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3《レンズ》
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春樹は家に帰るのかと思ったけど、そのまま僕の家まで来た。確かに世界はぼやけていたけど、さすがに何があるかはなんとなく分かるから平気だったのに、春樹はおせっかいなぐらいのエスコートをしてくれた。
「俺も入っていいの?」
「うん。部屋にいて」
相変わらず娯楽になるようなものは少ない。何年も前の本を春樹はまた読むのだろう。シャワーを浴びてきていいという言葉に甘えて、部屋を後にした。
ドロドロした気持ちが一緒に流れて、頭の中には春樹の姿だけが残った。笑っている。僕の中の春樹はいつも笑顔だった。現実と違うのは好きだというと、必ず俺も大好きだと返してくれる。こんなことを考えているなんて、本人にバレたらめちゃくちゃ恥ずかしい。
なんとか気持ちを抑えて部屋に戻る。やっぱりいつものように体育座りをしながら、本を眺めていた。
「じゃあ純、眼鏡買いに行こうよ。今ってめっちゃフレーム軽くなってるらしいよ」
「そうなの? あ、だったらこれじゃダメだな。着替えないと……ちょっと待ってて」
パジャマ代わりの伸びたTシャツを脱ぐ。なんだか変なことを考えてしまいそうだったので、すぐに着替えを終えた。
駅まで歩いてデパートに向かう。なんだかデートみたいだと思ってしまった。ぼんやりしているから周りの目が気にならないのか。だったらこのまま見えなくてもいいのかもしれない。
「わっこれ凄い! 敏腕秘書みたい。あ、これ似合うんじゃない?」
次々と眼鏡を渡される。その度に笑ったり感心したり、はしゃいでいた。よく見えなかったけど、春樹がこれがいいという物を買った。
「ごめん。財布忘れてて……」
「良いって。そんなに高くないし、なんならプレゼントってことでもいいしね」
「そんな……後でちゃんと返すから」
「ふふ、純はそう言うと思ったよ。ほらできるまでちょっと他のところ見てこよう」
ぼやけていても分かる。春樹が今どんな顔をしているのか。手を伸ばしてこちらを見る時は、あの記憶の中の一番好きな顔なんだ。
「ねぇ明後日さ、なんか映画観ない? この上が映画館みたいだよ」
次の休みに向けて上まで登った。
「あーここまで来ると今見たくなっちゃうね。ポップコーンだけ買っちゃおうかなぁ」
「これ、CMで見たやつだ。結構評判いいみたいだね」
「俺も気になってた。じゃあそれにしよっか。楽しみだな」
ツンと目頭が熱くなった。春樹の変わらない優しさは暖かくて、反則だ。誤魔化して顔を背けた。
数時間暇を潰して、出来上がった眼鏡を受け取る。新しいレンズは少し強くてくらっとしたけど、遠くまで良く見える。
「今日はありがとう」
「んーん、純の役に立てて嬉しいよ。次も楽しみにしてるね」
手を振って小さくなる背中を追いかけそうになった。捕まえて、大声で叫びたかった。抱きしめてありがとうと言いたかった。いつもそうだ。帰り道が辛い。
眼鏡を外して眺めてみた。春樹が似合うと言ってくれたスクエアのフレーム。真っ黒の奴からべっ甲のような、茶色が少し入った奴になった。丁度出ている夕陽に当ててみると、それと馴染むように輝いて見えた。
この眼鏡を気に入っていた春樹の言葉がまるで、自分自身に対して言われたことなんじゃないかと錯覚した。この頭の中の都合のいい人物は一体誰なんだろう。
僕はいつになったら、春樹に相応しい人になれるのだろう。もう遅いのか。このまま汚れていくだけなら、手遅れかもしれないけど、まだ何か残っているなら……今のうちに。春樹が僕を見てくれているうちに、伝えたい。世界の何よりも、愛していると言いたいんだ。
「俺も入っていいの?」
「うん。部屋にいて」
相変わらず娯楽になるようなものは少ない。何年も前の本を春樹はまた読むのだろう。シャワーを浴びてきていいという言葉に甘えて、部屋を後にした。
ドロドロした気持ちが一緒に流れて、頭の中には春樹の姿だけが残った。笑っている。僕の中の春樹はいつも笑顔だった。現実と違うのは好きだというと、必ず俺も大好きだと返してくれる。こんなことを考えているなんて、本人にバレたらめちゃくちゃ恥ずかしい。
なんとか気持ちを抑えて部屋に戻る。やっぱりいつものように体育座りをしながら、本を眺めていた。
「じゃあ純、眼鏡買いに行こうよ。今ってめっちゃフレーム軽くなってるらしいよ」
「そうなの? あ、だったらこれじゃダメだな。着替えないと……ちょっと待ってて」
パジャマ代わりの伸びたTシャツを脱ぐ。なんだか変なことを考えてしまいそうだったので、すぐに着替えを終えた。
駅まで歩いてデパートに向かう。なんだかデートみたいだと思ってしまった。ぼんやりしているから周りの目が気にならないのか。だったらこのまま見えなくてもいいのかもしれない。
「わっこれ凄い! 敏腕秘書みたい。あ、これ似合うんじゃない?」
次々と眼鏡を渡される。その度に笑ったり感心したり、はしゃいでいた。よく見えなかったけど、春樹がこれがいいという物を買った。
「ごめん。財布忘れてて……」
「良いって。そんなに高くないし、なんならプレゼントってことでもいいしね」
「そんな……後でちゃんと返すから」
「ふふ、純はそう言うと思ったよ。ほらできるまでちょっと他のところ見てこよう」
ぼやけていても分かる。春樹が今どんな顔をしているのか。手を伸ばしてこちらを見る時は、あの記憶の中の一番好きな顔なんだ。
「ねぇ明後日さ、なんか映画観ない? この上が映画館みたいだよ」
次の休みに向けて上まで登った。
「あーここまで来ると今見たくなっちゃうね。ポップコーンだけ買っちゃおうかなぁ」
「これ、CMで見たやつだ。結構評判いいみたいだね」
「俺も気になってた。じゃあそれにしよっか。楽しみだな」
ツンと目頭が熱くなった。春樹の変わらない優しさは暖かくて、反則だ。誤魔化して顔を背けた。
数時間暇を潰して、出来上がった眼鏡を受け取る。新しいレンズは少し強くてくらっとしたけど、遠くまで良く見える。
「今日はありがとう」
「んーん、純の役に立てて嬉しいよ。次も楽しみにしてるね」
手を振って小さくなる背中を追いかけそうになった。捕まえて、大声で叫びたかった。抱きしめてありがとうと言いたかった。いつもそうだ。帰り道が辛い。
眼鏡を外して眺めてみた。春樹が似合うと言ってくれたスクエアのフレーム。真っ黒の奴からべっ甲のような、茶色が少し入った奴になった。丁度出ている夕陽に当ててみると、それと馴染むように輝いて見えた。
この眼鏡を気に入っていた春樹の言葉がまるで、自分自身に対して言われたことなんじゃないかと錯覚した。この頭の中の都合のいい人物は一体誰なんだろう。
僕はいつになったら、春樹に相応しい人になれるのだろう。もう遅いのか。このまま汚れていくだけなら、手遅れかもしれないけど、まだ何か残っているなら……今のうちに。春樹が僕を見てくれているうちに、伝えたい。世界の何よりも、愛していると言いたいんだ。
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