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第一章:れんごくの国と約束の娘
09.ルーファスと不幸令嬢
たいようのくにとつきのくにのおうさまたちはやくそくをしました
たいようのくににおひめさまがうまれたらつきのくにのおうじさまとけっこんすると
けれどたいようのおひめさまにこいをしたうみのくにのおうじさまは
おひめさまをさらってしまいました
おこったつきのくにのおうさまはうみのくにのおうぞくにのろいをかけました
そして、おひめさまをうばわれたつきのおうじさまは……
「ここはどこ?」
目を覚ましたレミリアがまず見たのは見たことがない美しい天井だった。それは夜の星空のような美しい群青にキラキラした星が浮かび上がっているように見える。少なくともそんな場所をレミリアは知らない。
「よかった、レミー、目が覚めたんだね」
「貴方は……ルーファス??」
「そうだよ、レミー」
レミリアは驚きのあまり大声を出してしまった。青年に成長したルーファスがレミリアを抱きしめたからだ。銀色の髪に紫の瞳をしたその青年はこの世の者とは思えないほど美しく、そのあたたかい腕の中でレミリアの心臓は早鐘を打つのがわかった。
(私は死んだはずではないの?)
あのキンモクセイの木の前で、レミリアは毒を飲んで死んだはずだった。脈が速くなり心臓が止まると思った時に誰かに呼ばれた気がしたが、それとは別であたたかい腕に抱きとめられたのを思い出した。
「ルーファス、教えて。ここは天国?それとも地獄?」
自殺した人の魂は地獄へ堕ちると聞いたことある。ならばここは地獄なのかもしれない。けれどルーファスがいてくれるならそれが地獄でも構わないとレミリアは思った。
少なくとも生きている時にレミリアを愛する人などひとりもいなかった、むしろそちらのが地獄だったのだから。レミリアの瞳から自然に零れていく涙をルーファスの綺麗な指先が壊れ物でも扱うように繊細に拭う。
「どちらでもないよ。ここは僕の国だ。レミー、ううん。僕のレミー。やっとこちらへ迎えられて嬉しいよ」
綺麗な笑顔だった。その笑顔はとても綺麗で汚いところがひとつもない。それを息がかかるほど間近で見たレミリアの胸の奥でとても熱い感情が萌芽した。それが何かまだレミリアには分からなかった。
「迎えるって……私、確か毒を飲んだの。だからここは死後の世界かなって思ったんだけど……」
「大丈夫だよ。後その……昔みたいにルーって呼んでくれるかな」
肯定されたおかげで心が落ち着いていく。それは今までレミリアが味わったことのないとてもあたたかい感情で安堵と呼ぶものだった。気付けばまるで決壊したダムみたいに涙腺が崩壊して、レミリアは泣いていた。ずっと泣けなかったのにそれが戻ってきたように胸の中で荒れ狂う。激しい嵐の海のように。
「ルー、ルー」
とその大切な名前を何度も壊れたように連呼することしかできず、ひたすらに涙が零れ落ちた。いつもならそんなことしたら見捨てられたり軽蔑されるという恐怖が募るのに、今は違う。ルーファスだけはレミリアを見捨てないという確信がある。
(誰が見捨ててもルーファスは見捨てない。そしてルーファスだけは必ずわかってくれる。そして約束通り彼はちゃんと迎えに来てくれた)
「いいんだよ。レミー君はよく頑張ったよ。もう頑張らないでいいんだ。これからはずっと僕と一緒にいよう」
あたたかい手がその髪を撫でる。そのぬくもりを感じた時、レミリアの意識がふよふよと浮遊する。とてもとても眠くなる。
「今はゆっくりお休み。大丈夫。必ず僕が君を守るからね」
額にキスを落とされる。まるで幼子をいとおしむようなそれでいて慈悲深いぬくもり。そして、その優しい声に安心してまるで小さな子供みたいにレミリアは眠りについた。そのまどろみの中遠く遠く何故かとても昏い響きのする声がした気がした。
「ずっとずっと待っていたよ。やっと手に入れた僕だけの太陽」
けれど、それはきっと夢だとレミリアはその時何も気にすることはなかった。
たいようのくににおひめさまがうまれたらつきのくにのおうじさまとけっこんすると
けれどたいようのおひめさまにこいをしたうみのくにのおうじさまは
おひめさまをさらってしまいました
おこったつきのくにのおうさまはうみのくにのおうぞくにのろいをかけました
そして、おひめさまをうばわれたつきのおうじさまは……
「ここはどこ?」
目を覚ましたレミリアがまず見たのは見たことがない美しい天井だった。それは夜の星空のような美しい群青にキラキラした星が浮かび上がっているように見える。少なくともそんな場所をレミリアは知らない。
「よかった、レミー、目が覚めたんだね」
「貴方は……ルーファス??」
「そうだよ、レミー」
レミリアは驚きのあまり大声を出してしまった。青年に成長したルーファスがレミリアを抱きしめたからだ。銀色の髪に紫の瞳をしたその青年はこの世の者とは思えないほど美しく、そのあたたかい腕の中でレミリアの心臓は早鐘を打つのがわかった。
(私は死んだはずではないの?)
あのキンモクセイの木の前で、レミリアは毒を飲んで死んだはずだった。脈が速くなり心臓が止まると思った時に誰かに呼ばれた気がしたが、それとは別であたたかい腕に抱きとめられたのを思い出した。
「ルーファス、教えて。ここは天国?それとも地獄?」
自殺した人の魂は地獄へ堕ちると聞いたことある。ならばここは地獄なのかもしれない。けれどルーファスがいてくれるならそれが地獄でも構わないとレミリアは思った。
少なくとも生きている時にレミリアを愛する人などひとりもいなかった、むしろそちらのが地獄だったのだから。レミリアの瞳から自然に零れていく涙をルーファスの綺麗な指先が壊れ物でも扱うように繊細に拭う。
「どちらでもないよ。ここは僕の国だ。レミー、ううん。僕のレミー。やっとこちらへ迎えられて嬉しいよ」
綺麗な笑顔だった。その笑顔はとても綺麗で汚いところがひとつもない。それを息がかかるほど間近で見たレミリアの胸の奥でとても熱い感情が萌芽した。それが何かまだレミリアには分からなかった。
「迎えるって……私、確か毒を飲んだの。だからここは死後の世界かなって思ったんだけど……」
「大丈夫だよ。後その……昔みたいにルーって呼んでくれるかな」
肯定されたおかげで心が落ち着いていく。それは今までレミリアが味わったことのないとてもあたたかい感情で安堵と呼ぶものだった。気付けばまるで決壊したダムみたいに涙腺が崩壊して、レミリアは泣いていた。ずっと泣けなかったのにそれが戻ってきたように胸の中で荒れ狂う。激しい嵐の海のように。
「ルー、ルー」
とその大切な名前を何度も壊れたように連呼することしかできず、ひたすらに涙が零れ落ちた。いつもならそんなことしたら見捨てられたり軽蔑されるという恐怖が募るのに、今は違う。ルーファスだけはレミリアを見捨てないという確信がある。
(誰が見捨ててもルーファスは見捨てない。そしてルーファスだけは必ずわかってくれる。そして約束通り彼はちゃんと迎えに来てくれた)
「いいんだよ。レミー君はよく頑張ったよ。もう頑張らないでいいんだ。これからはずっと僕と一緒にいよう」
あたたかい手がその髪を撫でる。そのぬくもりを感じた時、レミリアの意識がふよふよと浮遊する。とてもとても眠くなる。
「今はゆっくりお休み。大丈夫。必ず僕が君を守るからね」
額にキスを落とされる。まるで幼子をいとおしむようなそれでいて慈悲深いぬくもり。そして、その優しい声に安心してまるで小さな子供みたいにレミリアは眠りについた。そのまどろみの中遠く遠く何故かとても昏い響きのする声がした気がした。
「ずっとずっと待っていたよ。やっと手に入れた僕だけの太陽」
けれど、それはきっと夢だとレミリアはその時何も気にすることはなかった。
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