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35:断罪に手を貸した騎士団長02(ざまぁ有、モブ視点)

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※残酷な表現がありますので苦手な方はご注意ください。


陛下から話しを聞いてから数日が経ったとき、見たことのない男が王城を訪れた。男は褐色の肌に黒髪をした美しい男で異国から来た魔術師でこの城に掛かった呪いを解析しにきたという。

王城に居た魔術師たちはこの原因不明の事象に慄き、いなくなってしまっていた。そのため、きっと陛下が異国に依頼したのかもしれない。

王城に迎え入れると男はゆっくり歩を進めるように、王城内部を歩いて回った。そして、最後に王の玉座までくると難しい顔をしながら、それを取り出した。

見た目は白い粉のような、それは薬だと男は説明した。

「呪いは貴方達に深く根付いております。治すには体の中からの浄化が必要となります。この薬を1日3回欠かさずお飲みになれば、1ヶ月ほどで呪いは解けます」

嘘臭いと思い、薬は調査したが、特に異常はないし毒でもないらしい。正直胡散臭いとは思ったが、呪いに怯えている陛下やその他の人間にとって少しでも支えになればとそれを配布した。

しかし、その薬を飲んでからおかしなことが起こる様になった。

毎晩、夢を見るのだ。夢の中では私はまだ若い。そう、建国パーティーであの悪女の行いを断罪をした日だ。途中まであの女の悪行をさばいていったところで、あの時は、あの悪女の罪が暴かれて女は正妃ではなく側妃として変えられることになったはずだ。それなのに夢の中では、途中であの魔術師そっくりの男が現れる。

「貴方達がいう、義姉を虐げていたという罪、すべてでっちあげですよ」

と笑う。そんなはずはないので、こちらが証拠を出した。

例えば、王妃様のものを売りさばいた証拠になる書類を出した。しかし、魔術師は笑いながら。

「その筆跡本当に彼女の物ですか??」

といった。そして調べるとその筆跡は悪女ではなく正妃様のものだと判明する。つまり自作自演だと。

その他にも、使用人に嫌がらせを命じた話も、ひとりの年老いた使用人が自身の命をかけて悪女はむしろ王妃様を庇っていたし、そのような行いが起きないように両親も説き伏せていた。といった。

それだけではない、婚約についても王妃様を指名したのに辞退に追い込んだ話も、使用人や、学園の友人たちがこぞって彼女は姉の婚約者を奪うことを望まなかったが、姉が辞退して仕方なく受けざる得なかったと証言した。

全てが全て、王妃様が嘘をついたというのだ。

「嘘だ!!高潔な王妃様がそのようなことするはずがない、悪女が!!」

激昂して、悪女に切りかかろうとした時、魔術師の男がそれを庇った。そのせいで剣が男の胸に刺さった。

(まずい、無関係な人間を殺してしまった……)

しかし、剣が胸に刺さった男は死ぬことはなかった。代わりに血ではなく黒い何かがあふれ出て来た。それだけではない、先ほどまで会った美しい顔が割れて中から得体のしれない何かが出てきた。

あまりのことに絶句しているうちに、男はいつの間にか貌のない化け物に姿を変える。逃げたいが金縛りに掛かったようになり動くことができない。

そんな私の耳に、とても恐ろしい笑い声が聞こえた。まるで全てをあざ笑うような声だった。

「貴方のしたことは、全て過ちでした。貴方は悪女を倒し、美しい姫君を主君と結ばせたなんておとぎ話を信じていますが、実際は、冤罪の女性を過労死させて、その子を生贄に捧げた。ふふふ、弱い者を守るはずの騎士が聞いてあきれますね」

「うるさい!!こんなのは夢だ!!ただの……」

言葉を紡ぎかけて、絶句した。何故なら貌のない化け物がこちらへ近づいてきたからだ。

「くるな、こっちへくるな!!」

「はははっははははははあはははははははは。残念ですね。貴方はね、愚かな罪を償う必要があるのです。そうです、わかりますか??貴方はね、僕の大切な番をこの世界で冤罪を着せて殺したんだ。だから、苦しんで苦しんでしんでください」

そう言って、触手が体を絡めとる。必死に抵抗するがそれは離れることはなく、むしろ強い力で吸い付いて、次第に体の骨が折れて、更には内臓を潰した。

あまりのことに激痛に息もできずにいると、何故か体が一度回復した。いまのうちと逃げようとしたら、再び骨を折られて内臓がつぶれた。それを何度も何度も繰り返す。

「いやだ……いたぃ!!殺してくれ、殺して!!」

「ははっははははははははははははははっはあはははははははは無理無理無理はははははははははは!!!貴方は、私の愛おしい人を傷つけた、ゆるさないゆるさないゆるさないははっはっははあははははは」


耳障りな笑い声を立てながら、笑い続ける。そうして、何度も殺されて憔悴した状態で目を覚ます。それが一週間ほど続き、もしかしたら呪いを解く名目で逆に呪われたことを疑い、例の魔術師を尋問するために捉えた。

そうして拷問しようと牢にぶら下げた男を見る。俯いた男の顔には何の表情もない。

「お前は我々に呪いをかけたのか!!」

「まさか、あれは呪いを解く薬です」

「ふざけるな、あの薬を飲んでから酷い悪夢にうなされている」

その言葉に、魔術師は笑う。まるであの夢の時のようにけたたましく。

「何がおかしい!!」

「そりゃあ、当たり前ですよ。呪いを解くには、呪った人物が浮かばれないといけません。あの薬はね、その呪った人物を慰めるためのものですから。悪夢を見るのは贖罪のためです」

「ふざけるな!!」

激昂した私は、男を思わず刺した。致命傷にならない場所のはずだ、それなのに男はまるで心臓でも刺されたように動かなくなる。

「な、なぜ……」

その瞬間、夢のようにその傷口から黒いものがあふれた。そして、男の体がミシミシ音を立てながら割れて中から貌のない化け物が現れた。

「う、うそだ、これは幻影……」


「反省できない悪い子には現実でもお仕置きがいりますね」


そう言ってけたたましく笑った化け物。……そして。

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「騎士団長様までおかしくなられたらしい」

「そうなんですか??」

「ええ、今精神病院にいますが、ずっと「貌のない男が殺しに来る、痛い助けて」って言い続けて暴れるそうだよ。あまりに暴れるから鎮静剤を打たれていつも夢うつつになっているそうだよ」

男は永遠に続く悪夢の中で、今も無間地獄のような苦しみを受けながらもがき続けている。
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