TS魔法少女リュネール・エトワール! ~星月の魔法少女は気の赴くままに行動する~

月夜るな

文字の大きさ
60 / 137
第四章『星月の選択』

Act.15:妖精書庫②

しおりを挟む

妖精アルシーヴ書庫フェリーク……」
「ええ。さっき私が言った場所よ」

 俺は再び周りを見る。
 書庫とは思えない、自然豊かな空間だ。何というか、静かで……気持ちも落ち着くようなそんな空間。居心地も良く、ずっとここに居たいとも思う程だ。

「ここにはね、妖精世界のありとあらゆる歴史とかが残されているわ。最も……この空間に来れるのは、今は恐らく私だけでしょうね」
「お兄! 何話してるの! ねね、こっち来てよ!」
「ふふ。ちょっと息抜きしても良いわね。しながら説明するわ」
「ん。分かった」

 真白が物凄く楽しそうにしていたので、ラビも笑い俺も笑う。

「これ、本物?」
「触った感じだと本物そのものだったよ。冷たい」
「本当だ……」
「この空間にある全てのものは本物よ。ただ、全てに魔力が混ざっているけれどね」

 目の前にあった小川に手を入れてみると、かなり冷たかった。しかも、実際に濡れる事から本物だっていうのはもう分かるよな。

 更に近くにあった、キラキラ光っている木も触ってみるが……うん、特に何のあれもない普通な木だった。しかし、光っているのはどういう原理なんだ?

「言ったでしょ。全てのものが魔力を宿してるって」
「ん。この空間自体も魔力が強く感じられる……」

 伊達に魔法少女として、魔法を使ってない。魔力くらいは感じることは出来るぞ。真白はどうか分からないが……。

「うん、確かにここの感じ結構心が落ち着くねー!」

 どうやら、真白も俺と同じような事を感じているようだ。そこはやはり兄妹だからなのだろうか? まあ、それはさておき……。

「ここにあるもの全部、本であってる?」
「ええ。全て本よ。ありとあらゆる事が記述された本たち……他にも魔法とか、過去の天気だとか幅広い情報が詰まっているわ」

 すげーな、真面目に。
 天高くまでそびえ立つこの本棚もそうだが、それぞれに入っている物が全て妖精世界の事が書かれた本っていうのもな。全部が本物で偽物など無い。
 階段もあって、上にも行けるようになってる。まあ、行けなきゃ上にある本が見れないし当たり前だろうけど。

 一番気になるのは、その上に登ったとしてもそのラウンジ? っていうのか分からないが、そこにも木が生えているっていうのが何とも、現実離れしてるなと思いつつ。

 湧き水のように流れている物は、一番高くて天井のガラスから。え、それどこから水出てんの? これも全部魔力とか魔法の影響なのかね。

「それで、ここに連れてきた理由なんだけど、さっき全く無い訳じゃないって言ったじゃない? あれについてなのよ」
「それってつまり、お兄について何か少し分かったってこと?」
「一応ね。ただ関係があるかはわからないわ」
「それってどういう」

 ラビにしては今まで以上に自信が無さげだな、と思いつつ見る。この書庫の本に俺に起きたこの現象について何か見つかったって事か?
 でもそれは、関係があるかはわからない……でもまあ、何か手掛かりのようなものが見つかったならそれを知っておきたい。例え関係がなかったとしても。

「まず、この木を見て欲しいわ」
「木?」
「このキラキラしてる?」

 少しラビと歩くと、目の前にあるのはさっきも見たきらきらと光りを放つ神秘的な木だ。木の周りには丸い光? がいっぱいふわふわと浮いている。

「ええ」
「この木が何かあるの?」

 木は分かったが、この木が俺に起きた変化とどういう関わりがあるのだろうか? うーん……良く見てみるが、当然何もわからない。

「これは妖精世界に生えている、願いの木スエ・アルブル
願いの木スエ・アルブル……?」
「そうよ。妖精世界の特に魔力の多い場所にしか生えない。しかも、生えたとしても一本のみ。その近くに同じ木が生えることはないわ」

 願いの木スエ・アルブル……もう一度良く見てみる。無数の光の玉がふわりと、木の周りに浮かびあっち行ったりこっち行ったり、まるで意思を持っているかのように動いている。

「最も、ここにあるのはレプリカのようなものだけれどね」
「この木がお兄の変化に?」
「関係があるとは言い切れないけれどね」
「この木は一体何なの?」

 ただの木ではない、というのは確かだ。日本というか地球にこんな木はないだろうし……少なくとも俺は見たことないのだが……。

「それで、この願いの木……名前でわかると思うけど、この木の下で願い事をすると叶うと言われているわ」
「願い事が叶う……」
「ええ。実際叶った妖精も居るくらいね」

 願いの木……また何処かファンタジックな物が出てきたもんだ。でも待てよ……見たことないってさっき言ったのだが、よくよく見ると何かデジャヴと言うか、見た事あるような……?

「あれ?」
「真白?」

 願いの木をじっと見ていた真白が、突然そんな声を出す。俺とラビはそんな真白へと視線を向ける。

「どうしたのかしら?」
「うん。何かこの木、何処かで見たことあるような気がして……」
「え?」
「真白も? わたしも、何かあるような気がした」

 この木の形……いやまあ、形なんて木によって違うけども。そうではなく、昔見たこと有るような気がしてるんだ。いつだったかは流石に思い出せないが……。

 どうやら、真白も同じ感じっぽいんだ。俺と真白が見たことがある木……俺と真白が一緒に居た時だろうか?

 しかし、真白と一緒に居た時とか、今を除くと結構前だよな。
 あ、でも言うほどそんな昔で無いか。一番近くて一年前だ。真白は毎年、春休みとか、年末とか夏季休暇とかの休みの日とかに帰ってきてたしな。因みに今年は何か色々忙しかったみたいで春も夏も帰ってきてない。
 
 となると、俺と真白が一緒に居た時期というのは一番近くだと去年の年末だな。その時に見たことがある? いや待て。さっきも言った通り毎年帰ってきているから去年ではなく一昨年だったりの場合もある。

 まあ……俺と真白が別々の場所で見たっていう可能性もあるけどな。

 とにかく、見たこと無いはずなんだけど何でか、見たことあるような気もしている。自分でも何言ってるかわからないけど。

「でもこれは妖精世界の、しかも限られた条件下でしか生えない木よ? あなたたち二人が見たことあるって……」
「うん、そうなんだけどね。……何処だったかな」

 そっと木に触れてみる。
 刹那――俺の頭に一瞬だけフラッシュバックが起きる。その光景は今からかなり前、俺がまだ学生の頃の光景。目の前には真白が立っていて涙を流していた。

 いや、それだけではない。
 その近くに生えている一本の木……これは俺が真白に告白された、あの高台だ。一瞬だけだけど、それで俺ははっと思い出す。

「真白」
「お兄?」
「高台の一本木」
「!!」

 俺はそう言うと、真白もはっとする。

「どうしたのよ、二人揃って」
「ラビ。もしかすると、わたしたちの世界にも生えてるかも知れない」
「え? それってどういう」

 見たことがある。
 今思い出した。あの時、真白に告白されたあの高台に生えている一本木。確かにあの木は他と違って不思議な感じがしていたのを覚えてる。

 そしてあの木の言い伝え……結ばれる。幸せが続く……それは、告白したものたちの願いなのではないか? 誰だって好きな人と付き合えたら幸せになりたいだろう。
 俺は残念ながら恋愛をしたことがないが、少なくとも俺ももし付き合うならば幸せな方が良いに決まっている。

 その人々の願い……それが願いの木が叶えていたのかも知れない。だが、あの木と俺の変化と何が……? 俺がこの姿になりたいと願った?

 そんなはずはない……というか、あの時以来あの高台に行ったことが無い。今もあるかすら分かってない……でも、あそこにあったあの木が願いの木だとすると……。

「真白がわたしに告白をしたあの高台」
「うん。あの木に似ている気がする」
「まさか……妖精世界じゃないのに。分かったわ、とにかく行ってみましょ」
「ん」

 あの木が原因で俺がこうなったという事は、誰かがあそこで願った? でも誰が? 真白? 俺自身? 分からない。だが、もし本当に願いを叶える力があるなら……。
 まだその願いの木が原因かはわからないが、確かにそんな力があるなら……それの影響でなったということも考えられなくもない。

 いや、そもそもラビは何でこの木の事を? それは、後で聞くとしよう。本当に関係があるか分かってないってラビは言ってたしな。

 まずは……高台の一本木に行ってみるとするか。







しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

処理中です...