最恐変態ヤンデレ竜王様は番の生贄ひよこ王子が可愛くって仕方ないので世界を滅ぼす約束をした

ひよこ麺

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35:断罪に手を貸した騎士団長01(ざまぁ有、モブ視点)

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このベテルギウス王国の全ての騎士を統括している私、マルク・ロイガーは侯爵家の息子に生まれ、現国王陛下に忠誠を誓っている。

国王陛下とは、学生時代からの友人であり、現王妃様が虐げられているところを救うお手伝いもさせて頂いた。世紀の悪女である、エウラリアは義理の姉であった王妃様に嫌がらせをしていたというから本当に最悪な女だ。

しかし、神はその女に天罰を与えた。王妃様の教育がすむまでの公務ならびに国務を死ぬまでひとりで行い誰からも顧みられることなく死んだのだから。元々王妃様に色々なことを押し付けていた女にとって一番の制裁になっただろう。

そして、その女がたった一度の義務の初夜で身ごもり産んだ竜の遅れ子も、私は嫌いだった。その青い瞳が薄気味悪く、体は見た目も体も幼児のようなのにその澄んだ蒼い瞳だけはまるで、老齢の賢者のようにすべて見透かしているようで気に入らなかった。

国王陛下はアレを無視されて特に気にされていなかった。だけど、アレは幸せに生きるべきではない。女神のような王妃様を虐げた側妃の子。例え髪や瞳の色が王族の色でも、自身が王族などと思わせてはいけない。

だから、王子である以上は習う剣術の際に嫌がらせをした。正直まだ小さな幼子のようなアレに剣など握らせるのは危険だ。なんせ、体が小さすぎてまともに振るえる剣などないのだから。

せいぜい細い棒きれ程度しか振るえない。だから、稽古をつける騎士たちは木刀を、アレには木の棒を持たせた。当然勝ち目などなく、したたか打ち据えられ体中に痣ができていた。

あの悪女がまるで、普通の親のように抗議をしたがそんなものは関係ない。ひたすらに痛めつけて傷つけてやった。あれだけ痣だらけなら、寝る時も痛んだだろうが、知ったことではない。

そうして、あの女も死に、保護するものが居なくなった時、率先して嫌がらせをしていた。アレの面倒を見たいと同情したものは陛下に進言して全てクビにしてもらった。

アレは生きている価値などない。野垂れ死にすればいい。そう考えていたのに、何故かよりにもよってレイン殿下がアレを保護してしまった。虐待の事実が明るみになれば、流石に問題になるので手を出すことができなくなってしまった。

(いくら兄とはいえ、あの悪女の息子を保護するなんて……殿下を諭さねばならない)

しかし、何を言っても殿下は「兄上は優しい御方だ。兄上の母上が例え悪女でも関係ない」等といってよりにもよってその私室に保護してしまった。

しかし、そんなアレを殺す機会がやってきた。国で冷害が起きて食べ物の価格が高騰したのだ。これはアレを生贄にするべきだと進言した。

ただ、陛下は本当にアレに興味がなく生贄にするというつもりは、最初はなかった。しかし、王妃様が調べたところアレが王家の種をまいているという話が社交界で出回っているということがわかり、いくら幼児みたいな見た目でもやることができるならば、弊害しかないと考えられて生贄にされることが決まった。

アレが生贄として殺された時は、本当にすっきりした。けれど、あの蒼い目が崖に落ちる最後の瞬間に確かにこちらを見た気がした、その目の呪うような色だけが脳裏にこびりついた。

アレが生贄になったのだから、豊穣が約束されるはずが、むしろ害は酷くなるばかりだった。そんなおり、王城で異変が起きた。

王城に務める使用人が『化け物』を見た、怖いとわけのわからないことを言って次々に辞めて行った。中には騎士やそれに連なるものもいて正直頭を抱えた。

「どうして??」

そんな時、ひとりの衛兵が仕事を辞めたいとやってきた。理由を聞いたがそれを後悔することになった。

「これは、ルキオ殿下の祟りです。だって、まるであの化け物は、ルキオ殿下が大人になったような姿なんですよ。でもね、ルキオ殿下は死んだから大きくなんかならない。けれど、ああ、ああの顔があああああああああああああああごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

そうひたすらに謝って彼は壁に頭を打ち付けた。何度も何度も。真っ赤に染まった壁、そして男はその場に倒れて死んでいた。憤死だった。

その後も、『化け物』の話は出続けて、ついにはほとんどの家臣が王城から立ち去ってしまった。

「何故、こんなことに??」

「マルク、お前に話がある」

青ざめた顔の陛下が、私を呼び出した。陛下は私に信じがたいことを告げた。

「最近毎夜、夢の中に祖先の竜神様が現れるんだ。そして、家族をないがしろにした報いを受けるとなんども繰り返す。私は間違ったのだろうか??番愛しさに、望まれない子を作り殺した。望まれない子に罪はなかったのに……」

「陛下、アレ、もといあの悪女の息子であるだけで存在が罪だったのです。だから陛下が気にすることではありません」

「……マルク、お前確か結婚していたな」

「はい、とても愛おしい妻です。その間には今年で5歳になる子供がおりますが……」

そう答えた、私に陛下は寂し気に笑って言った。

「もしその妻や子が誰かに折檻をされてボロボロになっていたら、お前はどうする??」

「そんなのは、そいつを捕まえて同じ目かそれ以上の目に遭わせてやります」

当たり前だと答えた私を陛下が見ている目は何とも言い表せない色をしていた。

「ああ。お前はそれをルキオにしていただろう??けれど私はルキオを愛していないしモノよりどうでも良いと放置した。この王城でルキオを庇い続けたのはレインだけだ。それでも冤罪を着せられて生贄として国のための名目で死んだ。しかし、ルキオは竜の遅れ子でとても恐ろしい竜神様の番だったそうだ。この意味がわかるな」

(陛下は乱心されている)

竜の遅れ子の話はそれを憐れんだものの単なる創作に過ぎない。だから私はこの時なにひとつ響いていなかった。けれど、私は自身が愚かであったことをすぐに知ることになった。
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