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閑話:王宮で最近噂の怖い話(モブ視点)

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少しホラーっぽい描写があります。苦手な方はご注意下さい。
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「なぁ、知っているか??」

「何をだよ」

「お前、今日の夜の見回りだろう、出るらしいぜ」

そう言って同僚がニヤリと性格の悪い笑みを浮かべた。俺はこの王宮に護衛騎士として勤めている新人のひとりだ。そして、今話しているのも同じく新人のひとりだ。

俺はこいつがあまり好きではない。何故ならこいつは度の過ぎた悪戯をするタイプでそれが原因で俺も巻き込まれたり、連帯責任で怒られたるしてきたからだ。

(これは、俺をからかうために怪談の類でもするつもりだな)

王宮では、今、幽霊が出るという話で持ちきりだ。そして、その幽霊の影響か侍女やメイドは勿論最近では庭師や、料理番までもが城で働くことを辞めたいと言い出しているそうだ。

流石に騎士団や兵士が辞めるという話は、ほとんど聞いていないが何か相当恐ろしい目に遭うらしい。

「やめろ。そういう話を聞いたら幽霊以外まで幽霊に見えるだろう」

王宮はとても古い石造りの建物だ。長い歴史を持つ我が国に相応しい厳かな佇まいが個人的に好きだが、だからこそ幽霊が出ると言われたら、職場でもあるので勘弁してほしい。

「ははは、騎士なのにビビるなよ。ほら、あの王宮の端にあるルキオ殿下の部屋だった物置、あそこに出るんだそうだぜ、何か探しているローブを着ている子供の幽霊」

そう言われて真っ先に浮かんだのは、崖に生贄として捧げられたルキオ殿下だった。竜の遅れ子という成長が著しく遅かった殿下は、19歳であったのに見た目は10歳位の小さな少年にしか見えなかった。

忠誠を誓う王族がしたことだ。それに竜の遅れ子は生贄にされるのはこの国が始まってからの決まりのようなものだ。だから、何か我々が悪いことをしたわけではない。

実際、今までも竜の遅れ子で生まれた王族の大半は生贄にされたと、陛下も正妃様もおっしゃっていた。それでも幽霊が出たことなどない。ならば今回だけルキオ殿下が化けてでるのはおかしい。

「その程度なら問題ない」

「まぁ。それだけ聞いたら怖くないよな。その幽霊は、ルキオ殿下らしいんだけど、こちらが聞いていて切なくなるような声で「ない、ない」って何かを探してるんだそうでさ。小さな子供がそんなことしていると可哀そうになって思わず声をかけると……ぐちゃぐちゃのつぶれた顔をしていて「僕の目はどこ??鼻はどこ??ない、ない、あった……」って見たヤツから奪うらし……」

「やめろ!!」

なんて話をしてくれるんだ。俺は正直ホラーのような話は嫌いだ。幽霊とか物理で攻撃できないものが苦手なのだ。しかもルキオ殿下の幽霊など、出てたまるか。

しかし、俺の態度を意にも返さず、同僚はケタケタと笑う。

「ははは、まぁそんなの所詮噂だ。だから安心して見回りして来いよ」

嫌なヤツだ。次にあいつが見回りする時は何か仕返しを考えておこう。そんなことを考えながら俺は王宮の夜の見回りをする。

「よし、異常なし」

ほぼすべて周り終わって、最後に例の王宮の端の塔へ行く。

重い扉を開くと、中は薄暗い。わずかな蝋燭の明かりだけに照らされたそこは夜なので殆ど光源がない薄暗い場所だった。

一応魔術師達もいるのだが、流石に夜遅いため、彼等も寝ているだろう。

しかし、その閉ざされている各扉の中から、何やら塔からはざわざわ囁くような声がしている。しかし、今のところ私室のあるところだったので中はみない。決して怯えているからではないと言っておく。

そうして、見回るべき場所は見てついに例の部屋まで来た。

扉を開くが、そこはただ、薄暗く汚い物置があるだけだった。

(あいつめ、何もやっぱりいないじゃないか)

そう思うと酷く腹立たしい反面安心して、俺は部屋をひと回り見て出ようとした時……。

「えっ??」

思わず目を見張る。そこには見たことのない、この世のものとは思えないような美しい人が立っていた。性別は中性的に見えるのでどちらでも通るし、何よりあまりにも美しくて思わずこの薄汚い場所に不釣り合いだった。

しかし、そんな美しい人でも不審者だ。

「お前は誰だ!!」

「一介の騎士に「お前」と呼ばれる日がくるなんてな。いや、もっと酷い扱いだったか。王族に忠誠を誓う者が呆れるばかりだ」

澄んだ鈴のような声。ずっと聞いていたくなるようだが、だめだ、今はこの人物を捕縛しなければ。そう思ったがその瞳を見た瞬間、意識がまるで操られていくように遠くなる、そして……。

頭に中に響いた声。最初は美しい歌のように聞こえたのに。最後は異形がザリザリとしゃべる機械音のような異質さを感じて、そして『その奇怪なザリザリした感覚』だけが俺に残りその日からずっと、言葉にならない言葉にしてはいけない異形に魅入られたような恐怖心が続くようになってしまった。

そして、ついに……。

「お前、見回りした夜からおかしいけど何か見たのか??まさか幽霊とか……」

「違う、だめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだ、アレは神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だ神だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

そう叫ぶと、城から駆け出していた。それがいかに愚かな行動が分かっていた。騎士としてあるまじき行動だ。しかし、俺はもう城に居たくなかった。そのまま、俺は騎士をやめた。
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