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閑話:完璧な世界02(正妃視点)
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私は、前世からこの物語の妹が好きではなかった。もちろん、前世見た世界観、妹ざまぁ小説の妹を好きになるなんてありえないだろう。
けれどそれ以上に私は、今目の前で対峙している転生者入りの妹が嫌いだった。
彼女の目は、この作品を知らないのか、知っていてもそうなのか知らないが何故か希望を持ち続けている。この世界は強制力で出来ている。神の見えざる手は登場人物の望む望まないにかかわらず、原作通りに物語は進行していく。
それなのに、希望を失わないその瞳は古き良き時代の熱血ヒロインのようで、幼い頃には憧れたあるべきヒロインの形だが、それがきっと私は嫌いだったのだと思う。
(この世界は理不尽だ。願っても叶っても変えられない運命はある。今の私がこの世界の神に愛されているように、貴方は全く愛されていないのよ)
前世の私は、運にことごとく見放されていた。何をしてもどんな時も間が悪く、あと少し前ならとか後ならということが多かった。
例えば、就職した会社も私より前の世代は給料も同じ仕事で高かった。けれど私の時代にどん底まで下がった。そのせいで昼夜問わず働いていたのに、手柄は要領の良い同期の男性社員に持っていかれ、気付けば雑務と業務を両方やらされて毎日遅くまで残業していた。
それでも、20代は何も思わなかった、希望があったから。「いつかはきっと」みたいな夢とか希望が溢れていてやり続ければいつかは報われるなんて夢を信じていた。けれど30代で気づいた。全ては無意味だと。それでも、そこまで来てしまったせいで仕事を手放すことができなかった。
もう、仕事を辞めて新しい仕事を探すことが難しいほどの疲弊していたのだ。疲弊し、帰れば布団でねるだけの日々の中で、私はWEB小説にハマった。
理不尽な目にあっている冷静なヒロインが最後ざまぁして幸せになる小説が好きだった。変に熱いヒロインは苦手だった。それは20代の私が無駄にした時間を思い出す気がしたから。
男性と触れ合うことは仕事でしかなかったし、それもおじさんばかりで気付いたもはや恋愛をするのも及び腰になっていた。大学時代には恋人もいたけれどあの時はまだ、先が長いと若かったから簡単に別れた。
思い出せば思い出すほど、私は幸せを無駄な熱血さで無駄遣いしてしまったのだ。だからこそ、今目の前にいる熱血さで押せば何もかもドアを開けると思っているような妹が、転生者を嫌悪していた。
そうこしている間も、妹は無駄なあがきを続けていた。
原作で、建国記念日パーティーまで行けば、妹を断罪できる。実際は私をいじめていない彼女を貶めるのだから断罪ではなく冤罪のの間違いだけれど。
いつものように「自分とドレスを作り行こう」、「アクセサリー代も私とお姉さまに出た分を等分しよう」等といってやってきた妹を表向き欺くために私は一緒にドレスとアクセサリーを選びに行った。
ただし、その際に私は終始暗い顔を忘れなかった。全ては押し付けられている演技だと周りに印象付けるためだ。そして、すぐに私はそのドレスも妹名義で売り払った。
(こんなドレスなくてももうすぐ……)
原作通り、私の番がそれはそれは美しく高級なドレスと国宝のアクセサリーを送ってくれた。それを身に着けて断罪の舞台へ向かう時は、楽しみで仕方なかった。
(これで邪魔な家族も妹も排除されて私は番と幸せになれる)
そうして私は、その日、妹を番と一緒に断罪した。私の持ち物を勝手に売り払ったこと、いつもボロボロの服を着せられたこと、パーティー用のドレスとアクセサリーも奪われて売られたと証拠付きで訴えて聴衆は全て私に味方する。
そのカタストロフィは私にとっては喜劇だ。ただ、原作と違って妹は無罪を訴えて足掻いたりはしなかった。むしろ無実なのだから訴えることも予想したが神妙な顔で罪を受け入れるだけだった。
態度的には気に入らないしもやもやが残るが、やはり私はこの世界のいとし子だ。全ては私に有利な完璧な世界だ。
ひとつのメインイベントを終えた私は、なにも恐れていなかった。むしろ強制力に味方されているヒロインの私は全てのシナリオに愛されていたのだから。
けれど私は気付くべきだったのだ。『自分に悪いことをした妹』を断罪するのと、『なんの悪さもできない可哀そうな無垢な少年』を断罪するのでは読者の反応が全く違うということに……。
けれどそれ以上に私は、今目の前で対峙している転生者入りの妹が嫌いだった。
彼女の目は、この作品を知らないのか、知っていてもそうなのか知らないが何故か希望を持ち続けている。この世界は強制力で出来ている。神の見えざる手は登場人物の望む望まないにかかわらず、原作通りに物語は進行していく。
それなのに、希望を失わないその瞳は古き良き時代の熱血ヒロインのようで、幼い頃には憧れたあるべきヒロインの形だが、それがきっと私は嫌いだったのだと思う。
(この世界は理不尽だ。願っても叶っても変えられない運命はある。今の私がこの世界の神に愛されているように、貴方は全く愛されていないのよ)
前世の私は、運にことごとく見放されていた。何をしてもどんな時も間が悪く、あと少し前ならとか後ならということが多かった。
例えば、就職した会社も私より前の世代は給料も同じ仕事で高かった。けれど私の時代にどん底まで下がった。そのせいで昼夜問わず働いていたのに、手柄は要領の良い同期の男性社員に持っていかれ、気付けば雑務と業務を両方やらされて毎日遅くまで残業していた。
それでも、20代は何も思わなかった、希望があったから。「いつかはきっと」みたいな夢とか希望が溢れていてやり続ければいつかは報われるなんて夢を信じていた。けれど30代で気づいた。全ては無意味だと。それでも、そこまで来てしまったせいで仕事を手放すことができなかった。
もう、仕事を辞めて新しい仕事を探すことが難しいほどの疲弊していたのだ。疲弊し、帰れば布団でねるだけの日々の中で、私はWEB小説にハマった。
理不尽な目にあっている冷静なヒロインが最後ざまぁして幸せになる小説が好きだった。変に熱いヒロインは苦手だった。それは20代の私が無駄にした時間を思い出す気がしたから。
男性と触れ合うことは仕事でしかなかったし、それもおじさんばかりで気付いたもはや恋愛をするのも及び腰になっていた。大学時代には恋人もいたけれどあの時はまだ、先が長いと若かったから簡単に別れた。
思い出せば思い出すほど、私は幸せを無駄な熱血さで無駄遣いしてしまったのだ。だからこそ、今目の前にいる熱血さで押せば何もかもドアを開けると思っているような妹が、転生者を嫌悪していた。
そうこしている間も、妹は無駄なあがきを続けていた。
原作で、建国記念日パーティーまで行けば、妹を断罪できる。実際は私をいじめていない彼女を貶めるのだから断罪ではなく冤罪のの間違いだけれど。
いつものように「自分とドレスを作り行こう」、「アクセサリー代も私とお姉さまに出た分を等分しよう」等といってやってきた妹を表向き欺くために私は一緒にドレスとアクセサリーを選びに行った。
ただし、その際に私は終始暗い顔を忘れなかった。全ては押し付けられている演技だと周りに印象付けるためだ。そして、すぐに私はそのドレスも妹名義で売り払った。
(こんなドレスなくてももうすぐ……)
原作通り、私の番がそれはそれは美しく高級なドレスと国宝のアクセサリーを送ってくれた。それを身に着けて断罪の舞台へ向かう時は、楽しみで仕方なかった。
(これで邪魔な家族も妹も排除されて私は番と幸せになれる)
そうして私は、その日、妹を番と一緒に断罪した。私の持ち物を勝手に売り払ったこと、いつもボロボロの服を着せられたこと、パーティー用のドレスとアクセサリーも奪われて売られたと証拠付きで訴えて聴衆は全て私に味方する。
そのカタストロフィは私にとっては喜劇だ。ただ、原作と違って妹は無罪を訴えて足掻いたりはしなかった。むしろ無実なのだから訴えることも予想したが神妙な顔で罪を受け入れるだけだった。
態度的には気に入らないしもやもやが残るが、やはり私はこの世界のいとし子だ。全ては私に有利な完璧な世界だ。
ひとつのメインイベントを終えた私は、なにも恐れていなかった。むしろ強制力に味方されているヒロインの私は全てのシナリオに愛されていたのだから。
けれど私は気付くべきだったのだ。『自分に悪いことをした妹』を断罪するのと、『なんの悪さもできない可哀そうな無垢な少年』を断罪するのでは読者の反応が全く違うということに……。
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