世にも不幸なレミリア令嬢は失踪しました

ひよこ麺

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第五章:真実の断片と

81.月狂いと不幸令嬢

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月狂いルナティックって……」

「「太陽狂い」のようなものさ。ただ、それはこのムーンティア王国固有の病。父上はその病に侵されて時々、おかしくなってしまっていた。けれど、それは長くて1日ほどのことだったけれど……時が止まったせいで僕は長らく正気の父と会っていないんだ」

寂し気に笑うルーファス。その表情には自嘲するような気配さぇあった。その表情に思わずレミリアは切なくなった。

(時の止まった国、この国ではルーとヨミ以外はずっと同じことを繰り返しているのね……)

この国の人々が、妙に静かに感じた原因には薄々レミリアも気付いていた。けれど、その確証をついに得た気がした。この国の人々の時が止まり永遠に同じ日を繰り返している。そこにはいかなる干渉もできず、ただ映像を見ているように鑑賞することしかできないのだ。

そんな世界で、ルーファスとヨミはただ生き続けていたことを考えると自然と涙が零れて頬を伝った。

「レミリア、泣いているの??」

心配そうなルーファスの紫の瞳を目が合う。とても悲しい人。そしてずっとひとつの恋心を永遠に抱いている人。ルーファスの過ごしてきた時間を考えた時、どうしようもない悲しみがレミリアを襲ったけれど、これ以上泣いてはいけないとも思った。

(この件で、泣いていいのも嘆いていいのもルーだけ。私が勝手に想像するのはとても失礼だし、それに……)

今のレミリアにその気持ちを理解することはとても難しいことだった。ただ、いつかそれに真正面から寄り添うことができたらどんなに良いかとも思った。

「大丈夫、目にゴミが入ってしまっただけよ」

そう答えた。ルーファスには、精神体であるレミリアの目にゴミなど入らないことはすぐにわかっていた。けれど彼は何も言わないで、彼女の涙を拭うように指先がその頬に触れた。

「ごめん。僕はいつも足りない。けれど、せめて涙を拭わせてほしい」

美しい白い指先。その感触とぬくもりが確かにそこにある。とても穏やかな何もないこと、それでもそれはとても幸せなことにルーファスにもレミリアのも思えた。

一時的にレミーナと自身に関することもレミリアの中から消えていた。そんな瞬間こそきっと求めていた幸せが隠れているような気がする。けれど……それはまた心が思考に囚われることで消えてしまう泡沫のような淡い幸福でもある。

それでも、今のふたりにはそれが必要だった。ほんの僅かでもお互いがお互いであることを忘れてただ浸るようなことが。

「殿下」

その幸福な世界を打ち破るようにヨミの声がした。そして……

「ご快諾頂き、サンソレイユ帝国の皆様をお連れ致しました」

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