8 / 126
07.生殺与奪の権とか服着脱の権を叔父様に握られているそうです
しおりを挟む
「おはようございます、ルーク様」
「おはよう、クリス。後、僕をルーク様って呼ばないでいいよ。だって、僕はもう平民だからね」
この屋敷には沢山の使用人やら護衛やらがいるが、僕の世話を任されているのはこのクリスという少し年上くらいの青年だ。見た目は茶色の髪に茶色の瞳をした人が良さそうな雰囲気で彼のことは嫌いではない。
「いえいえ、公爵様がルーク様を大切にされている以上、たとえ現在の身分が平民でも敬意を払わないといけませんから」
「ありがとう。そういえば今日は叔父様は留守?」
「そうですね。公爵様は今日は王宮へご用事があるとのことでした」
「そっか……」
王宮と聞くと僕の中のルークとしての記憶が疼いた。ついこの間まで一応住んでいた場所。そして、もう二度と戻れない場所でもある。基本的にわがまま放題だったルークにとっては良い思い出、楽しい思い出の宝庫だけれど、今ならわかる。そこで多くの人を傷つけて、嫌われて、そして決定的な悪いことをしたからどんなに帰りたいと願ってももう二度と帰ることはできない。
特に現在王太子となった腹違いの兄上であるレイズ・アークトゥルス・プロキオン殿下には相当良くないことをした。なので万が一戻るようなことになればきっと僕の命の灯は消えるかもしれない。
(まぁレイズ殿下は、僕に散々嫌がらせされたのに、最後まで僕の廃嫡に反対したりしてくださった人格者なんだけどね)
遠い目をしていた自分に、クリスは心配そうな顔をする。センチメンタルにでも見えたのかもしれない。
「あ、あの元気出してください。そうだ、ルーク様のお好きなお茶を淹れて参りますね」
そう言ってクリスは部屋から出た。そういえば、大体は叔父様とふたりきりで部屋にいるばかりでこの屋敷の中のことを全然知らないなと思った僕は、これ幸いと部屋から出てみた。
部屋の外の通路は明るく外からの明るい陽光が差していた。いつもいる部屋は監禁部屋らしく照明はあるが窓がなかったので久々の日差しに目がツンと痛んだ。僕が中二病なら、「左目が疼く」とか言いたくなるような気がしけれど、流石にいきなりここで蹲るとかは頭がおかしすぎるのでやめた。
ぼんやり窓の外を眺めていると、そこに見覚えのある人物がいるのが分かった。元護衛騎士だったジャックだ。ジャックは長身で、黒髪の短髪に切れ長の青い瞳で精悍な顔立ちの男で寡黙だがいつも僕を守っていてくれた人だ。
(そういえば昨日叔父様が、護衛騎士が追って来たって言ってたけどジャックだったのか)
でもジャックって護衛騎士であると同時に辺境伯の子息で嫡男ではなかっただろうか。そんなことを考えていた時、僕の視線に気づいたようで、ジャックがこちらをとても驚いた顔で見つめている。
(久々だから驚いているのかな……それにしてはなんか顔が赤いよね……)
そう思ってニコニコと手を振るが真っ赤な顔で俯いてしまう。そういえば叔父様がジャックが僕を好きみたいなこといっていたけど、そのせいかなとか思いかけてふっと、今の自分の状態に気付いた。
あまりにクリスが何も言わないからすっかり忘れていたが、僕は現在生まれたままの姿である。つまり全裸である。
「ぎゃああああああああああああ」
恥ずかしい。穴があったら入りたい。そしてそのまま誰も知らない世界へトゥギャザーしたい……。
「どうかされました!!ってだめですよルーク様お部屋から出ては」
急いで戻ってきたクリスが困ったような顔をする。いやいや、待て待て、それより突っ込むべきポイントがあるだろう。あ、でもこの格好ですと尻などに物理的になにかを突っ込めますがそれはやめてほしい。
「いや、あのね、クリス、もっと問題点あるよね?」
「ん?ああ、安心してください。僕はルーク様には誘惑されません。だから公爵様に選ばれました」
選ばれたのはクリスでした。違う、そうじゃない。
「違う。誘惑とかしないから。ねぇ、クリス。僕の服は……」
「駄目です。服は公爵様が召させるとのことですから僕は着せられません。それより、ほらお茶とお菓子ですよ。ゆっくり楽しまれてはどうですか?」
「うーん。それもそうなんだけど、叔父様がいないなら僕は屋敷を見てまわりたかったんだけど」
「えっ、全裸でですか??それはオススメしません。それにあまりその姿を人にさらされると良くないことも起きますし……」
「全裸で厄災をもたらすものルーク」中二っぽくいってみたけど1ミリも格好良くない。そして、服はどうしてもきせてくれないらしい。
「いやいや、服さぇ着れれば解決するよね?後、僕の全裸に呪いでもかかってるの?」
「ああ、えっとですね。服は先ほど話した通りルーク様に着せて良いのは公爵様のみなので僕らはなにもできません。後、呪いとかじゃなく僕は役目上許されますが、それ以外でルーク様の裸を見た場合、最悪、公爵様の怒りを買い、目をつぶされるとかの物理的な厄災がその者を襲いますのである意味呪いより質が悪いですね」
それだけで目をつぶさるとか恐ろしすぎる。まさに文字通り「全裸で厄災をもたらすものルーク」じゃん。しかしもう1回言っても全く恰好良くないな。
「こわっ。あ、じゃあせめて自分で着るから服をくれない?」
「それもだめですよ。ルーク様は先ほど平民になられたと言われてましたが、正確には奴隷のが近いのです。あの断罪劇の罰で辺境兵士の兵役を命じられたかと思いますが、それって実質奴隷兵士になれということなんです。けれどまぁ表向きそう言われてますが、実際は全ての騎士の統括者である公爵様の配下となりますので生殺与奪の権は公爵様が握られております。その公爵様がルーク様自身にもご自身で服を着ていいという権利を与えていませんので……」
僕は叔父様に生殺与奪の権を握られてたんだ……。でもその中に服を着て良いか否かの権利も含まれてるのが怖い。生殺与奪どころか服着脱の権までにぎられてるのってどうなのか。どう考えてても埒が明かないので罪なき子羊たちが目をつぶされないように元の部屋に帰ることにした。
「おはよう、クリス。後、僕をルーク様って呼ばないでいいよ。だって、僕はもう平民だからね」
この屋敷には沢山の使用人やら護衛やらがいるが、僕の世話を任されているのはこのクリスという少し年上くらいの青年だ。見た目は茶色の髪に茶色の瞳をした人が良さそうな雰囲気で彼のことは嫌いではない。
「いえいえ、公爵様がルーク様を大切にされている以上、たとえ現在の身分が平民でも敬意を払わないといけませんから」
「ありがとう。そういえば今日は叔父様は留守?」
「そうですね。公爵様は今日は王宮へご用事があるとのことでした」
「そっか……」
王宮と聞くと僕の中のルークとしての記憶が疼いた。ついこの間まで一応住んでいた場所。そして、もう二度と戻れない場所でもある。基本的にわがまま放題だったルークにとっては良い思い出、楽しい思い出の宝庫だけれど、今ならわかる。そこで多くの人を傷つけて、嫌われて、そして決定的な悪いことをしたからどんなに帰りたいと願ってももう二度と帰ることはできない。
特に現在王太子となった腹違いの兄上であるレイズ・アークトゥルス・プロキオン殿下には相当良くないことをした。なので万が一戻るようなことになればきっと僕の命の灯は消えるかもしれない。
(まぁレイズ殿下は、僕に散々嫌がらせされたのに、最後まで僕の廃嫡に反対したりしてくださった人格者なんだけどね)
遠い目をしていた自分に、クリスは心配そうな顔をする。センチメンタルにでも見えたのかもしれない。
「あ、あの元気出してください。そうだ、ルーク様のお好きなお茶を淹れて参りますね」
そう言ってクリスは部屋から出た。そういえば、大体は叔父様とふたりきりで部屋にいるばかりでこの屋敷の中のことを全然知らないなと思った僕は、これ幸いと部屋から出てみた。
部屋の外の通路は明るく外からの明るい陽光が差していた。いつもいる部屋は監禁部屋らしく照明はあるが窓がなかったので久々の日差しに目がツンと痛んだ。僕が中二病なら、「左目が疼く」とか言いたくなるような気がしけれど、流石にいきなりここで蹲るとかは頭がおかしすぎるのでやめた。
ぼんやり窓の外を眺めていると、そこに見覚えのある人物がいるのが分かった。元護衛騎士だったジャックだ。ジャックは長身で、黒髪の短髪に切れ長の青い瞳で精悍な顔立ちの男で寡黙だがいつも僕を守っていてくれた人だ。
(そういえば昨日叔父様が、護衛騎士が追って来たって言ってたけどジャックだったのか)
でもジャックって護衛騎士であると同時に辺境伯の子息で嫡男ではなかっただろうか。そんなことを考えていた時、僕の視線に気づいたようで、ジャックがこちらをとても驚いた顔で見つめている。
(久々だから驚いているのかな……それにしてはなんか顔が赤いよね……)
そう思ってニコニコと手を振るが真っ赤な顔で俯いてしまう。そういえば叔父様がジャックが僕を好きみたいなこといっていたけど、そのせいかなとか思いかけてふっと、今の自分の状態に気付いた。
あまりにクリスが何も言わないからすっかり忘れていたが、僕は現在生まれたままの姿である。つまり全裸である。
「ぎゃああああああああああああ」
恥ずかしい。穴があったら入りたい。そしてそのまま誰も知らない世界へトゥギャザーしたい……。
「どうかされました!!ってだめですよルーク様お部屋から出ては」
急いで戻ってきたクリスが困ったような顔をする。いやいや、待て待て、それより突っ込むべきポイントがあるだろう。あ、でもこの格好ですと尻などに物理的になにかを突っ込めますがそれはやめてほしい。
「いや、あのね、クリス、もっと問題点あるよね?」
「ん?ああ、安心してください。僕はルーク様には誘惑されません。だから公爵様に選ばれました」
選ばれたのはクリスでした。違う、そうじゃない。
「違う。誘惑とかしないから。ねぇ、クリス。僕の服は……」
「駄目です。服は公爵様が召させるとのことですから僕は着せられません。それより、ほらお茶とお菓子ですよ。ゆっくり楽しまれてはどうですか?」
「うーん。それもそうなんだけど、叔父様がいないなら僕は屋敷を見てまわりたかったんだけど」
「えっ、全裸でですか??それはオススメしません。それにあまりその姿を人にさらされると良くないことも起きますし……」
「全裸で厄災をもたらすものルーク」中二っぽくいってみたけど1ミリも格好良くない。そして、服はどうしてもきせてくれないらしい。
「いやいや、服さぇ着れれば解決するよね?後、僕の全裸に呪いでもかかってるの?」
「ああ、えっとですね。服は先ほど話した通りルーク様に着せて良いのは公爵様のみなので僕らはなにもできません。後、呪いとかじゃなく僕は役目上許されますが、それ以外でルーク様の裸を見た場合、最悪、公爵様の怒りを買い、目をつぶされるとかの物理的な厄災がその者を襲いますのである意味呪いより質が悪いですね」
それだけで目をつぶさるとか恐ろしすぎる。まさに文字通り「全裸で厄災をもたらすものルーク」じゃん。しかしもう1回言っても全く恰好良くないな。
「こわっ。あ、じゃあせめて自分で着るから服をくれない?」
「それもだめですよ。ルーク様は先ほど平民になられたと言われてましたが、正確には奴隷のが近いのです。あの断罪劇の罰で辺境兵士の兵役を命じられたかと思いますが、それって実質奴隷兵士になれということなんです。けれどまぁ表向きそう言われてますが、実際は全ての騎士の統括者である公爵様の配下となりますので生殺与奪の権は公爵様が握られております。その公爵様がルーク様自身にもご自身で服を着ていいという権利を与えていませんので……」
僕は叔父様に生殺与奪の権を握られてたんだ……。でもその中に服を着て良いか否かの権利も含まれてるのが怖い。生殺与奪どころか服着脱の権までにぎられてるのってどうなのか。どう考えてても埒が明かないので罪なき子羊たちが目をつぶされないように元の部屋に帰ることにした。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
3,350
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる