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プロローグ
08.さよならと不幸令嬢
(自由か……私に帰る場所なんてないのに)
レミリアはぼんやりと空を見つめていた。すぐに出ていけと言われなかっただけマシだと前向きになるべきだと自分に何度も言い聞かせたけれど、そんなことは無理だった。
レミリアにはわかっていた。所詮は自分は貴族の娘に過ぎないということを。どんなに孤独に耐えたからといて市井で生きていけるほど強くはないということを。じわじわと襲ってくるこれからへの恐怖。
夜空には真っ青な月が浮かんでいた。その月を見た時何故かルーファスを思い出した。
(そういえば……あれは妄想だけど、うん。でももうどうでもいい、どうせならあのキンモクセイの前で死ねばいいのよ)
丁度今はキンモクセイが見頃のはずだから。
レミリアは昔、王子妃になった時に王家から渡されたそれを懐にしまう。『人魚の涙』と呼ばれるそれはこの国一番の猛毒だ。これは何かあった時に毒杯をあおるために王宮に入った時に渡されたものだった。
とても怖いものだと思って厳重にしまっていたが、もうそれも必要ない。レミリアはそれをまるでお守りのように大切に持ってその場所を久々に訪れた。
公爵家の本宅。もしかしたら妹や義母がいるかもしれないと思ったが、邸宅には光はともっていないので誰もいなのが外からでもわかった。レミリアがいなくなってから誰もいないのか門は閉まっていたが、抜け穴をしっていたからあっさりと中へ侵入できた。
見慣れたはずの館なのにまるで知らない家のようでレミリアは僅かに恐怖を感じた。まるで時がとまったように佇むその姿はまるでおとぎ話の「れんごくの国」のように時が止まって見えた。
そうしてレミリアはそこにたどり着いた。
大好きなキンモクセイの木へ。けれど昨日大雨が降ったせいかその美しい花も香りも全て散っていた。
(最期まで望みはかなわないのね)
悲しい気持ちの中、キンモクセイの前でレミリアは叫んだ。
「ルーファス、連れて行って、お願い。私もうここに居たくないの、もうすべてが嫌なの」
無駄な夢想だ。それでも何かにすがりたい気持ちでレミリアはただ叫んでいた。涙は零れない、こんな時まで……そして、懐にしまっていた毒杯をあおる。躊躇なく一気に。
焼けつくような喉の痛みと感覚。そして、体から徐々にちからが抜けていく。
「レミリア!!!!!」
誰かが遠くで叫んでいる声がした。けれど……意識が朦朧とする。ただ、レミリアの前でキンモクセイが光り輝いいるように見えたのと、とてもあたたかい手がその体を抱きしめたそんないとおしい幻覚の中でレミリアは全てを手放した。
レミリアはぼんやりと空を見つめていた。すぐに出ていけと言われなかっただけマシだと前向きになるべきだと自分に何度も言い聞かせたけれど、そんなことは無理だった。
レミリアにはわかっていた。所詮は自分は貴族の娘に過ぎないということを。どんなに孤独に耐えたからといて市井で生きていけるほど強くはないということを。じわじわと襲ってくるこれからへの恐怖。
夜空には真っ青な月が浮かんでいた。その月を見た時何故かルーファスを思い出した。
(そういえば……あれは妄想だけど、うん。でももうどうでもいい、どうせならあのキンモクセイの前で死ねばいいのよ)
丁度今はキンモクセイが見頃のはずだから。
レミリアは昔、王子妃になった時に王家から渡されたそれを懐にしまう。『人魚の涙』と呼ばれるそれはこの国一番の猛毒だ。これは何かあった時に毒杯をあおるために王宮に入った時に渡されたものだった。
とても怖いものだと思って厳重にしまっていたが、もうそれも必要ない。レミリアはそれをまるでお守りのように大切に持ってその場所を久々に訪れた。
公爵家の本宅。もしかしたら妹や義母がいるかもしれないと思ったが、邸宅には光はともっていないので誰もいなのが外からでもわかった。レミリアがいなくなってから誰もいないのか門は閉まっていたが、抜け穴をしっていたからあっさりと中へ侵入できた。
見慣れたはずの館なのにまるで知らない家のようでレミリアは僅かに恐怖を感じた。まるで時がとまったように佇むその姿はまるでおとぎ話の「れんごくの国」のように時が止まって見えた。
そうしてレミリアはそこにたどり着いた。
大好きなキンモクセイの木へ。けれど昨日大雨が降ったせいかその美しい花も香りも全て散っていた。
(最期まで望みはかなわないのね)
悲しい気持ちの中、キンモクセイの前でレミリアは叫んだ。
「ルーファス、連れて行って、お願い。私もうここに居たくないの、もうすべてが嫌なの」
無駄な夢想だ。それでも何かにすがりたい気持ちでレミリアはただ叫んでいた。涙は零れない、こんな時まで……そして、懐にしまっていた毒杯をあおる。躊躇なく一気に。
焼けつくような喉の痛みと感覚。そして、体から徐々にちからが抜けていく。
「レミリア!!!!!」
誰かが遠くで叫んでいる声がした。けれど……意識が朦朧とする。ただ、レミリアの前でキンモクセイが光り輝いいるように見えたのと、とてもあたたかい手がその体を抱きしめたそんないとおしい幻覚の中でレミリアは全てを手放した。
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