎる肉が露出する。
その肌からは、沸騰する血の匂いが立ち上り、熱が周囲の空気を揺らしていた。
焦げた空気を伴う炎が吐き出されるたびに、肌も喉も焼かれるように痛んだ。
深紅の瞳に理性はなく、ただ純粋な破壊の本能だけが息づいていた。
結果的に寸でのところで魔物を殲滅した。ほとんどクロノスの力だった。必死だった。
バフがかかっていたとは言え、他の魔物も襲ってくる中でよく倒せたなと、あとから冷静になると無謀さに震えた。
端でずっと泣いていた王子にクロノスは近づく。
「大丈夫ですか?」
王子は「大丈夫」と答えながらもクロノスにしがみつき震えて泣きながら謝った。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「僕こそ怖い思いをさせてごめんね」
クロノスは、王子に怪我がなくて良かったと思いながら、そっと王子を撫でて微笑んだ。
別の場所でも魔物が沸いていたため、城に戻っても、魔術師は不足していた。
クロノスは自分を後回しにして、他の負傷者へのヒールを優先させるように指示した。
それでも死者を出さなかったことに、クロノスは強い安堵を感じていた。
そして、その時を境に王子以外のみんなの態度が変わったことを
クロノスはなんとなく感じていた。
鏡を見て、自分自身でも気づく。
胃が捻れる感覚に、そのまま吐いた。
それはあまりにも醜かった。
見るだけで不快になる傷。
綺麗な顔は最早何の意味もなさない。
上位の魔物につけられた傷は、呪いだった。忌み嫌われる。
そういうことだ。
やっとクロノスがヒールを受けられた時には、その傷は禍々しく存在を主張し、消える気配はなかった。
どれだけ沢山のヒールがかけられても、だ。
みんな、手のひらを返したように、クロノスから離れていった。
王子だけが傷が気にならないのか、罪悪感からなのか、
前と態度は変わらず、相変わらずクロノスにべったりだったことが、クロノスの心を救った。
それでも両親にも明らかに落胆され泣かれると、合わせる顔もなくなる。
傷は右目にも及び、右目の視力は眼球ごと失われ、義眼をいれた。
片眼になって騎士を続けるのは難しいと、仕事もやめることになった。
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