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11.偏執狂の男と部外者の見たもの01(視点:ネージュ)
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「ソレイユ様、あまり言いたくありませんがウィリアム卿をあまり信用しすぎない方が良いと思うのですが……」
僕はソレイユ様に提言した。しかし、笑って。
「大丈夫だよ。ウィルは僕の大切な幼なじみだから」
と受け流された。ソレイユ様は特になんの苦労も陰謀もない中で育った王子だった。第二王子だが既に第一王子がいたので王位継承権も第二位で貴族の陰謀などとも縁遠かった。だからこそのびのびと成長した特に問題のない王子様、それがソレイユ様だった。
僕が宰相の父から彼の側付きを言い渡されたのは学園に入った時だった。その時にはすでに近衛で幼なじみのウィリアム・ヴァン・オリオン伯爵が側にいた。公爵家の跡取りで、既に2つある爵位のうち伯爵の方は譲渡されていたウィリアムは非の打ちどころのない男だった。
しかし、何故か僕は初めてあった時からこの男からそこはかとなく嫌なものを感じていた。
それはもしかしたら呪われしオリオン公爵家の血筋のものだからという先入観を持っていたからかもしれない。
オリオン公爵家はとても格式高い家だが、その当主になるものは必ず何かに執着する偏執狂を発症する家系だ。原因はよくわからないがあの家は初代エドモンド卿よりほぼ全員なんらかの偏執狂に発症している。
トリガーは分からないが、ほぼ確実に発動する爆弾のような性質。それが現当主である公爵様のようにそこまで外側に害をなさないのならばいいのだが、ウィリアムからはもっとそれが良くない形で萌芽しそうな気配がしたのだ。根拠のない感と言えばそれまでだが。
(監視はなるべく怠らないようにしよう)
そして、それが恐ろしいことを知るきっかけになるなんてまだ知らずにいた。
ソレイユ様は極端なほどにその婚約者でウィリアムの妹であるベラトリクス嬢を嫌っていた。僕からすれば確かに平民から公爵家に養女として入った女性だが世の中の噂ほどひどい人ではないことが分かっていた。
むしろこの国では珍しい真っ赤な髪と緑の瞳の美しい物静かな女性というイメージだった。
ソレイユ様曰く、卑しく口の減らない女らしいが、少なくともベラトリクス嬢が他者と会話している姿を僕は見たことがなかったし、そう言っているソレイユ様と会話する姿も見たことがない。
しかしソレイユ様はそう思い込んでいる。いや、思い込まされているのだと気づいたのは偶然聞こえたウィリアムとの会話だった。
「はぁ、早く自由になりたいよウィル」
「大丈夫だ、ソレイユ。彼女が、サラサが「聖女」だとみんな信じているのだからそう遠くない未来君は僕の愚妹と婚約解消できる」
「そうだね。早くあの卑しく愚かな女との縁を切ってしまいたい」
「ああ。後少しだ」
ソレイユ様は何故気付かないのだろう。その話をしている時のウィリアムが彼とは思えないような笑顔でいることに。僕は身震いした。ウィリアムという男は氷の貴公子等とあだ名されるくらい笑わない男だ。
そこに違和感を感じた僕は彼がどのような時に笑うのかを検証してみた。そうしてとても恐ろしいことに気づいた。ウィリアムが笑うのはソレイユ様とベラトリクス嬢の話をする時、サラサと話している時、そして多分ウィリアムの敵とみなした人物と対話している時であると気づいた。
ウィリアムという男は基本的に全く笑わないのだ。実際同じ会話でも日常会話でソレイユ様に笑いかけることはない。しかし、ベラトリクス嬢の話をする時だけ笑う。嬉しそうに。それこそが違和感だった。また、ウィリアムにとって好ましくない相手に対しても彼は笑う。そう彼の笑いとは真逆の感情の吐露のようだ。それは怒りや憎しみというもの。この男は捻じれた男なのだ。それに気づいてからよりこの男は信用できないと考えるようになった。
僕はソレイユ様に都度都度ウィリアムを信用してはいけないと伝えるようにしたが、長年の信用の差が出てしまい、聞く耳は持たれなかった。
ソレイユ様の横で笑顔でベラトリクス嬢を貶める話をするウィリアムに常に空寒いものを感じながら。
しかし、ウィリアムの目的はなんだろう。僕は、ソレイユ様のお気に入りであり、「聖女」であるサラサ嬢に彼が高価な贈り物をしている情報を知っていた。
ただ、それが個人的には恋愛感情からとか偏執狂を向ける相手にしているという感じがしなかった。何故なら僕が監視しながら感じているウィリアムという男は用心深くどこまでも得体が知れない男だからだ。そんな男があっさりその心の裡を晒すだろうか。
それと合わせて学園で奇妙な噂が流れ始めた。
「ベラトリクス嬢の私物を隠したり、盗んだりしたものは呪われる」
何故そんな噂が出たのだろう。疑問に思い調べてみるとそれは想像以上に恐ろしい話だった。
ベラトリクス嬢の教科書を隠したり汚した伯爵令嬢がいた。彼女はそれからしばらくして一身上の都合で学園を去った。どうやら、街にお忍びで出かけた際になんらかの事件に巻き込まれ心を閉ざしてしまったらしい。
また、あるベラトリクス嬢の私物を盗んだ男爵令嬢はどこからか彼女には人の私物を盗む悪しい癖があるという噂が広まり、それが根本原因で彼女の生家は信頼をなくしていき、付き合いのあった上位貴族や商家が見限り、家が没落した。
それ以外にも彼女に直接害を及ぼしたものは必ず不幸になった。一部では彼女は「魔女」で呪いをかけているなどという噂が出回っていたが、根も葉もない噂だ。
そして、彼女の悪口を言っていた連中もあの事件以降一切その名さぇ口にしなくなる。
僕はソレイユ様に提言した。しかし、笑って。
「大丈夫だよ。ウィルは僕の大切な幼なじみだから」
と受け流された。ソレイユ様は特になんの苦労も陰謀もない中で育った王子だった。第二王子だが既に第一王子がいたので王位継承権も第二位で貴族の陰謀などとも縁遠かった。だからこそのびのびと成長した特に問題のない王子様、それがソレイユ様だった。
僕が宰相の父から彼の側付きを言い渡されたのは学園に入った時だった。その時にはすでに近衛で幼なじみのウィリアム・ヴァン・オリオン伯爵が側にいた。公爵家の跡取りで、既に2つある爵位のうち伯爵の方は譲渡されていたウィリアムは非の打ちどころのない男だった。
しかし、何故か僕は初めてあった時からこの男からそこはかとなく嫌なものを感じていた。
それはもしかしたら呪われしオリオン公爵家の血筋のものだからという先入観を持っていたからかもしれない。
オリオン公爵家はとても格式高い家だが、その当主になるものは必ず何かに執着する偏執狂を発症する家系だ。原因はよくわからないがあの家は初代エドモンド卿よりほぼ全員なんらかの偏執狂に発症している。
トリガーは分からないが、ほぼ確実に発動する爆弾のような性質。それが現当主である公爵様のようにそこまで外側に害をなさないのならばいいのだが、ウィリアムからはもっとそれが良くない形で萌芽しそうな気配がしたのだ。根拠のない感と言えばそれまでだが。
(監視はなるべく怠らないようにしよう)
そして、それが恐ろしいことを知るきっかけになるなんてまだ知らずにいた。
ソレイユ様は極端なほどにその婚約者でウィリアムの妹であるベラトリクス嬢を嫌っていた。僕からすれば確かに平民から公爵家に養女として入った女性だが世の中の噂ほどひどい人ではないことが分かっていた。
むしろこの国では珍しい真っ赤な髪と緑の瞳の美しい物静かな女性というイメージだった。
ソレイユ様曰く、卑しく口の減らない女らしいが、少なくともベラトリクス嬢が他者と会話している姿を僕は見たことがなかったし、そう言っているソレイユ様と会話する姿も見たことがない。
しかしソレイユ様はそう思い込んでいる。いや、思い込まされているのだと気づいたのは偶然聞こえたウィリアムとの会話だった。
「はぁ、早く自由になりたいよウィル」
「大丈夫だ、ソレイユ。彼女が、サラサが「聖女」だとみんな信じているのだからそう遠くない未来君は僕の愚妹と婚約解消できる」
「そうだね。早くあの卑しく愚かな女との縁を切ってしまいたい」
「ああ。後少しだ」
ソレイユ様は何故気付かないのだろう。その話をしている時のウィリアムが彼とは思えないような笑顔でいることに。僕は身震いした。ウィリアムという男は氷の貴公子等とあだ名されるくらい笑わない男だ。
そこに違和感を感じた僕は彼がどのような時に笑うのかを検証してみた。そうしてとても恐ろしいことに気づいた。ウィリアムが笑うのはソレイユ様とベラトリクス嬢の話をする時、サラサと話している時、そして多分ウィリアムの敵とみなした人物と対話している時であると気づいた。
ウィリアムという男は基本的に全く笑わないのだ。実際同じ会話でも日常会話でソレイユ様に笑いかけることはない。しかし、ベラトリクス嬢の話をする時だけ笑う。嬉しそうに。それこそが違和感だった。また、ウィリアムにとって好ましくない相手に対しても彼は笑う。そう彼の笑いとは真逆の感情の吐露のようだ。それは怒りや憎しみというもの。この男は捻じれた男なのだ。それに気づいてからよりこの男は信用できないと考えるようになった。
僕はソレイユ様に都度都度ウィリアムを信用してはいけないと伝えるようにしたが、長年の信用の差が出てしまい、聞く耳は持たれなかった。
ソレイユ様の横で笑顔でベラトリクス嬢を貶める話をするウィリアムに常に空寒いものを感じながら。
しかし、ウィリアムの目的はなんだろう。僕は、ソレイユ様のお気に入りであり、「聖女」であるサラサ嬢に彼が高価な贈り物をしている情報を知っていた。
ただ、それが個人的には恋愛感情からとか偏執狂を向ける相手にしているという感じがしなかった。何故なら僕が監視しながら感じているウィリアムという男は用心深くどこまでも得体が知れない男だからだ。そんな男があっさりその心の裡を晒すだろうか。
それと合わせて学園で奇妙な噂が流れ始めた。
「ベラトリクス嬢の私物を隠したり、盗んだりしたものは呪われる」
何故そんな噂が出たのだろう。疑問に思い調べてみるとそれは想像以上に恐ろしい話だった。
ベラトリクス嬢の教科書を隠したり汚した伯爵令嬢がいた。彼女はそれからしばらくして一身上の都合で学園を去った。どうやら、街にお忍びで出かけた際になんらかの事件に巻き込まれ心を閉ざしてしまったらしい。
また、あるベラトリクス嬢の私物を盗んだ男爵令嬢はどこからか彼女には人の私物を盗む悪しい癖があるという噂が広まり、それが根本原因で彼女の生家は信頼をなくしていき、付き合いのあった上位貴族や商家が見限り、家が没落した。
それ以外にも彼女に直接害を及ぼしたものは必ず不幸になった。一部では彼女は「魔女」で呪いをかけているなどという噂が出回っていたが、根も葉もない噂だ。
そして、彼女の悪口を言っていた連中もあの事件以降一切その名さぇ口にしなくなる。
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