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第一章 因縁の世界へ転生
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見渡す限り、黒、黒、黒。
同じ色の髪を持つ聖女、セイラを恨んではいないが苦手意識がかなり強い。彼女が王太子の周りを引っ付きまわすせいで婚約者であるわたしが社交界で後ろ指をさされたし、愛されているという自信故かマウントをとられたこともあった。聖女のような心優しき人だと称されていたがわたしにとっては苦手そのものだ。
授業終了時刻を数分過ぎて、教師がチョークを置いた音がした。委員長が号令をかけて教室の空気が緩んだ瞬間、わたしは教室を飛び出した。廊下に出ると他のクラスのドアから黒髪の男子が数人出てきて思わず視線を逸らした。髪が黒いというだけでも怖いのに、複数人いるとなったら逃げるしかない。
濃い緑色の廊下を駆ける。
怖い。怖い。周りは知らない人だらけで、スカートは短くて慣れない。すれ違った教師から廊下を走るなと怒鳴られたが足を止められなかった。
一度止まったら恐怖に足が縛り付けられる気がして、わたしはもつれながらも足を動かした。
渡り廊下へと続く角を曲がる。購買へと目指す生徒でごった返していて、しまったと顔が青ざめた。人が少ない通りを求めたのに逆効果ではないか。しかし、移動の流れに逆らってまで踵を返す勇気はない。どうしよう。黒に溢れる視界の先に光が見えた。
いや違う。正確にいえば光ではなく髪を金色に染めた頭だ。それでもわたしにとってはやっと見つけた見知った髪色だった。
「ま、まって」
蚊の鳴くような小さな声で縋るが当然ながら気づかない。だが諦められなかった。空いた距離を縮めるべく少し走る速度をあげる。
その男子生徒は後ろからついてくるわたしの存在に気づいていないようだった。一度も振り返ることなく、すたすたと歩いていく。その迷いない足取りに次第に不安が心を占めた。
どこに行くつもりだろう。
腕時計を確認したところ、あと三分ぐらいで次の授業がはじまる。教室からどんどん離れていく様子に次の授業はさぼるしかないと覚悟を決めた。
男子生徒は立ち入り禁止と書かれた紙が張ってあるコーンの横を通りすぎた。その先は屋上だったはずだ。立ち入りはもちろん禁止されているが彼は躊躇なく階段を登っていく。音を立てないように気をつけながら、わたしもそれにならった。
ドアノブが回る音がして扉が開く。目的地はやはり屋上らしい。姿が見えなくなったのを確認し、わたしも屋上の扉の前へ足を運んだ。
同じ色の髪を持つ聖女、セイラを恨んではいないが苦手意識がかなり強い。彼女が王太子の周りを引っ付きまわすせいで婚約者であるわたしが社交界で後ろ指をさされたし、愛されているという自信故かマウントをとられたこともあった。聖女のような心優しき人だと称されていたがわたしにとっては苦手そのものだ。
授業終了時刻を数分過ぎて、教師がチョークを置いた音がした。委員長が号令をかけて教室の空気が緩んだ瞬間、わたしは教室を飛び出した。廊下に出ると他のクラスのドアから黒髪の男子が数人出てきて思わず視線を逸らした。髪が黒いというだけでも怖いのに、複数人いるとなったら逃げるしかない。
濃い緑色の廊下を駆ける。
怖い。怖い。周りは知らない人だらけで、スカートは短くて慣れない。すれ違った教師から廊下を走るなと怒鳴られたが足を止められなかった。
一度止まったら恐怖に足が縛り付けられる気がして、わたしはもつれながらも足を動かした。
渡り廊下へと続く角を曲がる。購買へと目指す生徒でごった返していて、しまったと顔が青ざめた。人が少ない通りを求めたのに逆効果ではないか。しかし、移動の流れに逆らってまで踵を返す勇気はない。どうしよう。黒に溢れる視界の先に光が見えた。
いや違う。正確にいえば光ではなく髪を金色に染めた頭だ。それでもわたしにとってはやっと見つけた見知った髪色だった。
「ま、まって」
蚊の鳴くような小さな声で縋るが当然ながら気づかない。だが諦められなかった。空いた距離を縮めるべく少し走る速度をあげる。
その男子生徒は後ろからついてくるわたしの存在に気づいていないようだった。一度も振り返ることなく、すたすたと歩いていく。その迷いない足取りに次第に不安が心を占めた。
どこに行くつもりだろう。
腕時計を確認したところ、あと三分ぐらいで次の授業がはじまる。教室からどんどん離れていく様子に次の授業はさぼるしかないと覚悟を決めた。
男子生徒は立ち入り禁止と書かれた紙が張ってあるコーンの横を通りすぎた。その先は屋上だったはずだ。立ち入りはもちろん禁止されているが彼は躊躇なく階段を登っていく。音を立てないように気をつけながら、わたしもそれにならった。
ドアノブが回る音がして扉が開く。目的地はやはり屋上らしい。姿が見えなくなったのを確認し、わたしも屋上の扉の前へ足を運んだ。
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