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04.何故か浮かんだ前世の記憶
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『ふたりで必ずこの企画を成功させよう』
聞きなれた、けれど一番聞きたくない声が耳に入った。
(何故??これは??)
僕の目の前に、そいつが居た。前世、僕がもっとも憎んだ男が微笑んでいる。罵詈雑言を口にしようとしたのに、僕の口から出た言葉は……。
『そうだな!!これで会社をふたりで変えよう!!』
だった。
そこで、僕はこれが僕の前世の記憶だと気付いた。そして、今見ているのは僕とあいつがまだ親友で、同士で、ふたりで確かにあのプロジェクトを始めた時のものだった。
前世の僕はついていなかった。
最初に配属された部署の上司と反りが合わず、それが原因でリストラ候補ばかりの部署に飛ばされた。けれど会社自体が大きかったことで、給料自体は悪くなかったのとあいつが居たので僕はそのまま会社で働いていた。
あいつ、御成は、僕が飛ばされる前の部署の末席の社員だった。顔立ちも身なりも整っているし、なにより仕事は出来る男だった。けれど口数が少なく、感情を示すことが難しいせいでみんなどこかあいつを倦厭していたのを覚えている。
今さっき、目の前でみた場面は、僕と御成がある社内公募のプロジェクトに応募するための共同企画を頑張ろうと意気込んでいた場面だった。
(そう、あの時の僕達はただ前しか見ていなかったんだよね……)
未来には希望だけが溢れていると、失うものなどなかった僕らはただ夢を見ていた。そして、まだ夢だったものは美しさだけを見せていて、僕とあいつはその美しさを求めた……。
目の前の場面が切り替わる。そこは確か御成の家でふたりで食事をしている場面だった。
あの日以降、僕らは企画に打ち込んだ。公募企画は通常の業務とは別で行うものだったこともあり、仕事が終わった後は御成の家で語り合う関係になった。
『……ここはこういう概念で』
『うんうん、つまりこういうことな』
難しい言葉で話す御成に対して、僕は分かりやすい言葉に書き換えた。御成は頭は良いが理系に振り切り過ぎていて、言葉がどこかちぐはぐだった。
だから、職場ではそれを気にして話すことが難しかったけれどふたりの時は気にせずに話したのであいつが思い描くことに僕は肉をつけていった。
不思議とほかの奴らには理解できないあいつの言葉が、僕にはよくわかったから何も辛くなかった。その日の場面もいつものようにふたりで食事をしながら深夜遅くまであいつの家で時に笑って、時に泣いた記憶が蘇る度に胸を締め付けた。
(そうだ、僕とお前は……)
好きだった歌の歌詞に『俺たちはいつでも ふたりでひとつだった』というのがあるけど、本当にあの時はそういうヤツだって、僕にとって替えのきかないヤツで、あいつにとっても僕もそういう人間だって信じていた。
楽しそうに作業している過去の自身を見つめながら、涙が零れるのが分かった。
(でも、そう思っていたのは僕だけだったんだ……)
熱い感情の後に湧いたのは冷たい相対する感情。
場面が、切り替わる。
今度は、ふたりで立ち上げて企画が大成功したあの日、前世で一番嬉しいと感じたあの日の記憶。多くの人達に賞賛された記憶。
そして……、
『大成功だったな!!』
『そうだな』
大成功で終わった企画の後、いつも通りにあいつ家、けれどいつもは安いピザとかコンビニ弁当が広がっていたテーブルにはいつか僕が食べたいと話していた今半の弁当を拡げて酒を飲んで笑い合う。
あれだけの賞賛があったけれど、他の奴から飲もうと誘われていたけれどふたりだけでどうしても祝いたくて囲んだ食卓、いつものけれど少し贅沢で幸せな空気。
いつものように話していた時、不意に御成が見たことのない真剣な顔で僕を見つめる。
『どうした??』
異変に気付いて首を傾げると御成は重い口をそれでも開いてゆっくりと話す。
『俺ひとりだったらできなかった。けれど、〇〇が居たから成功したんだ。本当に本当にありがとう』
『水臭いな相棒。何をいまさら』
笑ってそう答えた時、御成が僕を突然抱き寄せた。
端正に整った男の顔が眼前に見える。そして……。
『好きだ……、ずっと』
『……』
いつも回る僕の口が言葉を発するよりも先にゆっくりと覆われる。そこに嫌悪感はなかった。いや、むしろそれが当たり前なのだとさえ感じるようなとても不思議なキスだった。
(ああ、そうだ。あいつと僕は……それなのに……)
聞きなれた、けれど一番聞きたくない声が耳に入った。
(何故??これは??)
僕の目の前に、そいつが居た。前世、僕がもっとも憎んだ男が微笑んでいる。罵詈雑言を口にしようとしたのに、僕の口から出た言葉は……。
『そうだな!!これで会社をふたりで変えよう!!』
だった。
そこで、僕はこれが僕の前世の記憶だと気付いた。そして、今見ているのは僕とあいつがまだ親友で、同士で、ふたりで確かにあのプロジェクトを始めた時のものだった。
前世の僕はついていなかった。
最初に配属された部署の上司と反りが合わず、それが原因でリストラ候補ばかりの部署に飛ばされた。けれど会社自体が大きかったことで、給料自体は悪くなかったのとあいつが居たので僕はそのまま会社で働いていた。
あいつ、御成は、僕が飛ばされる前の部署の末席の社員だった。顔立ちも身なりも整っているし、なにより仕事は出来る男だった。けれど口数が少なく、感情を示すことが難しいせいでみんなどこかあいつを倦厭していたのを覚えている。
今さっき、目の前でみた場面は、僕と御成がある社内公募のプロジェクトに応募するための共同企画を頑張ろうと意気込んでいた場面だった。
(そう、あの時の僕達はただ前しか見ていなかったんだよね……)
未来には希望だけが溢れていると、失うものなどなかった僕らはただ夢を見ていた。そして、まだ夢だったものは美しさだけを見せていて、僕とあいつはその美しさを求めた……。
目の前の場面が切り替わる。そこは確か御成の家でふたりで食事をしている場面だった。
あの日以降、僕らは企画に打ち込んだ。公募企画は通常の業務とは別で行うものだったこともあり、仕事が終わった後は御成の家で語り合う関係になった。
『……ここはこういう概念で』
『うんうん、つまりこういうことな』
難しい言葉で話す御成に対して、僕は分かりやすい言葉に書き換えた。御成は頭は良いが理系に振り切り過ぎていて、言葉がどこかちぐはぐだった。
だから、職場ではそれを気にして話すことが難しかったけれどふたりの時は気にせずに話したのであいつが思い描くことに僕は肉をつけていった。
不思議とほかの奴らには理解できないあいつの言葉が、僕にはよくわかったから何も辛くなかった。その日の場面もいつものようにふたりで食事をしながら深夜遅くまであいつの家で時に笑って、時に泣いた記憶が蘇る度に胸を締め付けた。
(そうだ、僕とお前は……)
好きだった歌の歌詞に『俺たちはいつでも ふたりでひとつだった』というのがあるけど、本当にあの時はそういうヤツだって、僕にとって替えのきかないヤツで、あいつにとっても僕もそういう人間だって信じていた。
楽しそうに作業している過去の自身を見つめながら、涙が零れるのが分かった。
(でも、そう思っていたのは僕だけだったんだ……)
熱い感情の後に湧いたのは冷たい相対する感情。
場面が、切り替わる。
今度は、ふたりで立ち上げて企画が大成功したあの日、前世で一番嬉しいと感じたあの日の記憶。多くの人達に賞賛された記憶。
そして……、
『大成功だったな!!』
『そうだな』
大成功で終わった企画の後、いつも通りにあいつ家、けれどいつもは安いピザとかコンビニ弁当が広がっていたテーブルにはいつか僕が食べたいと話していた今半の弁当を拡げて酒を飲んで笑い合う。
あれだけの賞賛があったけれど、他の奴から飲もうと誘われていたけれどふたりだけでどうしても祝いたくて囲んだ食卓、いつものけれど少し贅沢で幸せな空気。
いつものように話していた時、不意に御成が見たことのない真剣な顔で僕を見つめる。
『どうした??』
異変に気付いて首を傾げると御成は重い口をそれでも開いてゆっくりと話す。
『俺ひとりだったらできなかった。けれど、〇〇が居たから成功したんだ。本当に本当にありがとう』
『水臭いな相棒。何をいまさら』
笑ってそう答えた時、御成が僕を突然抱き寄せた。
端正に整った男の顔が眼前に見える。そして……。
『好きだ……、ずっと』
『……』
いつも回る僕の口が言葉を発するよりも先にゆっくりと覆われる。そこに嫌悪感はなかった。いや、むしろそれが当たり前なのだとさえ感じるようなとても不思議なキスだった。
(ああ、そうだ。あいつと僕は……それなのに……)
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