99 / 137
最終章『妖精世界』
Act.13:日本に来た理由
しおりを挟む原初の魔法少女。
16年前に起きた魔物の出現の際に、魔物を倒したと言われている地球最初の魔法少女たちである。その人数は七人と、今のLクラスの魔法少女と同じ人数である。
その事から、Lクラスの魔法少女はその原初の魔法少女たちではないのか? と考えられているが、世界魔法機関は何も言わないので謎のままである。
世界魔法機関。
簡単に言ってしまえば、魔法省の世界的組織と言えば良いかな? 魔法省という名前は、日本でのものであり他の国では同じような組織はあるけど、名前は国によって違う。
それらをまとめて管轄するのが世界魔法機関。と言っても、ただあるだけのような組織である。世界の情報共有とかそういうのを目的として、作られた組織である。
魔物の対応は、それぞれに任されているからね。
ラビの話に出てきたアリス・ワンダーというのは、そんな原初の魔法少女のうちの一人で、更に言うと地球初の魔法少女だ。原初の魔法少女の中でも最初に生まれた魔法少女である。
そして今の魔法少女という呼び名を広めたのはこのアリス・ワンダーっていうのがラビとの話で分かった。魔力や魔石については、それ自体を広めたのは原初の魔法少女だが、その大元はラビが教えたからだ。
一人目の魔法少女アリス・ワンダーは、不思議の国のアリスのような水色のワンピースに白いエプロンドレスを身に纏い、武器としては片手剣を使用し、懐中時計を使う事によって時間を止められたらしい。
時間を止めると言っても、無制限っていうのは無理だったようだが……それでも十分強い。攻撃を食らいそうになった時とかに時間を止めて移動して回避したり出来るし、止めて近付くなんて事も可能だろう。
データでは、片手剣と時間停止を組み合わせて戦っていたという。剣という武器と時間停止は、割と相性が良さそうだ。
「ラビはアリス・ワンダーに会いたい?」
「そうですね……会いたくないと言えば嘘になりますが……今何処で何をしてるか分かりませんね」
「ん……」
原初の魔法少女については、現在消息不明となってる。これは世界魔法機関が隠蔽しているのか、それとも本当にわからないのか。もしくは、原初の魔法少女たちに言わないで欲しいと言われてるのか……。
どっちにしろ、原初の魔法少女については謎である。もしかすると、死んでいるかもしれないし。
「と言っても、確かに会えないのはあれですが、今は司が居ますし」
「う、うん」
そんなキラキラした笑顔を見せないでくれ。一瞬ドキッとしたわ。
「そう言えば、司のように隕石を降らせる原初の魔法少女が居ましたね」
「え?」
「司ほど曖昧ではありませんが、似たような魔法を使う子が居ました」
「ん。それって、ノア・アストラル?」
「確かそうですね。星の魔法を使う子で、隕石降らしは勿論、司みたいに謎のビームとかも放ってました。かなり強力でしたね」
「ほへぇ……」
ノア・アストラル。
原初の魔法少女の一人で、星を操る魔法少女だ。確かにわたしに似ているかもしれない……同じように隕石を降らせたり、爆発を起こしたり、何なら星を召喚して自在に操ったりもしていたそうで。
要は星に関する魔法を使えていたと言われてる。と言ってもわたしのように回復魔法が使える訳ではなく、完全に攻撃特化の後衛魔法職みたいな感じだ。
詳しく載っている訳ではないので、データとして載ってるもの以外にも使える魔法はあったと思われる。代表的な魔法を記載しているだけだからね。
「そう言えば……話を変えるけど、妖精世界って酸素とかあるの?」
今更ながらあの時、聞いてなかった事を思い出す。魔力装甲があるから有害な物質とかからは守ってくれるのは分かったが、それ以前に人間は居られる環境なのか? という点になる。
「そう言えばそれについては、何も言ってませんでしたね。私たちなら問題ないと思いますが、人間は酸素というものがないと駄目でしたね」
「ん。人間と言うか、呼吸する動植物全てに言えるかな」
人間含む動物や、植物は酸素がかなり重要というか必須レベルである。それは魔法少女になっていても変わらないと思うが……曖昧なのは、そんな事誰も試したりしていないからだ。
酸素のない所に魔法少女を連れて行った場合どうなるのか? そんな人体実験のような事が出来るはずがないので、謎のままである。考え自体は、幾つかあるけども。
例えば魔力装甲は、魔法少女を守るための物だ。それなら酸素がない所に行った場合、その魔力が酸素を生み出すかもしれないとかね。魔法少女を守ってくれているなら、それも考えられるという事。
「先に行くのは私たちなので、大丈夫だと思いますよ。ただ確かに酸素とかそういうのがない場合は困りますね……」
妖精世界は空気の代わりに魔力があった。そういうのもあり、妖精にとっては魔力が酸素のようなものになってるらしい。周囲に魔力がなくても、自身の魔力で大丈夫みたいだ。
勿論、そんな自分自身の魔力がなくなれば危険になるが。
「ん」
もし魔力装甲が魔法少女を守るために酸素を生み出したりしてくれるなら良いのだが、あくまでそれは一つの諸説に過ぎない。そのまま行くのはちょっとリスクがある。
そこの所、ララとブラックリリーは考えているのだろうか。
「こういう時、あの子が居てくれると強いんですけどね」
「あの子?」
こういう場合に対処できる魔法少女なんて居ただろうか。
ブラックリリーは空間を操作できるけど、酸素とかそんなのに干渉出来るとは考えにくい。ホワイトリリーは白百合の花弁を自在に操っていたり、ビーム撃ったり出来るが、酸素とは全く関係ない。
ブルーサファイアに至っても、身を守るために宝石のサファイアをモチーフとしたバリアを張ったり、それらを操って飛ばしたりも出来るし、おなじみのビームのようなものも撃ったり出来るけどやっぱり酸素とかとは全く関係がない。
と言うか……魔法少女全体に言えるけど何で皆普通にビーム撃てるのか。いやそれ言ったらわたしも、人の事言えないんだけどね。
ビームが基本攻撃手段という事だろうか。ただ、ビームの色とか威力は人によって異なるみたいだけど。
でもラビがあの子と言ってるから、魔法省の魔法少女ではないだろう。そうなると考えられるのは……原初の魔法少女か。ラビと直接関わりのある魔法少女たちだしね。
「フィア・エレメンタル。聞いた事ありますよね」
「ん。原初の魔法少女……」
「はい、その通りです。彼女は元素というものを生み出したり操ったり出来ました。恐らく七人の中では最も汎用性の高い魔法少女だったかと思います」
確かにその子が居れば、酸素を生み出したり出来たかもしれない。しかし、フィア・エレメンタルか……元素というものを操れた魔法少女。ラビの言う通り、一番汎用性や応用性の高い魔法少女だろう。
「と言ってもアリスと同じで、何処で何をしているか分かりませんけどね」
「ん。そう言えば、どうしてラビはアリスの所から離れたの?」
そう一番の疑問はそれだ。
話によれば、ラビは16年前は原初の魔法少女のアリス・ワンダーと一緒に過ごしていた。何故、わざわざ離れて日本にやってきたのだろうか。原初の魔法少女は日本には居なかったはずなので、原初の魔法少女は間違いなく海外の子だ。
「そうですね……アリスに言われたというのもありますが、地球という世界を見ておきたいという私的理由もありました。そして行き先で魔法少女を生み出そうという目的もありました」
「ふむ」
「私は知っての通り、魔法も使えますし空も飛べるので移動には困りません。妖精という存在が目立つのも良くないので、姿を消したりとかしてましたね。それで、資質のあった子たちに問いかけて、任意で魔法少女になってもらってました」
「そうなんだ……あれ、ラビが干渉した魔法少女って事は……」
「他の魔法少女より強力な子がほとんどですね。そうしていく内に、私が干渉すると強い魔法少女になるっていうのが分かってきました。理解してからは、ちょっと控えめにしてました」
「なるほど」
ラビの色々と確認っていうのはそういう事だったか。
実際に魔法少女を生み出した実体験の元で、出した結論。それがラビが干渉すると周りとは異なり、強力な魔法少女が生まれやすいという事が分かった。
「私があなたに干渉したのは、既にその時に言った事が理由です」
「ん。魔力が多いっていうあれ?」
「はい、その通りです。まあ、まさかこうなるとは予測できませんでしたが……」
そう言ってわたしを見てくるラビ。
うん。自分も、こうなるとは予測できなかったよ。
「でも司が決めた事ですから」
「ん。迷惑かけた」
「いえ、大丈夫ですよ。それで、日本来た理由は流れですね」
「回っている内にここに来た、と」
「そうなります」
なるほどねえ。
疑問が解けてすっきりした。
ラビについてはもう大分理解できたと思うし、話を戻すが妖精世界の状況がわからないのが今だよね。滅んだっていうのは分かってるし、それを復活させようとしているのがブラックリリーとララっていうのも分かってる。
先に行くのはラビたちみたいだけど……うーん。
次会う時に、そこも含めて聞かないとね。後、ホワイトリリーとブルーサファイアと会う日の確認もしないと。
今度の土曜日の15時頃……集合場所はどうするかっていうのも考えなくてはいけない。まだ、やる事は多いな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる