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04.狂った女

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あの日、舞踏会の日。私をリリアが踊り場から突き落とした日。

リベリオン曰く、あの日、ダンスを終えて少し休んでいた時にリリアがお手洗いに行くと姿を消した。

しかし、いくら待っても彼女は戻らず探しに行ったところ警らに取り押さえられているリリアがいたという。

「リリアは君を殺せば、私の婚約者になれると考えていたようだ。けれど、それは身分的に考えて不可能だった。それに申し訳ないが私はリリアを大切な幼なじみとあの日までは思っていたが婚約者と見たことはなかった」

その言葉に私は何故か不快感を抱いた。リベリオンがリリアを愛していたのは明白だった。だってリリアにリベリオンは沢山のプレゼントを送っていた。

それは私が嫌がらせのように送られた好みじゃないものではなくしっかりと彼女の好みのものか、彼女にねだられて買ったものだったのだから。

(リベリオンは確かにリリアを女性として好きだったはず。それなのにどうしてこんな嘘をつくのだろう)

臓腑が冷たくなる感覚がした。夢なのに、幸福な夢なのに何故か不愉快さが募る。

「ああ、でも君は信じられないだろう。確かにあの当時私は君を全く愛していないと思っていた。それに比べたらリリアを大切にして

まるで心を読まれたような不快感。胸やけするような嫌な気分。

けれど、リベリオンは続けた。

「いや、実際あの当時はリリアを私は愛していると言われても仕方なかったのかもしれない。唯一リリアにだけ心を開いていたからね。でも今は違う。リリアは私をだましていた、それを知って完全にあの時抱いていた親しい気持ちも愛おしい気持ちも消えてしまった」

だましていた……リリアは確かに男性に対してどうすれば自分が好かれるかが分かっているタイプの女性だった。病弱でか弱く儚げで守ってあげたいような庇護欲を掻き立てる、まさに男性からみたらどうしようもなく愛おしくなるような存在。

私とは真逆だった。

完璧であろうとした。ひとつだって取りこぼしのないように、そうしないと愛されないと思っていた。いや、今も想い続けている。それなのに私はこんな不完全な、瑕疵のある状態になってしまった。

「泣いているのか。すまない。まだ調子も戻っていないのに随分と酷い話をしてしまったね」

優しく、本当にこれがあの冷たいリベリオンであると信じられないようなとろけるような微笑みで私の涙をまたハンカチで拭ってくれた。

「なんにせよ、リリアは君を殺そうとした。だからもう彼女を愛することはないし、そう遠くない未来処刑も決まっている。狂った女は処刑される」

とても冷たい声で言い放つ。かつては愛を語らっただろうその口で。

(せっかく良い夢だと思ったのに、変なところでリアルだな)

そして、その変貌が逆に私に優しくなった理由も隠れている気がしてなんだかとても落ち着かなかった。
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