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68.償いと願いのゆくさき(レイズ(兄上)視点+ルーク視点)
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その事実を目の当たりにするまで、私にも理解することはできなかった。そして、その赤い光景と血のにおいに眩暈がした。
(嘘だ……こんな……)
「あああ、ああああ」
一瞬、遠退きかけた意識を現実に戻すような、つんざくような悲鳴が響いた。ルークが紙のように白い顔をして震えている。
(可哀そうに、抱きしめてあげたい……けれど)
今は猫になっている。おのれの手、という前足の肉球を見て深いため息が漏れる。
しかし、人外レベルの叔父上がこうもあっさりと殺されるなんて正直、現実感がない。心臓を突き刺されて真っ赤な血を沢山流して死んでいるのに、その顔は美しいままでなんだか血の惨状を見なければ寝ているようにしか見えない。
その血まみれの遺骸を抱きしめて、ルークが泣いている。
「なんで、どうして……おじたん、嘘ですよね、目を開いてよマクスおじたん!!」
(ルーク……)
可哀そうなルーク。愛する人がいなくなって泣き叫んでいるその姿を見た時、心の中に言い知れない感情が生まれていた。それは多分私が目を反らし続けていたものだ。
(ルークは叔父上を本当に愛しているんだな……)
敗北感と表現するのが一番わかりやすい。今までも分かっていた。ルークの一番は私ではない。そしてだからこそ無理やりにでも心を手に入れようとした、けれど……
「眠り姫はキスで目を覚ます。おじたんはお姫様じゃないけど、僕がキスをしたらきっと目覚めてくれる、そうだよね?」
虚空を見つめながら、壊れた笑顔を浮かべてそう呟いたルークのそれは、大好きなオペラの悲劇のヒロインに似ていた。
愛する恋人に彼女は裏切られて父を殺される。それが原因で狂ってしまった彼女は、今のルークのような笑みを浮かべて歌を歌いながらヘンルーダの花を差し出す。
ヘンルーダにはいくつもの花言葉があり、その意味は差し出されたものに委ねられる。今もし私がその花をルークに差し出されるとしたら……
『貴方を軽蔑します』
そう解釈するだろう。そうだ、私はルークの心を無理やりに手に入れようとした。そうしてあの日、私がルークを手に入れたくて王城に呼び出したせいで、ルークがさらわれる遠因を作ってしまった。
その結果、今ルークは叔父上を、最愛の人を亡くして壊れてしまった。
(全部、私のせいだ。私が、ルークを……正常に愛していなかったから)
呪いのせいにすることはできる、けれどそれが今の状況を覆すことはできない。死んだ者を取り戻す術がない。
項垂れた私は、いつもより猫だったので視野が低かった。
だから、それを見つけることができた。血だまりから少し離れたところに、チェーンこそ切れていたがとても綺麗な状態で何事もなかったかのように落ちていたそれを。
それは、以前タウンハウスにルークを閉じ込めた時にルークが首から下げていたものだ。見た瞬間その色合いから叔父上からルークへの贈り物だと認識して確かに下水に捨てたはずのペンダントだった。
それがどうしてここにあるかという疑問よりも先に、何故かそれを私は拾いあげた。
(ルークにこれを返してあげたい)
その行動には意味などなかった。けれど少しでも自身の罪悪感を和らげたかったのかもしれない。
(何も、できないが、せめてルークに……)
こんなことしかできない自分の無力さに反吐が出る。叔父上ならもっとルークのためになることができただろう。いや、ルークを今救えるのは叔父上しかいないのだ。
(もしも、今、叔父上が生き返るなら、私は……なんだって差し出すことができるだろう。ルークがまた私の大好きな笑顔で微笑んでくれるためなら……)
そう願った時、心なしかペンダントの石が淡い光を放った気がした。そして、叔父上にキスをしているルークの白い首筋のそのペンダントかかけてやる。
その瞬間、眩い光が辺りを包み込む。そして……
**************************
叔父様にキスをした。不思議とまだ固くなくぬくもりのある唇に触れた時、目を開くことが怖くなった。
(このまま目を閉じていれば、叔父様が死んだなんて全部、嘘だったと思える気がする……)
そう、全ては悪い夢だった。目を覚ましたら、そうだな僕はまた露出狂ルックスで農村地帯に立っているとかどうだろうか。それで、僕を追いかけてきた叔父様に捕まるんだ。
それから、それから……
(そうしたら、今度はもっと早く叔父様とひとつになりたいって言うんだ。それでもっとしっかりと愛し合って、たとえ快楽堕ちしようが、魔導式貞操アナルプラグを入れられようが、服着脱の許可がでなかろうが、水たまり製造機になろうが、ただふたりで幸せになるんだ)
涙が溢れ続けた。ただただ叔父様に降り注ぐように流れているのだろう、そう思ったけれど僕は目を開けない。開いたら、夢から覚めてしまう。
そんな僕の後ろで気配がした。誰かの気配。けれど、もしそれがさっきの叔父様を殺した人でももうどうでも良い。叔父様のところへ連れて行ってくれるならどうでも……。
そして気配が僕の首に触れる。
(ああ、僕はここで死んでしまうんだな)
しかし、首を絞められるのかと思ったそれは何かを僕の首に下げた。アクセサリーだろうか?
その時、閉じた瞼の隙間から真っ白い光が入り込んできた。
(嘘だ……こんな……)
「あああ、ああああ」
一瞬、遠退きかけた意識を現実に戻すような、つんざくような悲鳴が響いた。ルークが紙のように白い顔をして震えている。
(可哀そうに、抱きしめてあげたい……けれど)
今は猫になっている。おのれの手、という前足の肉球を見て深いため息が漏れる。
しかし、人外レベルの叔父上がこうもあっさりと殺されるなんて正直、現実感がない。心臓を突き刺されて真っ赤な血を沢山流して死んでいるのに、その顔は美しいままでなんだか血の惨状を見なければ寝ているようにしか見えない。
その血まみれの遺骸を抱きしめて、ルークが泣いている。
「なんで、どうして……おじたん、嘘ですよね、目を開いてよマクスおじたん!!」
(ルーク……)
可哀そうなルーク。愛する人がいなくなって泣き叫んでいるその姿を見た時、心の中に言い知れない感情が生まれていた。それは多分私が目を反らし続けていたものだ。
(ルークは叔父上を本当に愛しているんだな……)
敗北感と表現するのが一番わかりやすい。今までも分かっていた。ルークの一番は私ではない。そしてだからこそ無理やりにでも心を手に入れようとした、けれど……
「眠り姫はキスで目を覚ます。おじたんはお姫様じゃないけど、僕がキスをしたらきっと目覚めてくれる、そうだよね?」
虚空を見つめながら、壊れた笑顔を浮かべてそう呟いたルークのそれは、大好きなオペラの悲劇のヒロインに似ていた。
愛する恋人に彼女は裏切られて父を殺される。それが原因で狂ってしまった彼女は、今のルークのような笑みを浮かべて歌を歌いながらヘンルーダの花を差し出す。
ヘンルーダにはいくつもの花言葉があり、その意味は差し出されたものに委ねられる。今もし私がその花をルークに差し出されるとしたら……
『貴方を軽蔑します』
そう解釈するだろう。そうだ、私はルークの心を無理やりに手に入れようとした。そうしてあの日、私がルークを手に入れたくて王城に呼び出したせいで、ルークがさらわれる遠因を作ってしまった。
その結果、今ルークは叔父上を、最愛の人を亡くして壊れてしまった。
(全部、私のせいだ。私が、ルークを……正常に愛していなかったから)
呪いのせいにすることはできる、けれどそれが今の状況を覆すことはできない。死んだ者を取り戻す術がない。
項垂れた私は、いつもより猫だったので視野が低かった。
だから、それを見つけることができた。血だまりから少し離れたところに、チェーンこそ切れていたがとても綺麗な状態で何事もなかったかのように落ちていたそれを。
それは、以前タウンハウスにルークを閉じ込めた時にルークが首から下げていたものだ。見た瞬間その色合いから叔父上からルークへの贈り物だと認識して確かに下水に捨てたはずのペンダントだった。
それがどうしてここにあるかという疑問よりも先に、何故かそれを私は拾いあげた。
(ルークにこれを返してあげたい)
その行動には意味などなかった。けれど少しでも自身の罪悪感を和らげたかったのかもしれない。
(何も、できないが、せめてルークに……)
こんなことしかできない自分の無力さに反吐が出る。叔父上ならもっとルークのためになることができただろう。いや、ルークを今救えるのは叔父上しかいないのだ。
(もしも、今、叔父上が生き返るなら、私は……なんだって差し出すことができるだろう。ルークがまた私の大好きな笑顔で微笑んでくれるためなら……)
そう願った時、心なしかペンダントの石が淡い光を放った気がした。そして、叔父上にキスをしているルークの白い首筋のそのペンダントかかけてやる。
その瞬間、眩い光が辺りを包み込む。そして……
**************************
叔父様にキスをした。不思議とまだ固くなくぬくもりのある唇に触れた時、目を開くことが怖くなった。
(このまま目を閉じていれば、叔父様が死んだなんて全部、嘘だったと思える気がする……)
そう、全ては悪い夢だった。目を覚ましたら、そうだな僕はまた露出狂ルックスで農村地帯に立っているとかどうだろうか。それで、僕を追いかけてきた叔父様に捕まるんだ。
それから、それから……
(そうしたら、今度はもっと早く叔父様とひとつになりたいって言うんだ。それでもっとしっかりと愛し合って、たとえ快楽堕ちしようが、魔導式貞操アナルプラグを入れられようが、服着脱の許可がでなかろうが、水たまり製造機になろうが、ただふたりで幸せになるんだ)
涙が溢れ続けた。ただただ叔父様に降り注ぐように流れているのだろう、そう思ったけれど僕は目を開けない。開いたら、夢から覚めてしまう。
そんな僕の後ろで気配がした。誰かの気配。けれど、もしそれがさっきの叔父様を殺した人でももうどうでも良い。叔父様のところへ連れて行ってくれるならどうでも……。
そして気配が僕の首に触れる。
(ああ、僕はここで死んでしまうんだな)
しかし、首を絞められるのかと思ったそれは何かを僕の首に下げた。アクセサリーだろうか?
その時、閉じた瞼の隙間から真っ白い光が入り込んできた。
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