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26〈不確定〉
三上side《5》
《なんだかんだ続いていたメールが来なくて寂しいです。移動のついでに先輩のクラスを覗きに行きましたが、見当たらなかったので、もしかしてお休みされていますか? だとしたらこんなワガママを言ってすみません。
そういえば先輩と趣味が合いそうなやつがいますよ。今度良かったら話してみてください。僕とも波長が合うので、きっと先輩とも良い仲になるんじゃないかと思います。お休みされていなくても、最近は寒くなってきたので気をつけてくださいね。》
返事が来なかったのは噂のせいか、別の誰かを紹介すると言ったからか。このメールが嘘だという可能性は信じないのだろうか。
そんな回りくどいことはしないのが普通だけど、こちらを信用してくれているのかもしれない。そして噂を聞いていたら、多分そいつのことをここに当てはめるはずだ、一度ぐらいは。
今日は当番があるから休んでいなければ、先輩が誰かと変わっていなければ会える。例え無視されたとしても、表情から返事を貰える。
「先輩、こんにちは」
来ていたことに驚いたけど、わざといつも通りに声をかけた。何も無かったかのように。
でも先輩の顔は晴れなかった。携帯も本も持っていない。静かに腕を組んでいる。
「なんだか難しい顔をされていますが、何かありましたか? あんまり姿を見られなかったので、お休みかと思っていました。体調を崩されていたなら、そんなときにメールしてすみません」
「……っ」
「僕の文章が悪いのか、先輩が見落としてしまったのかは分かりませんが、お返事をいただけなかったので勝手に言いますよ。先輩に紹介したいのは僕の恋人です。今度の人はわざと付き合ったとか、他の人に嫉妬させたいとかじゃないです。ちゃんと好きになったんですよ、男の恋人ですけどね」
さすがに驚いたのか、やっとこっちに向いてくれた。もう自分は癖で微笑んでいるのか、ただ面白いのか分からずに笑ってしまう。
「ああ、こんな話ばっかりしてすいません。いつも面倒なことに巻き込んでしまいますね。でも先輩にお話があるので、これが終わったら時間を貰えますか? もう少しだけ付き合ってください」
明らかに身が入っていない先輩に変わり、いつも以上に利用者のいない暇な時間を終わらせた。
あれきり一言も交わしていない先輩を連れて、暗くなった下駄箱まで歩く。他に生徒はいない。外に出て、目立たない場所に連れていった。
「……今度はどう思いましたか? 気持ち悪いですかね。まぁ最初はどうでもいい奴でしたよ。ストーカー紛いのこともしてたし。でもそいつがだんだん自分と似ていることに気づいて……それから好きになったんだと思います」
「……俺には、関係ないだろ」
また目を合わせてくれない。一呼吸おいてゆっくり、はっきりと伝えた。
「ありますよ。だって……僕は先輩のことが、好きなんですから」
「……はっ?」
「好きだったんですよ。一年前から。初めて一緒に居て心地良い人でした。楽、でした。僕はどうやら心のパーソナルスペースがとても狭いようです。両親に反抗するつもりでここに入学したら、さらっと突き放されまして、それから今まで以上に何に対しても興味を無くしていきました。それは人間関係という部分が一番大きかった。皆どうでも良かった……先輩もそうだったんじゃないですか。だから波長が合ったんですよ。触れられたくない部分をお互い触れないようにして。……でも僕が壊した。好きになったから、ワガママで壊しました。彼女を作ったのも、先輩に気にされたくて……、なのに……っ」
胸から抉り出そうな何かを必死に押さえた。呼吸が不規則になる。
「先輩のこと……好きじゃなくなりそうなんですよ! 嫌いじゃないけど、自分の中で熱が冷めていくのが分かる。どうしてだ、あんなに……好きだったのにっ! 見てるだけで、話せただけで嬉しかったのに……っ、時間が経てば変わるんですか? その時の気持ちは嘘になるんですか? あの頃はって……冷静になったり、経験を重ねていく内に、この時のことはダメだった思い出になるんですか? なんで好きとか嫌いとか、気持ちが変わっていくんですか。 ずっと好きでいたいのに……何かがせき止めている。好きと嫌いが……同時にいたら、どうすればいいんですか……っ」
叫ぶうちに勝手に涙が出ていた。こんなこと望んでいないのに。
「僕は、自分が嫌いで嫌いで……なのに傷つきたくないっ、結局は自分しか好きになれないんですよ……嫌いと好きは反対じゃないんですか! 似た部分があったから、そんなところが大嫌いで愛おしくなる……っ、また嫌いになったり、好きになったり、ぐちゃぐちゃだ。……どうしたら、何をすれば母と父は僕を好きになってくれましたか? 受験に落ちても、どこかで期待してた。最後の賭けだった。それは……全部僕の負けだった。だからもう嫌だ、そんなものに……不確定な感情に振り回されたくない……!」
「三上……」
《なんだかんだ続いていたメールが来なくて寂しいです。移動のついでに先輩のクラスを覗きに行きましたが、見当たらなかったので、もしかしてお休みされていますか? だとしたらこんなワガママを言ってすみません。
そういえば先輩と趣味が合いそうなやつがいますよ。今度良かったら話してみてください。僕とも波長が合うので、きっと先輩とも良い仲になるんじゃないかと思います。お休みされていなくても、最近は寒くなってきたので気をつけてくださいね。》
返事が来なかったのは噂のせいか、別の誰かを紹介すると言ったからか。このメールが嘘だという可能性は信じないのだろうか。
そんな回りくどいことはしないのが普通だけど、こちらを信用してくれているのかもしれない。そして噂を聞いていたら、多分そいつのことをここに当てはめるはずだ、一度ぐらいは。
今日は当番があるから休んでいなければ、先輩が誰かと変わっていなければ会える。例え無視されたとしても、表情から返事を貰える。
「先輩、こんにちは」
来ていたことに驚いたけど、わざといつも通りに声をかけた。何も無かったかのように。
でも先輩の顔は晴れなかった。携帯も本も持っていない。静かに腕を組んでいる。
「なんだか難しい顔をされていますが、何かありましたか? あんまり姿を見られなかったので、お休みかと思っていました。体調を崩されていたなら、そんなときにメールしてすみません」
「……っ」
「僕の文章が悪いのか、先輩が見落としてしまったのかは分かりませんが、お返事をいただけなかったので勝手に言いますよ。先輩に紹介したいのは僕の恋人です。今度の人はわざと付き合ったとか、他の人に嫉妬させたいとかじゃないです。ちゃんと好きになったんですよ、男の恋人ですけどね」
さすがに驚いたのか、やっとこっちに向いてくれた。もう自分は癖で微笑んでいるのか、ただ面白いのか分からずに笑ってしまう。
「ああ、こんな話ばっかりしてすいません。いつも面倒なことに巻き込んでしまいますね。でも先輩にお話があるので、これが終わったら時間を貰えますか? もう少しだけ付き合ってください」
明らかに身が入っていない先輩に変わり、いつも以上に利用者のいない暇な時間を終わらせた。
あれきり一言も交わしていない先輩を連れて、暗くなった下駄箱まで歩く。他に生徒はいない。外に出て、目立たない場所に連れていった。
「……今度はどう思いましたか? 気持ち悪いですかね。まぁ最初はどうでもいい奴でしたよ。ストーカー紛いのこともしてたし。でもそいつがだんだん自分と似ていることに気づいて……それから好きになったんだと思います」
「……俺には、関係ないだろ」
また目を合わせてくれない。一呼吸おいてゆっくり、はっきりと伝えた。
「ありますよ。だって……僕は先輩のことが、好きなんですから」
「……はっ?」
「好きだったんですよ。一年前から。初めて一緒に居て心地良い人でした。楽、でした。僕はどうやら心のパーソナルスペースがとても狭いようです。両親に反抗するつもりでここに入学したら、さらっと突き放されまして、それから今まで以上に何に対しても興味を無くしていきました。それは人間関係という部分が一番大きかった。皆どうでも良かった……先輩もそうだったんじゃないですか。だから波長が合ったんですよ。触れられたくない部分をお互い触れないようにして。……でも僕が壊した。好きになったから、ワガママで壊しました。彼女を作ったのも、先輩に気にされたくて……、なのに……っ」
胸から抉り出そうな何かを必死に押さえた。呼吸が不規則になる。
「先輩のこと……好きじゃなくなりそうなんですよ! 嫌いじゃないけど、自分の中で熱が冷めていくのが分かる。どうしてだ、あんなに……好きだったのにっ! 見てるだけで、話せただけで嬉しかったのに……っ、時間が経てば変わるんですか? その時の気持ちは嘘になるんですか? あの頃はって……冷静になったり、経験を重ねていく内に、この時のことはダメだった思い出になるんですか? なんで好きとか嫌いとか、気持ちが変わっていくんですか。 ずっと好きでいたいのに……何かがせき止めている。好きと嫌いが……同時にいたら、どうすればいいんですか……っ」
叫ぶうちに勝手に涙が出ていた。こんなこと望んでいないのに。
「僕は、自分が嫌いで嫌いで……なのに傷つきたくないっ、結局は自分しか好きになれないんですよ……嫌いと好きは反対じゃないんですか! 似た部分があったから、そんなところが大嫌いで愛おしくなる……っ、また嫌いになったり、好きになったり、ぐちゃぐちゃだ。……どうしたら、何をすれば母と父は僕を好きになってくれましたか? 受験に落ちても、どこかで期待してた。最後の賭けだった。それは……全部僕の負けだった。だからもう嫌だ、そんなものに……不確定な感情に振り回されたくない……!」
「三上……」
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