純愛パズル

久遠寺風卯(ペンネーム)

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第1話 記憶の片隅

記憶の片隅(4)

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               4
 
 巻き戻った時代ときは、西暦二〇〇六年( 平成十八年 )七月下旬。
 一はこの時、歳は三十。
 研修医を終えて、医師になり、東京の病院での小児科内科で診察を受け持つようになっていた。
 時々は違う土地に行き、病院も転々と回り、海外にも飛び回ることもしばしば。忙しい時期まっさかり。
 そんな中、彼は東京からとある大きな屋敷を訪れていた。
 十七年後にも訪れている、ふぶきが住む家だ。
 一はその夏、この遠野の町を訪れていたのだ。
「あのー、すみませーん。」
 一は大きな古民家の玄関前に立っていた。呼び出しのボタンを押すと「はーい、どちら様ですか? 」とインターホンから女性の声がする。
わたくし、先日にお電話で下宿探しの件でご相談しにご連絡致しました。杉浦一と申します。」
 この頃の一は、知らないと土地に来るのは初めてであり、知り合いも誰一人もいない場所で暮らすのも、何もかもが初めての経験だった。
 今日からここで三ヶ月、古民家、又は空き家など宿を借りたりしてある目的の為に居住んで探し出さなければならないある人物を探しに一はここに独りで来た。
 それ故なのか、ド緊張か、心臓に悪いぐらい胸の鼓動の音がドキドキだった。
 気が抜けられない。もし仮にそうなったら声も裏返りそうだ。
 一は、私服姿で背中には大きなリュックサックを背負い、左手には大きな紙袋のお土産。
 そして右手には最新型のノートパソコンを持ち歩いて来ていた。
 こんなに暑い季節だ。熱中症対策に、飲料系のスポーツドリンクや帽子なども身につけている。
「ああ。存じ上げています。今、そちらに向かいますので、少々お待ちください。」
 インターホンの声が途切れると、少しだけ安心感が出る。
「たかが下宿するだけなのに、緊張するなー。」
 熱い陽射しと気温に当てられながら、一は水分補給を取る。
 暮らす場所などを確保するためにはこの土地の大家さんに話を付けなければならない。
 町の人に聞くと、日蔭と言う苗字のある大きな古民家、古びた家屋敷に住む女性に許可、了承や契約などが必要なのだ。タダでというわけにはいかないのだ。
 何としてでも了承を終えなければ、何も始まらない。決意は固いぜ。と真夏の中、拳に力を入れて気合を入れる一は、その日蔭家の玄関前に立ち続けていた。
「しかし、凄いな。この家屋敷……。」
 十七年後よりも、旧家なお屋敷の壁に植物の蔓が伸びきっている。
 人が住んでいるか怪しい。お化けでも出るのではないかぐらいの気味悪い家が印象的だった。
「こういう家なら、あいつが住み付いていそうも……。」
 すると、突然その家から荷物をたくさん抱えた六人の男女が慌ててその家から門である引き戸を開けて、怯えるように飛び出て行く姿を目撃する。
 一は、さっと男女六人のまき沿いに合わないように左側に避け、彼らの様子を窺う。
その者達は「きゃー! 怖い! 」や「別の場所で下宿しようー! 」だの「こんな所に住むのはごめんだー! 」「さいならー! 」と言って家屋敷から飛び出して行く。中には「南無阿弥陀仏ー! 」と「アーメンソーメン! 」などと大声を上げて走り去って行くのを見た。
 彼らは一に気付くことなく、早々と去って行った。
「何だ? 」
 不審に思っていると今度は家からまた人が出て来た。
「ちょっと待って! みんなー! 誤解よ! 戻って来てー! 」
 出て来たのは一とはそんなに年が変わらない女性だった。
 二十六歳で、背中まで髪の長く、顔は美人的でキレイな雰囲気を漂わせる印象だった。
 その女性は着物姿に、たすき掛けをし、黒髪で腰まで長い髪を縦方向の巻きしていた。
 身長は約、百六十センチ。
 でも、性格は以外にもナチュラル的だった。
 その女性は額に手を当てながら溜め息を吐く。
「最悪だわ……。」
 その女性に声を掛けようか、どうしようかと、一は迷いながら彼女の背中に視線を送る。
 慌てふためく一には気付かずに、女性はまた家の中に戻ろうとする。その半ばで、家の前に立っている一に視線がゆく。
「ど、どうも。初めまして、杉浦です。」
「ああ、初めまして、杉浦さん。」
 女性は、一と改めて対面をすると、お行儀よく頭を下げて挨拶をした。
「私、遠野詩暮とおのしぐれと申します。お待たせ致しましてすみません。今しがた、ひと騒動があっていまして……。さ、どうぞ中に。」
 詩暮が一を家の中に招こうとすると同時に、ガラッと玄関の引き戸を開けて出て来た陰険の男性が現れる。
「やっと面倒な連中が出て行ってくれたぜー! キャッホーイ! 」
 あまりにもその男性が異様だったこともあり驚く一だった。
 現代では法事に一緒に来た観月だ。
 なにせ、自分とあまり変わらない年齢の男性なのだが、長髪をポニーテールでひとつに束ねているわ、紫色と所々赤髪にも染めているわ。目付きが険悪。身長も自分よりあり、約百九十センチ。正直、関わりたくないぐらい印象が悪い男だからだ。
 思わず固まって見ていると、陰険な観月が一を見て眉間に皺を寄せながら近付いてきた。
 詩暮は観月に、一を紹介しようと話し掛けよると、彼女は彼の背中に隠される。
「ちょっと! 」と彼女の言葉も聞かずに、一の前に立った。
「オタク誰だ? また宗教とか何か売り物業者か!? 」
「いや、違……っ。」
 一は、観月に否定をしようとした時だった。
 彼の手には一つのバケツに溜まった水を持っていた。
 嫌な予感がし、警戒しながら一は素早く後ずさる。
 そしてまたも突然だった。
 観月は、予想外な行動を起こした。それは、尋ねて来た一に水をぶっかけてきたのだ。
 勘と反射神経が良かったのか、一は水を掛けられずに避けきることが出来た。幸いずぶ濡れにあうこともなかった。危機一髪と言う奴だ。危なかった。
 アスファルトは水巻のように濡れている。そこに自分がいたらと思うと恐ろしかった。
「のわっ! 何だよ一体!? 何すんだこの野郎! あぶねぇな!」
 しかし、それだけでは終わらず、玄関の外まで出て来て塩までかけられて来られた。
 さすがにそれは避けきれず顔にまかれる始末だ。
「ぶはっ! ぺっ、ぺっ! 何すんだっ! 」
 さすがに、塩は避けきれなかった一は、手で軽く払い落としながら、観月を睨む。
 観月は、ふっと苦笑し、人をバカにするよう目で、肩に空になったバケツを回しながら、
 庭の門でもある引き戸を閉めようとする。
 その彼の態度に、一はカチンと頭にくる。
( 何なんだこの失礼な野郎は。いきなり出て来て人に水をまいたり、塩を振りまくなんて何を考えているか知らないが、いい迷惑だ。 )
 ただならぬ二人の険悪な雰囲気に、詩暮は慌てふためく。
「悪いが、うちは変な宗教や押し売りに来る輩は嫌いなんでねー。さっさと帰れ。それから一切この家に足を踏み入れるな。迷惑なんだよ。つーか二度と来るなー。」
 玄関前にある引き戸を閉めながら観月は、詩暮の身体を反転させ、背中を軽く押して彼女を家の中へ戻ろうとする。それを一は必死に止める為に、彼が閉めようとする引き戸を強く掴んで、止める。
「ちょい待ち! 待てぃ! 」
「あ~? 何なんだよテメーは! しつこいんだよ! その手を退かしやがれ! 」
「あんた何か勘違いしているみたいだけど……俺は宗教とか押し売りでもないから。ここに下
宿させてもらおうと頼みに来た者でだなっ! 」
 引き戸は前に進んだり、後ろ戻ったりとの繰り返しで、ガタタタッと何度も行き来する。
 観月と一、二人のいがみ合っての行動からだ。
「けっ、都会育ちの東京モンのテメーの言葉なんか信じられるか! 」
 観月の言動に腹が立ちつつも、一は諦めが悪く、必死に話を聞けと眉に皺を寄せ主張し続ける。
 彼は一の顔をよく見ていなかったのか、改めて顔を窺い見る。
 すると、彼の素顔を見て覚えのある顔であることに驚く。
「こいつは……。」
 思わずそんな言葉が口から出ると、横から耳朶を強く引っ張られ、誰かに大きな声で怒鳴られるのだった。
「観月ーっ! 」
 彼の耳元で怒鳴ったのは、観月の隣に居た詩暮だった。
「グワーッ! 耳が痛いし、うるせーな……っ。何だよ!? 」
 彼は引っ張られた右耳の穴に小指を突っ込みながら、むっと口を尖らせ眉間に皺を寄せた。
 鼓膜がやぶれるかと思うぐらい、キンキンとした彼女の怒鳴り声がうるさくてしょうがない
のか、詩暮から視線を逸らす。
「何だよじゃないわよ! 今から招くお客様になんて真似をしているのよ! 杉浦さんに、ちゃーんと謝りなさい! 」
「客~? こいつがー? 」
 観月は、不審な目で一を見る。
 一は唇を噛みつつも、堪えようと必死に心を落ち着かせた。
 詩暮は観月の手を軽くあしらって、引き戸を引いて開け一を招く。
「もうっ! 次々と問題を起こして。せっかくの下宿人さん達も、あなたのせいで逃げちゃったじゃない! どうしてくれるの!? これでもし、色々の商売に支障が出て赤っ恥を掻いたりしたらどうするのよーっ! 」
 詩暮は後ろにいる一のことにはお構いなく、腰に手を当てて片足で足踏みしながら、隣に立つ観月に注意していた。
「大げさな。たかが四人追い出しただけで……そんな心配いらねぇーよ。」
「六人よ! 」
 何やら騒がしい人達だと一は、じとっと見物するように二人の会話を呆れながら見ていると、そこに玄関から五十代ぐらいの年齢の女性が立っていた。
 現代のふぶきだ。が、歳を偽っているのか六十代。
 着物に襟巻を身につけた雪のように肌が白い女性で、髪型は三つ編みで一つのお団子のように巻いてあり、少しだけ首元に止めきれていない髪が垂れ下がっている。背筋も綺麗で、高齢の人でここまで清楚な姿の人はあまりいないだろう。身長は、おそらく百七十並み。
 ふぶきは扇子を持って、微笑みながら怖い表情で、後ろからバシッと軽く詩暮と観月の叩き、静かに叱りつける。
「こーらっ。家の外で何を騒いでいるのー? お客様である杉浦さんが来ているのに、二人
とも喧嘩ごしみたいなことをして。」
「お義母様……。」
「ふぶきっ。痛いぞ貴様っ。」
 振り返る詩暮と観月は、ふぶきに嫌そうに視線を向けた。
 
            ◆

 一はあれから、ふぶきに家の中に招かれ入ると、茶の間へと案内された。
 テーブルに座布団、いつお客が訪れても良いようにお茶菓子も用意される形となっていた。
「ご挨拶が遅れてしまいました。私、日蔭ふぶきと申します。この家の大家です。杉浦さん、遠慮しないで飲んでくださいね。外は暑かったでしょう? 」
 ふぶきは、冷たいお茶を一に用意した。
 一はきちんと礼儀正しく頭を下げて、ふぶきに挨拶をする。
 彼女が「どうぞ座ってください。」と声が掛かると、一は座布団に座る前に二、三回に分けて前へ進み座り腰を降ろした。
 その後、ふぶきも同じように座る。
「あ、改めてお初にお目にかかります。杉浦一です。お茶をありがとうございます。いただきます。」
 一は処方に気を配りながら、湯呑の蓋を取って、上手く蓋を湯呑の下にある皿の間に差し込んで、お茶を口にした後、彼女と会話する。
「ふぶき……さん、でも暑いのはしょうがないですよ。季節は夏ですから気温は上がりますし。」
「ほほほほっ。でも油断は禁物ですよ。夏の気温をあまりなめていると色々とクーラー病とか熱中症や日射病に夏風邪なったりすることがありますから気を付けて下さいねー。」
 ふぶきは、そんな他愛無い話をしている間、何やら一をじろじろと何度も頭から足まで口説いくらい見られていた。
 何なんだ。この人。と一は、困惑する。
 彼女はまるで何か確かめているような感じだった。確認し終えると、彼女は頷いて返事を返してきた。
「そうそう。杉浦さんは、確かこの家に下宿したいって尋ねて来たんでしたわよね。」
「はい。そうです。」
「えーっと、この土地じゃ見かけない顔だけど……あなた学生さん? かしらー。」
 ふぶきは、頬に手を当てて、一に身分を聞いて来た。
「いえ、医師です。と言っても、私はまだまだ未熟な若手なんですが……。」
 一は、頬を少し人差し指で軽く掻きながえら、苦笑いする。
「まあー、ごめんなさい! 私ったら失礼なこと……お医者様だったんですね。あまり見かけない方だったので、ちょっと戸惑ってしまいましたのー。ほほほほ! 」
 ふぶきは高笑いしながら、一に詫びる。
「い、いいえ、お気になさらず。私の方こそ勝手に押しかけて来たような形でこちらの家に来
て申し訳ありません。」
「そんな謙遜なさらないで。それより、ごめんなさいね。暑い中、ずっとお待たせしてしまって。」
「いいえ。それより、元気な娘さんですね。あの男の方も。」
 他愛ない話をして、少しだけ内心ほっとする程の心の余裕と、緊張がほぐれた感じがした。
「ああ、詩暮はね、実の娘じゃないの。両親が早くに他界して、私が引き取って育てたの。
 下にもう一人、妹がいるの。蕨っていう八歳の子がね。その子は、ちょっと身体が弱くて、き……九州の方で暮らしているの。毎月下旬になったら顔を見せると思うわ。」
「へえ……かなり歳が離れた姉妹なんですね。」
 十七も年が離れた姉妹には驚き一は、どんな子だろうと思いながら頭の中考えていると、
 次は下宿人の話に進んだ。
「さっきの観月くんは、ここの家に住む下宿人なの。杉浦さんとちょうど同い年ぐらいですかね。他にもライムちゃんって十七歳の子も下宿しているのよ。」
 ふぶきは、お茶ではなく甘酒を手にして口を付けて話す。
「本当は……あと六人ぐらいいたんだけど、どういう訳か出て行っちゃったのよー。」
 深い溜め息をふぶきが吐くと、詩暮が手続きの書類を手に持って茶の間に入って来た。
「観月が勝手に追い出したの。気に入らなかったとか、どうとか言って。」
 詩暮は書類をふぶきに手渡しながら話し掛けた。
「そうだったのー。」
 書類を詩暮から受け取ると、さっそくばかりと下宿の交渉話を持ち出した。
「で、世間話はこれくらいにして……話は変わるけど。 杉浦さんはお電話で、この近くの何処か古民家に下宿したいと……言っておられましたけど、大家であるこの私に許可契約をしてくださらないと泊まれませーん。」
「そ、そうですよね……。」
 一は、溜め息が出そうだったが、唇を噛んで押し止める。
 大家の前で溜め息や、欠伸、嫌そうな顔をするの無礼な振る舞いだ。耐えなければと、
顔も背筋をよく保つ。
( やはりどういった理由で民宿しに来たのかが問われるところだよな。 )
 何て理由を付けて下宿するのを説明しようかと、思考を巡らせる。
「まあ、下宿するのには構いませんよー。ただ、残念ながら他の下宿先がいっぱいなのー。
 開いていると言えば、ここの屋敷、いや下宿尞、お部屋は開いておりますから。
 ここでいかがですか? この近くに旅館の方、宿泊がありますけど、最低でも一週間しかお泊り出来ませんので、あまりお勧めできません。」
「ここ……に、ですか? 」
「そんなに固くなる必要はないしー。ここには、他に下宿している人が居ますし。
 見かけは立派なお金持ちみたいな家柄だと思うかもしれませんが、元々は大昔から伝わる下宿屋だったのを、何十年か前に家屋敷にリフォームしただけですから。」
「すごい歴史ある家なんですね。」
「でも、部屋も敷居も余っていてー。ほらの昔ながらの家だから。家を壊すのにも大変だし、建て替えるのもまたかかるから、中と外の壁だけをちょっとだけね変えたのよ。ほほほほ。」
「それにしても温かみのある立派な家です。」
「あら、嬉しいわ」
 ふぶきは手の甲を口元に当てながら、高笑いをしながら微笑む。
「……。」
 詩暮はふぶきを見ながら、目を細めて静かに溜め息をこぼす。
 お世辞言葉を言われると誰彼構わず、調子に乗って喜ぶところは単純だなと思いながら、朱肉や印鑑などを用意する。
「でもーその前に、どういった理由と経緯でこの家に来たのか詳しく教えてくれるかしらー?」
 一は、ふぶきとのやり取りの中で、何らかの違和感を持つ。
 警戒するように、じーっと彼女の様子を見る。
 来た時から気になっていたことがある。
 ふぶきの格好だった。
 夏に着物を着るのは別に変ではない。しかし、何故に首の周りに襟巻、いやマフラーを身に着けているのだろう。暑くはないのだろうか。
 それに、六十代にしてはあまり皺がない気がする。それに顔にシミ一つもない。おかしい。だんだんと年を取る人が、あんな自分と変わらない二十代の観月を、説教だけなら未だしも多少の体罰で彼を大人しくさせるとは、彼女はただ者ではない。と一は悟る。
 まぁ、だんだんと健康寿命が延びていく時代だし、人によっては皺が出来にくい人もいるだろうから、あまり気にすることはないのだろうけれども。彼女がマフラーをしているのは、冷え症だからかもしれないと一人で納得する。
 しばらく沈黙の空気が漂っていたせいか、ふぶきは「ん? 」と疑問の声を出す。
 首を傾げるふぶきに、はっと一は気を取り直して、うまく伝えられるように口を開いて、彼女にここに来た理由と目的を明かす。
「実は……。」
 一つ目は、人探し。二つ目は、病を治せる特効薬。を探し求めに来たこと説明した。嘘を交えて。
「人探しをねー。妹さん、お可哀相に……。」
 医療の薬をいくら使っても目が覚めない。十年前から植物状態のように眠り続けている九つ下の妹、明香梨は十九歳。でも、二ヶ月ほど前に急変し、他の医師からは二十歳を迎えられずに体調を崩し、心臓が弱り命を落とす可能性があると宣告された。今はお灸処置で、病院に入院しながら点滴などで対処して、命を繋いでいることを伝えた。
 医者になって色々と妹を目覚めさせるために、ここまで頑張って来たが、結局は見ているだけで何も出来ず仕舞い。そんな時に、知り合いの人が『命を繋いでくれる、目覚めさせてくれる』又は『その人を幸せに導いて、災いを取り除いてくれる』という人が、この地に居るかもしれないと教えてくれた。特効薬の薬も持っているかもしれないと、教えてもらったことをふぶきに、話して聞かせ続けた。
 ふぶきは一の話に、親身になって耳を傾けて聞く。
「……。」
 でも、その一方で彼女は、何かを警戒するような眼差しも僅かに合った。
 一の会話には、嘘がない。だがその反面、話の 一部に引っかかる。僅かに棘があるような言い方だったからだ。
「で、まあ、仕事はしつつも合間を縫ってここで滞在三ヶ月、人探しに専念しょうかと思い到ったしだいで……。」
 一は、淡々と何とか答えることが出来た。嘘を交えて話すのは難しい。
 でも何とかして妹を助けたいのは事実に変わりはない。何としても探し出さなくては。
 ある『人物』を必ず探し、『奴』の前に連れて来なければならない。
「こう言ってはなんですけど当てのない人探しの旅みたいな感じで、すぐに見つかりそうもないので、ここしばらくはどこかの民宿で生活しながら暮らそうかと考えていたんです。」
 ただ親身に話を聞いてくれていたとしても、断られるかもしれない。もっと強く、信念が伝わるように交渉しなくてはと、深く頭を下げて、一は願い出た。
「どうか、お願いします! 私、この土地に居るかもしれないある人を探し出して必ず会わなければならないんです! 僅かな可能性でも手掛かりを、だから、頼みます! 」
 ふぶきは、目を細めながら首を垂れる一を見つめる。
 彼には警戒する面がある。何故ならそんな人物はこの町で見たことも聞いたこともないからだ。他に心当たりがあるとすれば……。
 彼女は、隣に居る詩暮の方に目を向ける。一には気付かれることなく。
「……。」
 詩暮は、用が済むと襖を開けて廊下へ歩く。
 ふぶきは、彼女がいなくなるとまた一の方に向き直る。
 誰か、知り合いの者に聞いたと言うが、信じる気になれなかった。だが、妹の命を案じていることは嘘ではないと思った。
 見極めて見るか、この男。と思考を巡らせながら、ふぶきは微笑み口を開いた。
「んー。なるほど! 大変事情があるのねー。つまり! この村に居る知識を蓄えた物知り人を探しているわけねー。定年退職した元お医者様とか? まぁ、どんな方を探しておられるか存じませんが、協力してほしいことがありましたら、出来るだけあなたの力になってご協力致します。
 名前とかが分からなくても、何かその方の特徴とか教えて下されば何かしら得られると思いますよ。きっと! 」
「それって……。」
「はい! ここで民宿の下宿人として認めまーす! 」
 ふぶきは詩暮が用意してくれていた契約書類を一に見せた。
「こちら『民宿契約書』をよく読んでサイン書いてくださーい! 」
 ふぶきは、書類を一に渡す。
 一は頭を上げて、彼女から安堵して書類を受け取る。
「は、はい! ありがとうございます! でも……私一人で大丈夫ですから、お構いなく……。」
「あら、以外に謙虚な人なのねー。」
 ふぶきは、くすくすと微笑みながら、また甘酒を吞む。
 一は、書類に書かれた文章を良く目に通して、自分の名前をサインする。
 記入する途中、手を止めてふぶきに話し掛ける。
「あの、民宿代の事なんですけど、この地にある小さな病院と、東京の病院で働いて来た分の給料で払いますから。」
「はーい。分かりました。でも本当に大変ね。杉浦さんは、人探しをしながらこちらに行ったり来たりと、知識に体力、それに時間も費やさられるなんて本当にお忙しいことでしょう。」
「ええ……、自分でもそう思います。」
 一が書類にサインをしている間、ふぶきに色々な話をしていると彼女はさらっと、とんでもない話題を呟いた。
「でもねっ。私も実は同じようなものなのよー。こう見えて! この家の大家でもあるけど、ここから少し離れた『灯』旅館の女将の仕事もしているんです。ほほほほ! 」
「……。」
 突然のふぶきの一言に沈黙してしまった。
 この近くにある『灯』温泉旅館の女将を務めていると言う言葉にただただ呆然となった。
「えぇぇぇぇぇ!? 旅館の女将!? さん……なんですか? 本当に!? 」
 思わず、サインしていた最後の字を、ビーっと長く角まで伸ばしてしまう破目になるぐらいの驚愕だった。
 ふぶきは一の驚き顔に何一つ動じることなく冷静で話していた。
「本当でーす。って言っても、あまり有名じゃないの、小さな雑誌に載るくらいでね。
 他のホテルや老舗の温泉とは違うの。インターネットとかには掲載されてないの。」
 片方の手の拳を作って、二本指を立て家の事情をさらに詳しく説明しだした。
「先程お会いになった観月くんはね、旅館の板前仕事をして働いているの。あと、ライムちゃんね。その子も旅館仲居見習いとして働いているのよ。二人ともここで下宿しながら毎朝旅館仕事に出かけているの。」
「なるほど……それは、とてもお忙しそうですね。」
 一は、ふぶきを見た後、書類に目を通す。と、やはり名前どころか、長い線が一直線にはみ出るくらい書く形になっていた。これでは書類にサイン出来ないな。と、落ち込んだ。
 新しい書類をもらって書き直さなければ。でも、新しいのをくれるだろうか。
 不安を感じつつ、この部屋を見渡す。
( だからこの家だけ普通の民家とは違って旧家な家柄なのか。 )
 何となく、この家はただの家ではないことが一には理解出来た。確かに大家としてだけではやっていけないよな。旅館の仕事以外となると、農家の仕事だけではやって行けない面もある。納経の仕事でもそうだ。都会での就職は多くても、こういった田舎町ではそう言った就職を探すのは難しいのだろう。
 一がそんなことを思いに耽っていると、何やらドドドドドッ。と何やら、部屋の床が揺れる音がしだす。
 地震とは違う揺れ、誰かが、一とふぶきの二人が居る部屋に向かって来ている足音が近付く。
「ふぶき様!! 」
 スパーンッ! と勢いよく茶の間の襖を開けて、一人の女性が現れた。
 現代のライムだ。
 肩ぐらいまでの長さのあるふわふわなパーマをかけてクリーミな茶色に染めた髪をした十代後半ぐらい。前髪と左右横だけ所々三つ編みしていた。目はカラーコンタクトか青い目をしていた。外国人、ではなく日本人女性だ。身長は158センチ並み。あまり変わらない。
「び、びっくりしたー。」
 突然茶髪の彼女が大きな声で入って来て、襖も大きな音を立てるほどだった故、耳にも心臓にも悪いほど一は驚いた。
「お帰りー! ライムちゃん。どうしたのー? まだ旅館仕事中じゃなくて?」
 どうやら、襖を開けて入って来たライムが、この家に下宿している子らしい。
 ライムは一が居ることはお構いなしに、ふぶきの所へ歩いて行き、彼女に尋ねる。
「観月様は!? こちらへは戻っていらっしゃりませんか!? 旅館内全部心当たりのある所は探したんですけど見当たらないんですよー。」
「たぶんこの屋敷のどこかにいるんじゃないかしら。今頃おやつ時の時間だしね。どっかでつまみ食いでもしてるんじゃない? 」
「なら台所の可能性大ですね。ああもう! 」
 ふぶきはあらあらと困った顔をする。
 ライムも観月がいないと旅館に帰れないと一人焦った様子で頭を抱える。
「あれ? お客様ですか? 」
 ちらりと目線を送ると、やっと一が居たことを理解するライム。
「あ、どうも。こんにちは。お邪魔しています。」
 恐縮するようにライムに頭を下げて挨拶すると彼女は、ずざっと後ずさり、怯え震えているのかそれとも威嚇するような表情を作っていた。まるで狼みたいな猛獣に見えた気がした。
 ふぶきの背後に隠れ、着物の袖にしがみ付いて警戒している様子も窺えた。
「あのー。」
「先程話した下宿人の女の子。この子がライムちゃんよー。」
 いや、それは理解してますが。と目でアイコンタクトのように一はふぶきを見る。
「ライムちゃん、この方は杉浦さん。今日から新しくこの家に一緒に暮らすことになった下宿人さんよー。」
「げげげっ、また今度も、人間の男ではないですかっ! っていうか、ライムは聞いてないんですけど……一体どういうことなんですかー!? 」
 ライムは一には聞こえない小声でふぶきと話す。
 ふぶきは、背後に隠れる彼女を見、大丈夫よ。と落ち着かせながら話す。
「かくかくしかじかで、私達の家に下宿させてあげたいと思って、今手続きしているの。」
「ここではなくても他に民宿あるじゃないですかー! 」
「三ヶ月ご希望なんて人、あまりないケースみたいだから、どこも断られているらしいのよ。可哀想じゃない。それに、部屋はいっぱい余っているし、いいじゃない! それに困っている人を放っておけないし……困った時はお互い様って言うじゃないー。ほほほほっ。」
「何を言うちょうなことを……。」

          ◆

 その一方。このお屋敷の台所では、鼻歌を歌いながら呑気に詩暮は一人で料理をしていた。
 蒸し暑い中、彼女は昼三時、晩御飯にはまだ少し早い時間に作っている。
 そんな詩暮の後姿を観月は、目を細め料理の品を並べる台に肘をついて立ったまま、伝統料理、遠野名物である鎌焼きもちを無言で手に取って食べていた。
「出来た! まめぶ汁! あとはサラダを盛り付ければ夕食はこれでばっちり~。」
 観月は、口に入れたまま「ふごい。ふごーい」と彼女を褒める。しかし、汚いし、何を言っているのか分からない。たぶん「すごい、すごーい。」と言っているには違いないが、口に入れてしゃべらないでほしいものだと、詩暮は思いながらサラダも盛り付けを終えると、五人前のおかず料理に奔走する。
 詩暮の手作りハンバーグを作るため、合わせびきの生肉を手でこねる。かと思えば深鍋でパスタを茹でる色々なことをしている。
 ハンバーグの上に乗せてかけるソース、とろりとしたキノコのデミグラスソースも一から調味料を作る。レストラン並みに近い料理を一人で作るのは大変なことだ。
「あ、タイマーセットもしとかないとね。」
 料理の品を並べる台の裏近くに設置してある炊飯器の中に、洗った五合の米がセットされているか確認し、時間設定する。
 四時間後、夕方の六時に炊ける予定にした。
「あと三十分ぐらいで終わらせられるかなあ。 ねぇ、仕事サボるくらい暇なら手伝ってよ。観月。」
 詩暮は、炊飯器から顔を上げ、観月に声を掛けながら、料理の品を並べる台に置いていた一つのお菓子皿に目が留まる。
「え……な、ない!? 何で!? 」
 一人用でお客様用のお菓子皿はあったが、乗せてあったお菓子が忽然と消えていた。
 すると、何事もないような顔をして、観月は冷蔵庫に向かい、開けてラムネを取り出して飲んでいた。
「あ~、美味しかった。こばらが空いていたんだよ。」
 詩暮が用意していたお菓子を勝手に食べていた犯人はすぐに目星がついた。
 それは観月しかいない。間違いないと、詩暮は顔を真っ青にして、彼を問い詰め、胸倉を掴んだ。
「ちょっと~! 何で観月が勝手にそれを食べているの!? 鎌焼きもちを!」
「え? これ好きなようにいつでも食べていい感じで置いてあったんじゃねぇの? 」
「そんなわけないでしょ。しかも、あの皿よく見なさいよ。お客様用なんだけど! 」
「悪い。でも、いいじゃねぇか……。もう少しすりゃー夕食だしよー。杉浦の場合なんて、今日から三月みつきここで暮らすんだ。その間にいつでも作って食わせられるだろ? 」
「あなたね! 未だこんなところで油売ってつまみ食いする暇があるなら、さっさと旅館に戻って板前仕事しなさいよ! 」
 詩暮は胸倉を掴んだまま軽く彼の身体を後ろ前と交互に揺らす。
 それでも観月は、まぁまぁ落ち着けとらへらとした態度は変わらずじまいだ。
「それより、お湯が沸騰し過ぎて、鍋から噴きこぼれているぞ。」
 詩暮は、火からちょっと目を離していた隙に、茹でていたパスタのお湯が少しだけ吹きこぼれた。幸いそれだけだったが、火事にでもなったら大変だ。
 深い溜め息を吐くと詩暮は、一端すべて火を止め、額に手を当てる。
「あなたといると以上に疲れるわ。」
 どんよりと暗い顔をしている彼女に観月が「なあ」と呟いて、質問し出した。
「それよりお前、大丈夫なのかよ……。また近いうち『あの日が来ること』忘れてんじゃねぇだろうな? 」
 その問いかけに彼女は、目を細めて口を開く。
「忘れてないわよ。心配ないって。三ヶ月なんて余裕よ。」
 そう言って、また詩暮は料理に取り掛かる。
「そうだと願いたいねえ。」
 観月は壁に立て掛けてあるカレンダーを一枚だけ軽くめくる。
 八月の御盆の期間に『遠野市の花火大会』と、しるしやメモが書かれてある。
 観月は、額に皺を寄せながらしばらく見つめていた後、乱暴にめくったカレンダーを下ろす。
「身体のことだってあるんだ。あまり無理するなよ。」
 氷を口の中に含み、片方の頬に氷を入れて、プクッとコブのように作って観月を睨んだ。
「なっ、俺はお前を心配して言ってるのにっ! 」
 そんなやり取りを二人がしていると、ガラッと台所の付近の出入り口の引き戸が開いた。
「わー……じゃなかった。詩暮。ちょっといいかしら。」
 そこには茶の間にいたはずのふぶきが顔を出していた。
「何? お義母様。」
 詩暮がふぶきに近付くと、一端台所から出るように指示をする。

                  ◆

 誰もいない廊下へ出ると、両手を合わせてふぶきが「ごめんね。」と詩暮に謝って来た。
「実はね、急用で『灯亭』にお豪い方々のお客様方が大勢来ているらしくて、ご挨拶しなくてはいけなくなったの。だから、杉浦さんのことあなたが代わりにこの家のこと案内ちょうだい。お願い! 」
「分かったわ。」
 台所の暖簾隙間から二人の会話を聞きながら観月は両腕を前で組んで聞き耳を静かに立てていた。
 詩暮は、ふぶきが立ち去ると一がいる茶の間へと足を運ぶ。
 襖を開けて「おまたせしました。」と、言って入ると早々に、ライムが詩暮に抱きついた。
「助かった! 主~っ! 」
「どうしたのよ? ライム。」
「人間である杉浦様と、二人でいるのは空気が重くて。ふぶき様にここに居るように命じられていましたし。」
 とりあえず、人様の前でこのような突然抱きつくのは正直やめてほしいと、苦笑しながらライムをゆっくりとあしらう。すると、一が首を傾げて「主? 」と疑問を呟いた。
 詩暮は顔を少し引きつらせながらも、すぐに表情を戻し、ごまかすように一に視線を戻す。
「聞き間違いでしょう。この家の主は私ではなくて、義母はは……ふぶきさんですから。」
「そうですよね。」
「ちょうと急の用事が入りまして、ここからは私がこの家の事とか、色々案内しますね。」
「はい、よろしくお願いします。」
 詩暮は、ライムの耳元に小声で台所に観月が居ることを伝える。
「いい? 今から杉浦さんを部屋の中を案内するんだから、大きな騒ぎを起こさないでね。」
「わかりましたわ。」
 ライムが台所に静かに向かう姿を目で追いながら大丈夫だろうかと思いながらも、詩暮は一と一緒に茶の間から出で、まずは二階部屋の中を色々案内する。
 一階から二階まで部屋があること。で、もう一軒、お隣に別の屋敷に通じる部屋があるこを伝える。結構敷地が広い故、今日は皆がよく使う範囲の今居る茶の間やら台所、居間、寝室等の一軒の家の中を一に説明した。あと、入ってはいけない場所も彼に伝える。
「えっと、杉浦さんの部屋は二階の弐ノ弐号室になります。こちら杉浦さんの部屋の鍵になります。」
 詩暮は淡々と説明しながら、一の自室になる部屋を空ける。
 意外に殺風景の部屋だった。テレビはないが、茶菓子やポット、卓袱台程度があるだけだ。
 幸いにも壁の下に二カ所コンセントがある。これでなんとか仕事が出来る。と一は安堵して、荷物を置く。
「トイレはこの二階の右側にありますから。男女別々に一つあります。洗面所等は左側に。」
 廊下に出て詩暮は、次々と分かりやすく話す。
「この二階は、杉浦さんだけではなく、ライムちゃんと観月さんもいらっしゃいますので、もし会ったら仲良くしてください。」
「はい。わかりました。」
「あと、申し訳ないんですけど、この家古くて、お風呂が釜風呂なんです。」
「めずらしいですね。」
「もし、おいやでしたら徒歩で行ける『灯』温泉にでも浸かって来られても構いませんが……今夜はどうされますか? 」
「今日は、温泉の方で。」
「わかりました。」
 詩暮は、一を案内しながらも腕時計を暇さえあれば見ていた。日差しと外の景色もそわそわと見ながら平静を装っていた。
 一は、そんな彼女には目もくれず、二階の部屋中を興味津々に見て回っていた。
 すると、一番の目的を忘れるところだったと思い、一つあるかどうか尋ねてみた。
「あの、書庫とかないですか? この家に。」
「え? ああ、ありますよ。」
「本当ですか!? 」
「でも、お隣の屋敷になりますし……結構古い書庫なので、面白くないと思いますが。」
「構いません。ちょっと、昔の医学についてとか色々知識を入れたいなあと思って、気分転換に。」
「じゃあ、また後日案内しますね。」
 一通り、二階を案内終えると今度は一階へとまた戻って来て、そこを歩き回っていない部屋を改めて詩暮が一に説明した。
「一階には表と裏の入り口があって、一軒、計三か所あります。もう一軒も同じになっています。」
 台所の近くにある裏口が一つ。お客様が来る表玄関、一が来た時の場所。そして、家の駐車場倉庫に出られる裏口だった。
 以外に駐車場倉庫にある裏口は台所から少し離れた所だった。
 一は、台所に設置してあるカウンターっぽいテーブルに立て掛けてあるホワイトボードを見つける。
 詩暮はその彼の様子を見て、また淡々と説明した。
「台所では、シフト制で順番に料理担当があって、それ以外にも家の中と外掃除、あと洗濯、お風呂掃除とかすることになっています。」
 ホワイトボードで、それぞれ名前があり、今日のすることがきっちりと書き記してある。
「今日は、杉浦さんは初めて来たばかりですし、お疲れでしょうから、明日からしていただければいいですから。ごゆるりとお過ごしください。」
「わかりました。ありがとうございます。」
 すると、何やら台所の隣から騒がしい声が聞こえて来た。
 ドカーンッ! とか、ガシャーン! とか大きな騒音が響いた。
「ちょっと、失礼します。」
 台所から居間に繋がる部屋へと足を運ぶ詩暮の後を追うように一も早足で歩いた。
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