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閑話:完璧な世界(正妃視点)
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「全て終わった。そう、やりきったわ。それなのに何故不安になるのかしら」
私は、完全にこの世界の役割を演じきったはずだった。この世界は『何でも欲しがる妹に全て奪われた私ですが竜族の血を引く王太子様の番だったので溺愛されています』という小説の世界であり、私はこの小説の主人公でヒロインであるソフィア・エキドナ・ベテルギウスであることは物心つく前から知っていた。
それは私が前世を覚えている転生者であるからだ。そしてこの作品は私が大好きで何度も何度も読んでいた作品なので誰よりも正確に再現できるはずだと思っていた。
この世界は妹ざまぁと呼ばれる、なぜか姉妹で親からの愛情に格差がありかつ美しくてちゃんとしているのに不遇な境遇にあるヒロインがハッピーエンドを迎えるタイプの物語だ。
私はこの世界において、不遇な目に遭うが最後には番の王太子と結ばれる幸福を手にする。だからどんなことがあってもそれを恐れる必要はない。何故なら神様が私の味方なのだから。
こういう転生ものだと悪役側が奮闘して未来を変えるものもあるが、私は完全なる被害者タイプのヒロインだ。だから特に何かする必要はない。ただ、小説を読んでいて屋根裏に閉じ込められたり、古着を着せられたり、粗末な食事を与えらえるような描写があったけれど、その部分はご免こうむりたくはある。
だから、私の今世の母である公爵夫人が亡くなるという部分を修正できないか試した。しかし、結論から言うとそれは不可能だった。
原作小説で彼女の母の死因は言及されていなかったが、その死因と思われる要素を取り除いても結果的に小説の物語通り私が12歳の時には亡くなった。
そして、小説の原作通り母が亡くなった1年後に父は再婚した。再婚と言っても元々愛人を囲っていた父はこのタイミングでその男爵令嬢だった女を後妻に迎えたのだ。そしてその義理の母が私とほとんど年の差のない娘、義理の妹を連れてやってきた。
この妹こそこの小説の悪役であり、タイトルにもある何でも欲しがる妹である。私はこの世界の強制力を目の当たりにした後だったので、妹が嫌がらせをしてくるに決まっていると考えてどうせざまぁするならとそのいじめを受けることにした。
しかし、妹は私をいじめはしなかった。むしろ私に対して当たり散らす両親を諫めて、自ら少しでも私が快適であるような環境づくりをしようとしているようだった。そこで、妹ももしや転生者ではないかと思った。
だとしたら、この妹ざまぁのシナリオを変えようと画策しているのではないかという疑念が私には湧いた。
(シナリオを変えられたら困るわ。折角この世界は私がヒロインでハッピーエンドを迎える世界なのだから)
破滅しかない妹の癖に私に同情していることも許せなかったし、両親に愛されているのに私には向かない愛を受けているキャラクターだからと言って妙に気を遣うところが特に嫌いだった。
それは私の前世、親と疎遠だったからだろう。母子家庭で育った私には、私を愛してくれる父親はいなかったし、母親は私に「お前を生んだことを後悔している」というような人だった。
だから、私は早くから働きに出て、親元を離れてその後もがむしゃらに働いて職場では責任者にもなっていた。けれど私の人生には愛がとことん欠けていた。その欠けている部分を補っていたのが恋愛小説だった。
特に好きだったのがざまぁ小説で、不幸な生い立ちや境遇から問題を解決し幸せを掴む話は、とてもスカっとして読んでいると胸が梳いた。
そして、ある時期から私は妹ざまぁや姉ざまぁに代表される姉妹格差の作品にハマるようになった。理由は単純にわかりやすいヘイトからのざまぁの鮮やかさが分かりやすくあまり考えなくても没入で来たからだった。
そんな中で、恋愛小説の大賞受賞したタイトルであるこの世界の原作『何でも欲しがる妹に全て奪われた私ですが竜族の血を引く王太子様の番だったので溺愛されています』は連載時にお気に入りにいれて毎日更新を楽しみにしていた作品だった。
思い入れのある作品のヒロイン、しかも強制力がものをいうこの世界で私は幸福の女神に愛されている。ならばこの世界の強制力を捻じ曲げ、私のほしいものを持っている妹を原作通り不幸に最後になるように運ばせるのは間違いではないはずだ。
だから私は、まず妹や両親が与えてくれてもドレスはみにつけずボロボロのお古の服を着ていた。そして、妹が嫌がらせをしている証拠作りのために手元にあるドレスやアクセサリーを妹の名義で売り払った。そうすることで断罪の際に妹に奪われて売られたことにするためだ。
実際は、それで売ったお金を使い割と自由に変装し町に出ては遊び歩いたりしていた。
それは前世の憂さ晴らしでもあり、男と肉体関係になったりはしなかったが、妹のフリをして遊び惚けて町の人々に妹の悪い印象を与えるようにしていった。
そんなこととはつゆ知らず、妹は私にお茶会やパーティーの誘いやドレスを準備するとまで話してくれたが全て断った。ここで参加してしまえば私は虐待など受けずに暮らしている普通の令嬢になってしまう。
それではこの物語の幸福を得ることができないだろうし、なにより妹をざまぁできない。
だから汚い服を着て断り続けた。そして、この頃街にお忍びできていた変装した王太子殿下とも親しくなった。これも確か原作通りのはずだ。
はじめてみた殿下は原作の挿絵通り。銀髪碧眼のイケメンでとても私好みだった。その人の番かと思うとなおさら妹にはシナリオ通りのキャラでいてもらう必要があった。
私は、完全にこの世界の役割を演じきったはずだった。この世界は『何でも欲しがる妹に全て奪われた私ですが竜族の血を引く王太子様の番だったので溺愛されています』という小説の世界であり、私はこの小説の主人公でヒロインであるソフィア・エキドナ・ベテルギウスであることは物心つく前から知っていた。
それは私が前世を覚えている転生者であるからだ。そしてこの作品は私が大好きで何度も何度も読んでいた作品なので誰よりも正確に再現できるはずだと思っていた。
この世界は妹ざまぁと呼ばれる、なぜか姉妹で親からの愛情に格差がありかつ美しくてちゃんとしているのに不遇な境遇にあるヒロインがハッピーエンドを迎えるタイプの物語だ。
私はこの世界において、不遇な目に遭うが最後には番の王太子と結ばれる幸福を手にする。だからどんなことがあってもそれを恐れる必要はない。何故なら神様が私の味方なのだから。
こういう転生ものだと悪役側が奮闘して未来を変えるものもあるが、私は完全なる被害者タイプのヒロインだ。だから特に何かする必要はない。ただ、小説を読んでいて屋根裏に閉じ込められたり、古着を着せられたり、粗末な食事を与えらえるような描写があったけれど、その部分はご免こうむりたくはある。
だから、私の今世の母である公爵夫人が亡くなるという部分を修正できないか試した。しかし、結論から言うとそれは不可能だった。
原作小説で彼女の母の死因は言及されていなかったが、その死因と思われる要素を取り除いても結果的に小説の物語通り私が12歳の時には亡くなった。
そして、小説の原作通り母が亡くなった1年後に父は再婚した。再婚と言っても元々愛人を囲っていた父はこのタイミングでその男爵令嬢だった女を後妻に迎えたのだ。そしてその義理の母が私とほとんど年の差のない娘、義理の妹を連れてやってきた。
この妹こそこの小説の悪役であり、タイトルにもある何でも欲しがる妹である。私はこの世界の強制力を目の当たりにした後だったので、妹が嫌がらせをしてくるに決まっていると考えてどうせざまぁするならとそのいじめを受けることにした。
しかし、妹は私をいじめはしなかった。むしろ私に対して当たり散らす両親を諫めて、自ら少しでも私が快適であるような環境づくりをしようとしているようだった。そこで、妹ももしや転生者ではないかと思った。
だとしたら、この妹ざまぁのシナリオを変えようと画策しているのではないかという疑念が私には湧いた。
(シナリオを変えられたら困るわ。折角この世界は私がヒロインでハッピーエンドを迎える世界なのだから)
破滅しかない妹の癖に私に同情していることも許せなかったし、両親に愛されているのに私には向かない愛を受けているキャラクターだからと言って妙に気を遣うところが特に嫌いだった。
それは私の前世、親と疎遠だったからだろう。母子家庭で育った私には、私を愛してくれる父親はいなかったし、母親は私に「お前を生んだことを後悔している」というような人だった。
だから、私は早くから働きに出て、親元を離れてその後もがむしゃらに働いて職場では責任者にもなっていた。けれど私の人生には愛がとことん欠けていた。その欠けている部分を補っていたのが恋愛小説だった。
特に好きだったのがざまぁ小説で、不幸な生い立ちや境遇から問題を解決し幸せを掴む話は、とてもスカっとして読んでいると胸が梳いた。
そして、ある時期から私は妹ざまぁや姉ざまぁに代表される姉妹格差の作品にハマるようになった。理由は単純にわかりやすいヘイトからのざまぁの鮮やかさが分かりやすくあまり考えなくても没入で来たからだった。
そんな中で、恋愛小説の大賞受賞したタイトルであるこの世界の原作『何でも欲しがる妹に全て奪われた私ですが竜族の血を引く王太子様の番だったので溺愛されています』は連載時にお気に入りにいれて毎日更新を楽しみにしていた作品だった。
思い入れのある作品のヒロイン、しかも強制力がものをいうこの世界で私は幸福の女神に愛されている。ならばこの世界の強制力を捻じ曲げ、私のほしいものを持っている妹を原作通り不幸に最後になるように運ばせるのは間違いではないはずだ。
だから私は、まず妹や両親が与えてくれてもドレスはみにつけずボロボロのお古の服を着ていた。そして、妹が嫌がらせをしている証拠作りのために手元にあるドレスやアクセサリーを妹の名義で売り払った。そうすることで断罪の際に妹に奪われて売られたことにするためだ。
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