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8話 魔道士の国
10.フィリップの情報
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買い物を終え、レジに並ぶ。先程の店長が会計をしていたのだが、本当に半額になった。この買い物のしわ寄せは誰へ行くのだろうか。袋詰めをしていた店長さんが不意に手を止め、ちらとアロイスを見やる。
「そっちのお連れ様は、えー、もしかして、騎士か何かですか?」
メイヴィスもまた、背後を見た。アロイスではなく、自分の後にレジに並んだ人がいないかどうかを確認したのだ。残念な事に、疎らにいる店内のお客達は未だ買い物をしており、会計する気は無いようだった。
仕方ないので店長の問いに答える。どことなく詰るような一言だったので、言葉を慎重に選んでだ。
「あ、はい。私の保護者的な人なんですけど……。何かマズイんですか?」
「ああ、いやいや! 見るからに魔道職じゃなさそうなので、どうして素材屋に来たのかと疑問に思っていまして!」
「そ、そうなんですか? 彼は私の護衛をしてくれていて、その、女性の一人暮らしって何かと物騒だし?」
「そうでしたか! いやいや、すいません。何分、ヴァレンディアは魔道士の国。何故どこぞの騎士サマがうちの店にいるのかと、警戒してしまって。いやあ、失礼しました。これ、品物です。良いヴァレンディア生活を!」
そちらから話し掛けて来たにも関わらず、押し付けられるように袋を渡される。メイヴィスはそれをローブの中に仕舞うと、一応は店長に半額の礼を言って店の外へ出た。
出て、もう一度店の方を振り返りアロイスに声を掛ける。
「何でさっきの店長さん、あんな感じだったんでしょうかね?」
「……確信が持てないから何とも言えないが、ヴァレンディアのカラクリが分かってきたな」
「え? そ、そうなんですか? 私にも何の事か教えて下さいよ」
「いや、実際にそうだと根拠がある訳でもない。俺の推測は机上の空論に過ぎないからな。分かった事があれば、教えよう。ただ、この国において俺は個人行動を慎んだ方が良さそうだ」
「……?」
この後、更に店を2軒、3軒回ったがどこへ行っても未来の錬金術師と持て囃される結果となった。かなり安くで素材が大量に揃ったし、喜ばしい事のはずなのだが釈然としない気持ちの方が勝る。
「アロイスさん、フィリップさんの館に行ってみますか? 着く頃には日も沈んでるでしょうし」
「そうだな。俺も、彼には個人的に聞きたい事がある」
今からはアトノコンとやらの情報収集だ。報酬が高額だったし、素材も初めて見る素材なので是非とも有力な情報が欲しいところである。
***
日がどっぷりと沈み、辺りが暗闇に包まれる頃。ようやくメイヴィスは館へ到着した。明かりが灯っているのが分かる。
「お帰りなさいませ。旦那様に用事ですか?」
ドアをノックするより早く、玄関からシオンが出て来た。光の加減だろうか、その双眸は爛々と輝いているようにも見える。
「はい。ちょっとフィリップ……様に、お尋ねしたい事があって」
「ええ、承知致しました。旦那様は既にお目覚めになっております。他に用件が無ければ、すぐにお会い出来るはずです」
シオンに招かれるまま、館へ入る。静謐な空気が満ちたそこは、2人で住むには些か広すぎるようにも感じた。
廊下を曲がると、丁度部屋から出て来ていたフィリップその人に遭遇。少しだけ驚いた顔をした館の主は「どうかしたのか?」、とだけ訊ねた。
「あ、その、少し訊きたい事があって……。今お時間良いですか?」
「構わん。その話は長くなるのか? 長話をするつもりならば、客間に移動するが」
「あっ、いや。ただ、アトノコンについて知っている事を教えて頂きたいだけなんです」
「アトノコン? ああ、あの、シルベリア国境付近に出る魔物か。お前たちの住む場所にはいないのか?」
「いませんでした」
そうか、頷いたフィリップは腕を組むと必要な情報をペラペラと話始めた。
「アトノコンは鉱石系の魔物だ。言うまでも無く、物理的な攻撃で倒すのは骨が折れるだろうな。奴等は体内に液袋を持っていて、吐き出す液で全身をコーティングしている。そのコーティングされた物質を差して、『アトノコン』と呼ばれているようだな」
「物理で倒すのは難しい……」
「呑気に魔物狩りか?」
「いえ、素材収拾です」
「そうか。では、液袋は中身ではなく袋ごと採集する事を勧める。アトノコンは大気に触れると一瞬で固まるぞ」
「そうですか、えーっと、分かりました! ありがとうございます」
「構わん」
――それで、とフィリップの視線がメイヴィスを通り越しアロイスへと向けられた。その青い双眸が可笑しそうに細められる。
「お前はどうだった? ヴァレンディアは」
「そっちのお連れ様は、えー、もしかして、騎士か何かですか?」
メイヴィスもまた、背後を見た。アロイスではなく、自分の後にレジに並んだ人がいないかどうかを確認したのだ。残念な事に、疎らにいる店内のお客達は未だ買い物をしており、会計する気は無いようだった。
仕方ないので店長の問いに答える。どことなく詰るような一言だったので、言葉を慎重に選んでだ。
「あ、はい。私の保護者的な人なんですけど……。何かマズイんですか?」
「ああ、いやいや! 見るからに魔道職じゃなさそうなので、どうして素材屋に来たのかと疑問に思っていまして!」
「そ、そうなんですか? 彼は私の護衛をしてくれていて、その、女性の一人暮らしって何かと物騒だし?」
「そうでしたか! いやいや、すいません。何分、ヴァレンディアは魔道士の国。何故どこぞの騎士サマがうちの店にいるのかと、警戒してしまって。いやあ、失礼しました。これ、品物です。良いヴァレンディア生活を!」
そちらから話し掛けて来たにも関わらず、押し付けられるように袋を渡される。メイヴィスはそれをローブの中に仕舞うと、一応は店長に半額の礼を言って店の外へ出た。
出て、もう一度店の方を振り返りアロイスに声を掛ける。
「何でさっきの店長さん、あんな感じだったんでしょうかね?」
「……確信が持てないから何とも言えないが、ヴァレンディアのカラクリが分かってきたな」
「え? そ、そうなんですか? 私にも何の事か教えて下さいよ」
「いや、実際にそうだと根拠がある訳でもない。俺の推測は机上の空論に過ぎないからな。分かった事があれば、教えよう。ただ、この国において俺は個人行動を慎んだ方が良さそうだ」
「……?」
この後、更に店を2軒、3軒回ったがどこへ行っても未来の錬金術師と持て囃される結果となった。かなり安くで素材が大量に揃ったし、喜ばしい事のはずなのだが釈然としない気持ちの方が勝る。
「アロイスさん、フィリップさんの館に行ってみますか? 着く頃には日も沈んでるでしょうし」
「そうだな。俺も、彼には個人的に聞きたい事がある」
今からはアトノコンとやらの情報収集だ。報酬が高額だったし、素材も初めて見る素材なので是非とも有力な情報が欲しいところである。
***
日がどっぷりと沈み、辺りが暗闇に包まれる頃。ようやくメイヴィスは館へ到着した。明かりが灯っているのが分かる。
「お帰りなさいませ。旦那様に用事ですか?」
ドアをノックするより早く、玄関からシオンが出て来た。光の加減だろうか、その双眸は爛々と輝いているようにも見える。
「はい。ちょっとフィリップ……様に、お尋ねしたい事があって」
「ええ、承知致しました。旦那様は既にお目覚めになっております。他に用件が無ければ、すぐにお会い出来るはずです」
シオンに招かれるまま、館へ入る。静謐な空気が満ちたそこは、2人で住むには些か広すぎるようにも感じた。
廊下を曲がると、丁度部屋から出て来ていたフィリップその人に遭遇。少しだけ驚いた顔をした館の主は「どうかしたのか?」、とだけ訊ねた。
「あ、その、少し訊きたい事があって……。今お時間良いですか?」
「構わん。その話は長くなるのか? 長話をするつもりならば、客間に移動するが」
「あっ、いや。ただ、アトノコンについて知っている事を教えて頂きたいだけなんです」
「アトノコン? ああ、あの、シルベリア国境付近に出る魔物か。お前たちの住む場所にはいないのか?」
「いませんでした」
そうか、頷いたフィリップは腕を組むと必要な情報をペラペラと話始めた。
「アトノコンは鉱石系の魔物だ。言うまでも無く、物理的な攻撃で倒すのは骨が折れるだろうな。奴等は体内に液袋を持っていて、吐き出す液で全身をコーティングしている。そのコーティングされた物質を差して、『アトノコン』と呼ばれているようだな」
「物理で倒すのは難しい……」
「呑気に魔物狩りか?」
「いえ、素材収拾です」
「そうか。では、液袋は中身ではなく袋ごと採集する事を勧める。アトノコンは大気に触れると一瞬で固まるぞ」
「そうですか、えーっと、分かりました! ありがとうございます」
「構わん」
――それで、とフィリップの視線がメイヴィスを通り越しアロイスへと向けられた。その青い双眸が可笑しそうに細められる。
「お前はどうだった? ヴァレンディアは」
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