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第二十二話 異世界アルバイト!「無限地獄会社ENMAへようこそ!」①

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天界に来てから約1ヶ月
ミミの家は3階だての2階の角部屋だ。ちなみに部屋は1DK、現在は見習い女神のため、パン屋さんで時給720エリカのアルバイトをしながら生活をしている。

見習い女神の最終試験は指名された俺を無事に異世界に転生させること。
俺はミミの最終試験で転生されるはずの人だった。

しかし、ひょんなことから、本当にひょんなことから……異世界に送る異世界パット、略してイセパットを壊してしまった。彼女の試験は全て自分で解決することが条件で、イセパットの修理費用も彼女のポケットマネーから出す必要がある。

その額、120万エリカ。
日本円に120万円。


俺はイセパットの修理代の返済の為、日給8万エリカの仕事をしている。
日給8万!? 羨ましい! やってみたい!
何も知らない人からはそんな声が聞こえてきそうだ。しかし、このアルバイトは普通とはかなり異なるのだ。


なんたってここは天界、天界のアルバイトなのだ。

俺の仕事、それは異世界に転生することだったのだ!

俺は異世界アルバイトをこなしながらミミの家に居候している。

ゴス! ゴス!
「うっ!」
朝の心地の良いゴス! ゴス!(嘘、かなり痛い)で起床する。
「将大さん、ご飯できました! どうぞ!」
「ありがとう、わあ! このパンすごくもちもちで美味しいよ!」
……最近、ミミの作るパンが美味しくなってきた。もちろん初めから美味しいんだけど、なんと言うかコシがあるというか……すごくもちもちしているんだ。多分毎朝のゴス! ゴス! が原因かもしれない。
俺、田中将大はミミの家で寝泊まりをしている。このアパートは男子禁制であるからコッソリと暮らしている。最初は宿屋に泊めさせてくれたのだが、お金がもったいないとの事で、今俺はここにいる。

「ありがとうございます!」
毎回彼女に美味しいと言う度に彼女は喜んでくれた。
「次はもっと美味しいパンを作りますね!」
そう言ってくれるのは非常にありがたいのだが、ほぼ日課のゴス! ゴス!がまだまだ続くのは勘弁して欲しい。
ミミの目覚めはすごく甘えん坊になるんだ。
今日だって「なでなでして」だったり、「お目覚めの……」と遠慮なく呟くが、そうしようと思って手を伸ばしたらピクってなり「将大さん!? いくら私が可愛いからって、女の子の寝込みを襲うのはだめーー!」
ゴス! ゴス! と言った感じだ。
ちなみにこの音は骨が揺れる音だ。君たちが思っている30倍の苦痛を伴う。

「そろそろ、ダリアさんの快晴やにアルバイトしてくるよ」
「行ってらっしゃい! 気をつけてくださいね! あ! そうそう! 今日の帰りに私のバイト先に寄ってください!」
「ああ、それは良いけど? ミミのアルバイト屋さんのパン屋さんで何があるんだ?」
「それはですね!? 凄い物がもらえるチャンスなんです!!!」
「チャンス? なんだろう、イベントかな? わかった、終わり次第向かうよ」
(ミミはとても嬉しそうに呟いたが、何か欲しいものがあるのだろうか? ひとまずは出かけよう)
「行ってきますー!」

◆ ◆ ◆
快晴や
「おはようございますー! ってダリアさん!? なんでいつもと違う服を着ているんですか!? 」
「おはよう、将大。だって今日は年に一度のお祭りよ? 浴衣を着て街を歩くのが楽しいんじゃない!?」
「お祭り……だと」
ダリアさんは紺色の浴衣を着ている。浴衣には赤色の花と白色の雲が写し出されており、彼女の艶やかなピンク髪と合っていて非常に可愛らしい。
「あら? ミミから聞いてなかったの? 今回のお祭りには大規模なくじ引き抽選会があるみたいよ。1等はなんと、イセパット新品が貰えるんだって!」

「な、なんだってーー!」
イセパットの新品が手に入る? こんな良い事あるのか? これでミミのイセパットの修理代を払わずとも最終試練に復帰できる! くじ引き抽選会という名前のことからも、頭数が必要なのだろう。だから俺はミミにバイト終わりにパン屋さんで待ち合わせをしたと言うわけか。

「イセパットがあればミミは本当の女神として働くことができるわ。私は彼女の幼い時からの付き合いだけど、あの子はずっと女神になることを夢見ていたの。だからアルバイトで修理代を稼ぐのも大切だけど、チャンスの確率は少しでも多い方が良いわ。まあ、抽選なんてまず当たるわけ無いけど」

抽選……そりゃあそうだ。俺も生前、お祭りでカードがもらえるくじ引きを何度もしたが全く当たらなかった。3000円使って、5000円使って、後には引けなくなりついには7000円という中学生には大金なお金をゴミカードにしてしまったのは良い思い出だ。

「天界のお祭り……すごく楽しみです」
「そう? それじゃあ今日もアルバイト頑張りなさいね。それじゃあ今回の異世界転生はー?   ダラダラダラダラ~」
(ダリアさんもお祭りが楽しみみたいだ。とても楽しそうだ)

「ダラダラダラダラ」
「ダラダラダラダラ」
2人でダラダラをしばらくやった後……

デデン!
「これよ!」
ダリアさんがイセパットに書かれている表示を見せてきた。
「あ、これ……は。いや、いやいや! やりたくない! やりたくないよ!」

ダリアさんはニコニコと不気味な笑みで笑う
「開け! 異世界の扉!」

う、うわあああ!!!
俺はこの先どうなってしまうのか……

◆  ◆  ◆
キョロキョロ
俺は周りを見渡した。ここは少し大きな会場になっておりスーツ姿の若い男女が50人ほど、軒並みを揃えて整列していた。俺もその列に参加をしていた。
しーん、とした静寂の状態で5分ほど待っていると1人の女性が会場の外からやってきて、俺たちの前に出てきて口を開いた。

「えーごほん。それでは皆さん。ご入獄おめでとうございます。私はこの無限地獄会社ENMAの新人研修担当のアデアラと申します! 就職試験を頑張って頂いた皆様と無事本日お会いできて嬉しいです。それでは、早速我が社の案内をしたいと思います」

「あ、地獄に転生……しちゃったよ」
(まさか、地獄に転生しちゃったよ。こんな世界……バイトでもやだよ)

「これからあなた、方新入社員50名……あれ?1人多い? 気のせいでしょうか? あなた方は7大地獄を経験してもらいます。事前に皆様へ安全バンドを手渡していますので、このバンドをしていれば、痛みや暑さなどは全て無効。もし、怪我をしても瞬時に治る優れものです」

(しかも無限地獄会社? 地獄って会社なの? ねえ!? 会社なの!?)

「みなさま、安全バンドだけは絶対に外そうとしないでください。死にますから。ははは!」

(しかも地獄の新入社員研修は地獄巡りなんて……しかも周りの人たち凄い目がキラキラしているよ……)

隣にいる男の人は「この地獄で俺はのし上がってやるんだ」やら、向こうの女の人は「結婚相手は針地獄を担当できる人が良いかなー」とか、地獄とは思えない程、目がキラキラとしている。

あれ? 俺の腕に安全バンドが……ついてない!? ポケットにもそれらしきものは見つからないぞ。
これはやばい、このままだと俺だけ7大地獄の本番だ。
「あのー……アデアラさん? すみませんが、安全バンドもらっていません……」

「え! 手配が足りずすみません。 う、うーん。別のものを用意しますね! あ! これこれ!」
そう言って俺に手渡してきたのは新入社員に手渡しているリストバンドではなく……。
「指輪ですか?」
「はい! 急な有り合わせなもので申し訳ありませんが、こちらは他の社員さん同じで痛みを無効化、暑さも無効で怪我をしても超回復します。でも他のリストバンドとは異なり効果が若干弱いので、触ったり安全通路から外に出るのは禁止です。体験禁止です。だから安心して下さい!」
アデレラさんはニコニコとした陽気な声で呟く。その指輪は女性用の物なのか俺の小指に何とか収まる。
「問題ありません」
(地獄の体験ツアーは……体験しない方がいいでしょう)

「さあ! それでは地獄体験! スタートです!」

ミッション
地獄で1日を過ごす(1泊2日)
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