完堕ち女子大生~愛と哀しみのナポリタン~

ミロ

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第三章 巧みな人

【17】

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  どれくらいまどろんでいただろうか。
(私、裸で寝てたの……)
 タオルケットで身体を隠しながら、ボーッとする頭で辺りを見回した。壁の時計は七時を回っている。シーツはいつの間にか真新しいものに替えられていた。
「お、起きたか」
 長門はキッチンでフライパンを振っていた。
 オリーブオイルでニンニクを炒める香りが漂ってくる。お腹が思わずグーッと鳴った。
「ははは、あれだけ何度もイったらお腹空いただろ、何にも食べてなかったからな」
 ようやく記憶が蘇ってきた。バイトの後、二階に連れ込まれ散々嬲られたのだった。
「風呂、沸いてるから入ってこいよ」
「え? あ、はい。あの、私の服は……」
「帰るときに返してやる。さあ、入ってこい、さっぱりするから」
「……はい」
 裸を見られるのが辛いのか、すみれは手で胸を下半身を隠し、小走りでバスルームに向かう。
 どこまでうぶなんだよ。長門は、ククク、と笑うと、茹で上がったブロッコリーをフライパンに放り込んだ。

 これ部屋着ね、と脱衣所に置かれていたのは、ボディコンのようなベビードールだけだった。それでも裸でいるよりマシだ。恐る恐る身に付けてみる。
 腰のくびれも、たるみのないバストも、ボディラインがくっきり浮かび上がった。背中は腰までざっくりカットされている。脇も大胆に開いていて、鏡を見ると前掛けのようだ。丈はちょっと動くだけで股間の中が見えてしまうウルトラミニ。淡いピンクとシースルーのストライプ柄の隙間からは、可憐な乳首と秘所を覆う繁みが透けて見えた。

「隠さないで、ちゃんと見せろよ」
 風呂から上がったすみれに、長門はキッチンから声をかける。
 すみれは胸と股間を隠していた両手を動かせないでいた。
「ほら、隠さない。手は両脇に下ろして」
 外には到底着ていけないシロモノだが、小顔で長身のすみれが着ると、長い脚が一層すらりと見えて、まるでモデルのようだった。
 長門は唸った。
「へえ。すみれが着ると、エロいだけじゃないな。なんか凜としてるよ。その場で一回りしてごらん」
 背中が大胆にカットされているため、後ろ姿はヒップの部分をかろうじて覆っているだけ。ストライプ柄の隙間からシミ一つないお尻の割れ目がのぞいていた。
「……あんまり見ないで下さい」
「男なら誰だってガン見しちゃうさ、そんなの着て目の前に立たれたら。それに、いやらしい恰好して興奮してるんだろ、すみれだって」

 言葉に反応するように、ジュワッと蜜が湧き出るのを感じた。
(こんなの着せられてるのに……)
 すみれの戸惑いをよそに、いつの間にか後ろに回っていた長門が、ざっくり開いた脇から手を差し込んできた。むんずっと胸を揉まれる。硬くなった乳首を嬲られ、半開きになった口に、長門の舌が侵入してきた。
「ンンン、ンン、ン、ンンン」
 長い口づけが終わると、すみれの頬はほんのりピンクに色づいていた。
「これからバイトはこの服でやってもらおうか」
「そんな……無理、です。こんなの着たら、もう学校に行けないないわ……」
 身を縮めて恥じらう姿に、長門は改めて惚れ直す思いだった。

 テーブルにはワインが待っていた。縦長のグラスに細かい泡がプツプツと立っている。
「シャンパン、ですか」
「ううん、スプマンテ」
「スプマンテ?」
「フランスのシャンパーニュ地方で作られたスパークリングワインだけがシャンパンって名乗れるんだよ。これはイタリアワイン。イタリアではスパークリングはスプマンテ、て言うんだ。ややこしいよな」
 ひと口含むと、炭酸の刺激とマスカットのような爽やかな甘みが濃厚なセックスに痺れ切った身体に沁み渡る。
「おいしい……」
 キッチンからその反応を見ていた長門は、嬉しそうに指をさした。
「お腹すいただろ。とりあえずそこにあるの、摘んでてくれ。もうすぐパスタができるから」
 さっきまでの意地悪な顔はすっかり影を潜めている。料理をしている姿は、いつものマスターだった。襲われたのは自分の錯覚だったのかもしれない。そんな気さえしてくる。

 テーブルには、パテが乗った薄切りのバゲットとブロッコリーの皿が並んでいる。またお腹がグーッと鳴った。自然とフォークに手が伸びる。ブロッコリーはすみれの大好物だ。
 ほんのり甘さを感じる。コリっとした歯ごたえに、ニンニクの香ばしさが相まって、ペロリといける。鶏レバーのペーストが乗ったパンと交互に口に運ぶと、いくらでも食べられそうな気がした。
「シンプルなのに……。これどうやって作るんですか」
 オリーブオイルで炒めた薄切りニンニクと鷹の爪に、塩茹でしたブロッコリーを絡ませるだけ。そうそう、茹で汁を少し入れるのがポイントかな。仕上げにイタリアンパセリを振りかけて、オリーブオイルを垂らせば出来上がり――。
「簡単だろ。でもこれが旨いんだな」
 長門はフライパンを振りながら、得意げに話す。
「すみれがブロッコリー好きだって言ってたから、一株ドーンと作っちゃったよ」
(私、そんなことまでマスターに話してたんだ……)

「はい、プッタネスカ」
 長門がパスタの皿を運んできた。
「プッタネスカ?」
「娼婦風、て意味らしい。だからこれは娼婦みたいなスパゲティ、てことになるな。ナポリの名物料理だ」
「……なんで娼婦なんですか」
「さあな。娼婦が忙しい客引きの合間に作ったとか、娼婦のように刺激的な味わいだとか由来は色々あるらしい。でもハッキリしたことは分からん」
 トマトソースをまとった麺にイタリアンパセリの緑が鮮やかだ。
「名前が名前だから、日本じゃ、あんまりメジャーじゃないだろ。けどまあ、ナポリにナポリタンはないから、これが本場のナポリタン、かな」

 口に運ぶと、塩味がまず広がる。その後にニンニクと唐辛子が利いたソースのかすかな酸味が押し寄せた。味付けはシンプル。なのに手が止まらなかった。
「アンチョビの塩っ気がパンチあるだろ。ブラックオリーブとケッパーは酸味と塩味が引き立つんだ。全部食べちゃっていいぞ。俺は作りながら適当に摘まんでたから。あ、ワインはそれ一杯だけだ。未成年なんだから」
 長門はスプマンテをグッと喉に流し込んだ。
 この後はどうやって責めてやるかな……。
 裸同然の姿でフォークを口に運ぶすみれは、そんな邪悪な企みを知る由もなかった。
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