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8話 魔道士の国
15.危険物のレッテル
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***
午前7時。
アトノコン討伐を完了し、店の2階で仮眠を取ったメイヴィスは起き上がり、地下の工房へ移動していた。かなり眠いがそれ以上にやる事が押している。
具体的に言うと、この作業を早急に終えて一度ギルドへ戻りたい。というのも、アロイスの武器欠けを直せる鍛冶屋がこの国には無いのだ。ならば、ギルドへ戻ってエルトンの工房で打ち直して貰った方が良い武器になる。
それに、アロイスの怪我。本人は「まあ、大した怪我じゃないな。魔物狩りくらいなら簡単だろう。それより武器が欠けている方が重大な問題だ」、などと宣っていた。しかし、明らかに放っておくと危険な事になりそうな怪我なので療養も兼ねて、本当に一度戻りたい。
では、今後の予定だ。
まず当初の目的だったアトノコン製の杖を型に流し入れる。作るのに数日かかりそうなので、それが固まるのを待つ間に一度ギルドへ帰還。以上。
「つってもこれ、すぐ固まるんだよね」
一滴、小さな皿の上に液袋からアトノコンを垂らす。蜂蜜のように滑らかなそれは、空気に触れておよそ3秒で固まるのだ。あの、魔物・アトノコンが纏っていた表皮のようにそこそこな強度を持ったそれへ。
端的に言って、これで杖を作ろうと思ったら3秒で全ての作業を終わらせる、という確実に不可能な方法を取らなければならない。
まずは何故、液袋の中でアトノコンは硬質化しないのかを調べる必要がある。
「メヴィ、少し良いか?」
「うわっ!?」
唐突に現れたアロイスに目を剥く。驚いたメイヴィスの顔を見た彼はやや苦笑した。多少なりとも呆れが含まれているのが分かる。
「ノックしたが、返事が無かったからな。作業中だったか」
「ああいえ、えぇっと、どうかしましたか?」
「診療所へ一緒に行ってくれないか? 先程、行ってみたのだが、信じられない程金を取られそうでな。やはり魔道士以外がこの街で生きるのは難しいようだ」
「ファッ!? い、いやいやいや! 人が怪我してんのに、そんな対応!?」
まずい、ここではアロイスが怪我をした場合、最低限の治療も受けられないのか。やはり一度ギルドに帰った方が良い。素直に金を払ったとしても、どんな嫌がらせを受けるか分かったものではないようだ。
「しかし急ぎではない。お前の作業が終わってからで良いから、頼めないだろうか?」
「アロイスさん、その診療所、絶対に危険だと思います。私、今日中にアトノコンの解析を終えるつもりなのでコゼット・ギルドに帰ってから診て貰いませんか? そこまで待つのは危険でしょうか?」
「そうだな……いや、フィリップを頼ってみる。あれも高名な魔道士なんだろう?」
「それは、私に聞かれても……」
「明日、ギルドに戻るのなら今日の夜にフィリップに会い、朝日が昇る前にここへ戻ってくればいいか。なら、そのプランで行こう」
――今日もナチュラル徹夜かあ……。
しかもアトノコンの解析が夜までに終わる事前提。微妙にエリート思考な彼を否定はしないが、やはり住む世界が違うと思いざるを得ない。
「アロイスさんは今からどうしますか? すぐに対応する方法が見つからない時はかなり時間が掛かると思いますけど」
「やる事も無いからな。ここで安静にしておくさ」
現場監督が着いてしまった。早急に作業を終えなければ。
まずは戸棚に入れていた危険物のレッテルが貼られた液体を取り出す。これは本来、『溶けるはずのないもの』を溶かす為の養液だ。あまりに何でも溶かすし、材料がシビアに集めにくい物ばかりなので使わない事の方が多い。
とはいえ、魔物の体内から分泌される液体、なんかを溶かせる例は少ないので本当に物は試しレベルだ。これで溶かせてしまうと今日やるべき事はコンプリート――
「……あっ」
硬質化したアトノコンが乗った小皿。それに危険物液を掛けると瞬く間に液体に逆戻りした。はい、今日のノルマ達成。
「どうかしたのか?」
「いや、もうアトノコン解析終わりそうです。もうちょっと低コストで溶かせる方法は無いか探ってみます」
この危険物用液に混ざっている材料を脳内で反芻する。これの何が、こんなにも簡単にアトノコンを溶かしたのだろうか。
午前7時。
アトノコン討伐を完了し、店の2階で仮眠を取ったメイヴィスは起き上がり、地下の工房へ移動していた。かなり眠いがそれ以上にやる事が押している。
具体的に言うと、この作業を早急に終えて一度ギルドへ戻りたい。というのも、アロイスの武器欠けを直せる鍛冶屋がこの国には無いのだ。ならば、ギルドへ戻ってエルトンの工房で打ち直して貰った方が良い武器になる。
それに、アロイスの怪我。本人は「まあ、大した怪我じゃないな。魔物狩りくらいなら簡単だろう。それより武器が欠けている方が重大な問題だ」、などと宣っていた。しかし、明らかに放っておくと危険な事になりそうな怪我なので療養も兼ねて、本当に一度戻りたい。
では、今後の予定だ。
まず当初の目的だったアトノコン製の杖を型に流し入れる。作るのに数日かかりそうなので、それが固まるのを待つ間に一度ギルドへ帰還。以上。
「つってもこれ、すぐ固まるんだよね」
一滴、小さな皿の上に液袋からアトノコンを垂らす。蜂蜜のように滑らかなそれは、空気に触れておよそ3秒で固まるのだ。あの、魔物・アトノコンが纏っていた表皮のようにそこそこな強度を持ったそれへ。
端的に言って、これで杖を作ろうと思ったら3秒で全ての作業を終わらせる、という確実に不可能な方法を取らなければならない。
まずは何故、液袋の中でアトノコンは硬質化しないのかを調べる必要がある。
「メヴィ、少し良いか?」
「うわっ!?」
唐突に現れたアロイスに目を剥く。驚いたメイヴィスの顔を見た彼はやや苦笑した。多少なりとも呆れが含まれているのが分かる。
「ノックしたが、返事が無かったからな。作業中だったか」
「ああいえ、えぇっと、どうかしましたか?」
「診療所へ一緒に行ってくれないか? 先程、行ってみたのだが、信じられない程金を取られそうでな。やはり魔道士以外がこの街で生きるのは難しいようだ」
「ファッ!? い、いやいやいや! 人が怪我してんのに、そんな対応!?」
まずい、ここではアロイスが怪我をした場合、最低限の治療も受けられないのか。やはり一度ギルドに帰った方が良い。素直に金を払ったとしても、どんな嫌がらせを受けるか分かったものではないようだ。
「しかし急ぎではない。お前の作業が終わってからで良いから、頼めないだろうか?」
「アロイスさん、その診療所、絶対に危険だと思います。私、今日中にアトノコンの解析を終えるつもりなのでコゼット・ギルドに帰ってから診て貰いませんか? そこまで待つのは危険でしょうか?」
「そうだな……いや、フィリップを頼ってみる。あれも高名な魔道士なんだろう?」
「それは、私に聞かれても……」
「明日、ギルドに戻るのなら今日の夜にフィリップに会い、朝日が昇る前にここへ戻ってくればいいか。なら、そのプランで行こう」
――今日もナチュラル徹夜かあ……。
しかもアトノコンの解析が夜までに終わる事前提。微妙にエリート思考な彼を否定はしないが、やはり住む世界が違うと思いざるを得ない。
「アロイスさんは今からどうしますか? すぐに対応する方法が見つからない時はかなり時間が掛かると思いますけど」
「やる事も無いからな。ここで安静にしておくさ」
現場監督が着いてしまった。早急に作業を終えなければ。
まずは戸棚に入れていた危険物のレッテルが貼られた液体を取り出す。これは本来、『溶けるはずのないもの』を溶かす為の養液だ。あまりに何でも溶かすし、材料がシビアに集めにくい物ばかりなので使わない事の方が多い。
とはいえ、魔物の体内から分泌される液体、なんかを溶かせる例は少ないので本当に物は試しレベルだ。これで溶かせてしまうと今日やるべき事はコンプリート――
「……あっ」
硬質化したアトノコンが乗った小皿。それに危険物液を掛けると瞬く間に液体に逆戻りした。はい、今日のノルマ達成。
「どうかしたのか?」
「いや、もうアトノコン解析終わりそうです。もうちょっと低コストで溶かせる方法は無いか探ってみます」
この危険物用液に混ざっている材料を脳内で反芻する。これの何が、こんなにも簡単にアトノコンを溶かしたのだろうか。
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