93 / 139
10話 出張! シルベリア!
03.人魚の伝説がある村
しおりを挟む
しかし、まずは当初の目的である錬金素材を探すべく、メイヴィス達は素材屋に入った。多種多様、そして外から来た客と言うより住んでいる住人向けの商品。主に、シルベリア外部からの素材を置いているコーナーが幅を占めている。
とはいえ、当然シルベリアグッズが置いていない訳もなく、店のひんやりとした一角に足を向けた。
雪の結晶を手の平くらいのサイズに巨大化させたような素材、棚に置かれているにも関わらず冷気を放ち続ける氷、飴のように甘い匂いを漂わせている氷――
「美しいものだな。シルベリアの特産品か?」
「はい。やっぱり雪が降り続ける場所って、かなり珍しいじゃないですか。採れる素材も珍しいものばかりです」
「そういうものか」
「勿論、シルベリアだけじゃなくて色んな地方にも珍しい素材ってたくさんあるんですけどね」
「はは、次は世界一周でもしてみるか? メヴィ」
「お金が無い人間はそれすらも選べないですからね……」
本格的にお買い物を開始すべく、篭に次から次へと素材を放り込む。全てスポンサー様からの研究資金だ。彼は金遣いが荒いタイプの富豪なので、足りなければ言え、というシンプル過ぎる指示まで頂いている。なお、月々の資金以上の金を強請った事は無い。恐ろし過ぎて。
「こういった類の素材は、どんなアイテムになる?」
「そうですねえ……。氷魔法の効果をアップさせたり、冷感アイテムを作ったり、色々です。でも、氷の素材ってそう言えばあまり使い道が無いかもしれないです。あまり思い付かないっていうか。綺麗なのに残念です」
「というか、素材にしてしまえば原形はほぼ残らないだろうに」
「このまま武器加工、っていう手もありますよ。というか、最早芸術の域ですけど。シノさんとかそういうのが得意だったはず。装飾武器は、エルトンさんよりシノさんに頼った方が良いってみんな言ってますし」
それでも素材の原形は留めていないか。あくまで、武器に付随する能力をデザインしただけで、素材そのものは消費されて無くなっている訳だし。しかし、元の素材をモデルにするシノの技術には舌を巻くばかりだ。
性格の割に、仕事は繊細。手先が器用。それが彼女である。
買い物を終え、店から出る。買った物は全てローブにしまったので手ぶらだ。ぐるりと周囲を見回したアロイスがぽつりと呟いた。
「さて、どこへ行ったものかな。事前知識も無く、行き当たりばったりで来てしまったが……」
「アロイスさん、どこか行きたい所があったんですか?」
「いや、それが無いんだ。観光するにしても、徒歩で行ける場所に何かあるだろうか……」
――本当に行き当たりばったりなんだなあ……。
驚きの計画力の無さだが、本人は至って楽しそうだ。一人旅とか向いているのではないだろうか。この、計画性の無さが楽しめるのであれば。
が、ここで観光案内所なる場所を発見した。流石は千年の歴史を持つ大国。外からのお客対策もバッチリである。
早速、店先に並べられているパンフレットをアロイスが手に取る。難しい顔でそれを見ていた彼は、一点を指さすと満足そうに頷いた。
「――氷の湖がある、人魚村はどうだろうか?」
「へぇ、凍っているんですか、その湖」
「これに載っている情報によると、湖の半分だけ氷が張るそうだ」
「行きます! それで、場所はどこなんですか?」
「ここから北へ5キロだ」
「結構距離ありますね」
が、アロイスは行く気満々らしい。すでに地図を頼りに街から出ようとしている。勿論、止める気も無いのでメイヴィスはその後に続いた。それとなく会話が続く。
「人魚村って、何だか神秘的な感じですね」
「本来はイシスイ村、といった名前だったらしい。が、人魚伝説が爆発的に広まった事により人魚村と呼ばれるようになったそうだ」
「湖なのに人魚? 海とかにいそうなイメージありますけどね」
「この湖には海水が入り込んでいるそうだぞ」
「というか、人魚って。お伽話の中の存在でしかないですよね」
溢れた呟きに対し、アロイスは低く笑った。
「さあ? 存外、本当に居るのかもしれないぞ。メヴィ。世の中なんて何が起こってもおかしくはないさ。現に、フィリップ殿は吸血鬼だっただろう?」
「えっ、あの人が言っている事を真に受けているんですか? 日光が浴びられない、ご病気かもしれないじゃないですか!」
「ふふ、まあそれも、おいおいな。しかし、俺が騎士やっていたという経験上、人間と獣人、そして魚人以外の種が、確かに存在していると考えられる」
その言葉を聞いて、一つ思いうかんだ事象がある。
そういえば、どうして『人間・獣人・魚人』は基本三種と呼ばれているのだろうか。そういうものだと思っていたが、これでは『基本』以外の種族が居ると示唆しているかのようだ。
そんな事を言ったら、うちのギルドのマスターも人間か怪しいし、スポンサー殿も人間味が薄い。案外、そういった種族不明者は巷に溢れ返っているのかもしれないな、とメイヴィスはボンヤリそう思った。
とはいえ、当然シルベリアグッズが置いていない訳もなく、店のひんやりとした一角に足を向けた。
雪の結晶を手の平くらいのサイズに巨大化させたような素材、棚に置かれているにも関わらず冷気を放ち続ける氷、飴のように甘い匂いを漂わせている氷――
「美しいものだな。シルベリアの特産品か?」
「はい。やっぱり雪が降り続ける場所って、かなり珍しいじゃないですか。採れる素材も珍しいものばかりです」
「そういうものか」
「勿論、シルベリアだけじゃなくて色んな地方にも珍しい素材ってたくさんあるんですけどね」
「はは、次は世界一周でもしてみるか? メヴィ」
「お金が無い人間はそれすらも選べないですからね……」
本格的にお買い物を開始すべく、篭に次から次へと素材を放り込む。全てスポンサー様からの研究資金だ。彼は金遣いが荒いタイプの富豪なので、足りなければ言え、というシンプル過ぎる指示まで頂いている。なお、月々の資金以上の金を強請った事は無い。恐ろし過ぎて。
「こういった類の素材は、どんなアイテムになる?」
「そうですねえ……。氷魔法の効果をアップさせたり、冷感アイテムを作ったり、色々です。でも、氷の素材ってそう言えばあまり使い道が無いかもしれないです。あまり思い付かないっていうか。綺麗なのに残念です」
「というか、素材にしてしまえば原形はほぼ残らないだろうに」
「このまま武器加工、っていう手もありますよ。というか、最早芸術の域ですけど。シノさんとかそういうのが得意だったはず。装飾武器は、エルトンさんよりシノさんに頼った方が良いってみんな言ってますし」
それでも素材の原形は留めていないか。あくまで、武器に付随する能力をデザインしただけで、素材そのものは消費されて無くなっている訳だし。しかし、元の素材をモデルにするシノの技術には舌を巻くばかりだ。
性格の割に、仕事は繊細。手先が器用。それが彼女である。
買い物を終え、店から出る。買った物は全てローブにしまったので手ぶらだ。ぐるりと周囲を見回したアロイスがぽつりと呟いた。
「さて、どこへ行ったものかな。事前知識も無く、行き当たりばったりで来てしまったが……」
「アロイスさん、どこか行きたい所があったんですか?」
「いや、それが無いんだ。観光するにしても、徒歩で行ける場所に何かあるだろうか……」
――本当に行き当たりばったりなんだなあ……。
驚きの計画力の無さだが、本人は至って楽しそうだ。一人旅とか向いているのではないだろうか。この、計画性の無さが楽しめるのであれば。
が、ここで観光案内所なる場所を発見した。流石は千年の歴史を持つ大国。外からのお客対策もバッチリである。
早速、店先に並べられているパンフレットをアロイスが手に取る。難しい顔でそれを見ていた彼は、一点を指さすと満足そうに頷いた。
「――氷の湖がある、人魚村はどうだろうか?」
「へぇ、凍っているんですか、その湖」
「これに載っている情報によると、湖の半分だけ氷が張るそうだ」
「行きます! それで、場所はどこなんですか?」
「ここから北へ5キロだ」
「結構距離ありますね」
が、アロイスは行く気満々らしい。すでに地図を頼りに街から出ようとしている。勿論、止める気も無いのでメイヴィスはその後に続いた。それとなく会話が続く。
「人魚村って、何だか神秘的な感じですね」
「本来はイシスイ村、といった名前だったらしい。が、人魚伝説が爆発的に広まった事により人魚村と呼ばれるようになったそうだ」
「湖なのに人魚? 海とかにいそうなイメージありますけどね」
「この湖には海水が入り込んでいるそうだぞ」
「というか、人魚って。お伽話の中の存在でしかないですよね」
溢れた呟きに対し、アロイスは低く笑った。
「さあ? 存外、本当に居るのかもしれないぞ。メヴィ。世の中なんて何が起こってもおかしくはないさ。現に、フィリップ殿は吸血鬼だっただろう?」
「えっ、あの人が言っている事を真に受けているんですか? 日光が浴びられない、ご病気かもしれないじゃないですか!」
「ふふ、まあそれも、おいおいな。しかし、俺が騎士やっていたという経験上、人間と獣人、そして魚人以外の種が、確かに存在していると考えられる」
その言葉を聞いて、一つ思いうかんだ事象がある。
そういえば、どうして『人間・獣人・魚人』は基本三種と呼ばれているのだろうか。そういうものだと思っていたが、これでは『基本』以外の種族が居ると示唆しているかのようだ。
そんな事を言ったら、うちのギルドのマスターも人間か怪しいし、スポンサー殿も人間味が薄い。案外、そういった種族不明者は巷に溢れ返っているのかもしれないな、とメイヴィスはボンヤリそう思った。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
義務ですもの。
あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、生命を懸けて鬩ぎ合い、幾度も涙を流す旅路の中で自分の在り方を探す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※基本週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開中(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる