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12話 犬派達の集い
01.旅人と犬
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メイヴィスは久方ぶりにギルド付近にまで里帰りの気分で戻って来ていた。当然アロイスも一緒だ。なお、コゼット・ギルドまで戻って来た理由はただの思い付きだ。既に、ヴァレンディア国には1週間と少し滞在しており、ホームシックに駆られたとも言う。
そして――もう一つ。
呪い騒動ですっかり失念していたが、うっかりメイヴィス自身が飲込んでしまった『人魚の涙』問題。これに関しては特に身体的な被害が出ている訳では無いので、忙しい時には忘却しているのだがふと落ち着いた時など、発作的に気になって仕方が無くなる。
物知りギルドマスター、オーガストであれば何が起きたのか解説してくれるかもしれない。とてもではないが、アロイスに相談する気にはなれなかったが。これ以上、面倒は掛けたくない。
「変わっていないな、町並み。1週間で戻れば変り映えも何も無いと言うものだが」
「変わったのは、私達の方かもしれませんね……」
「ホームシックか、メヴィ? コゼットへ滞在している間は思う存分休むといい」
――優しさが身に染みる。
誰よりも疲れているのはアロイスその人であるはずだというのに、この優しさ。最近は甘えすぎている気がしないでもない。
「みんな、元気してますかねえ――」
長閑な世間話に身を投じようとした、その時だった。
ふらりと現れた男が目の前に立ち塞がったのは。
見上げる程の体格、アロイスと同じぐらいの身長だろうか。顔には目元が一切伺えない、黒々としたサングラスを着用している。絹糸のような金髪が印象的な男性。更に、足下には小さな子供より大きな黄金の毛を纏った犬がいる。可愛い。
一瞬知り合いかとも思ったが、全然知らない人物だ。
普通に関わり合いになってはいけない人種のように感じ、反射的に身構える。一方でアロイスの方はまだ緩やかで穏やかな態度を保っていた。
「ああ、ちょっと聞きたい事があるんだが」
こちらの警戒など余所に、男が口を開く。敵意のようなものは感じられない、至って普通の声音。
「この辺に大きなギルドあるだろ。ちょっと場所が分かんねぇんだが、どの辺にあるか教えてくれねぇか? 見たところ、お前等もギルド関係者だろ」
その問いに答えたのはアロイスだった。物怖じした様子も無く、こちらも全く普通の口調で明確な答えを口にする。
「ああ。確かに俺達はギルド構成員だ。ギルドへ行くと言うのであれば、丁度向かう途中だし一緒に来るか?」
「おっ、助かるぜ。ありがとさん」
「構わないさ。では、行こうか」
――あ、一緒に行く流れかこれ!
勝手に警戒していたが、特に悪い人でも無さそうだ。依頼人かもしれないし、アロイスの言う通り丁度良いだろう。
歩き出すと自然な流れで道中加わった男の話へと話題がシフトしていった。
「ギルドへは何をしに? 依頼か?」
「ああいや、ギルド勤務の親父から急に呼び出されちまってよ」
「そうか。では、我々の臨時的な仲間という見方もあるな」
「まあ、そん時はよろしくな。力仕事くらいなら出来るぜ」
初対面の見本のような会話が右から左へと抜けていく。そんな中、メイヴィスの視線は男にぴったり寄り添って歩いている大きな犬へと釘付けだった。
正直、動物と触れ合う機会はそう多くなかったので新鮮だ。もこもことしていて、手触りが良さそうな生き物。今までは縁の無かった存在。
じっと見ていると飼い主にその様を気付かれてしまった。不意に声を掛けられて肩が跳ねる。
「お嬢ちゃん、アッシュに興味があんのかい?」
「アッシュ?」
「相棒の名前さ」
犬の名前はアッシュと言うらしい。呼ばれたと思ったのか、アッシュは主人の顔を見上げている。忠実そうだ。
「犬と一緒に来たんですか?」
「おうよ。6年前に親父がどっかから貰って来てよ。以降はずっと2人で旅してるぜ。いやあ、退屈しなくていいねえ」
「6年……?」
彼は一体幾つなのだろうか。アロイスと同じか、或いはもう少し若そうに見える。それで6年間旅を? 何歳の時から旅に興じていたのだろうか。不思議な話である。
ただ、具体的には何がどう可笑しいのか突く事も出来なかったので、曖昧な笑みを浮かべた。
「旅ですか。私はまだ、ヴァレンディアくらいにしか行った事無いです」
「旅はいいぜ。特に相棒とする旅は格別だな。一人旅にはもう戻れねぇかもしれないぜ」
――犬を飼う前から一人旅してたの?
この人の事は知れば知る程分からなくなる。あまり触らない方が良いのかもしれない。
そして――もう一つ。
呪い騒動ですっかり失念していたが、うっかりメイヴィス自身が飲込んでしまった『人魚の涙』問題。これに関しては特に身体的な被害が出ている訳では無いので、忙しい時には忘却しているのだがふと落ち着いた時など、発作的に気になって仕方が無くなる。
物知りギルドマスター、オーガストであれば何が起きたのか解説してくれるかもしれない。とてもではないが、アロイスに相談する気にはなれなかったが。これ以上、面倒は掛けたくない。
「変わっていないな、町並み。1週間で戻れば変り映えも何も無いと言うものだが」
「変わったのは、私達の方かもしれませんね……」
「ホームシックか、メヴィ? コゼットへ滞在している間は思う存分休むといい」
――優しさが身に染みる。
誰よりも疲れているのはアロイスその人であるはずだというのに、この優しさ。最近は甘えすぎている気がしないでもない。
「みんな、元気してますかねえ――」
長閑な世間話に身を投じようとした、その時だった。
ふらりと現れた男が目の前に立ち塞がったのは。
見上げる程の体格、アロイスと同じぐらいの身長だろうか。顔には目元が一切伺えない、黒々としたサングラスを着用している。絹糸のような金髪が印象的な男性。更に、足下には小さな子供より大きな黄金の毛を纏った犬がいる。可愛い。
一瞬知り合いかとも思ったが、全然知らない人物だ。
普通に関わり合いになってはいけない人種のように感じ、反射的に身構える。一方でアロイスの方はまだ緩やかで穏やかな態度を保っていた。
「ああ、ちょっと聞きたい事があるんだが」
こちらの警戒など余所に、男が口を開く。敵意のようなものは感じられない、至って普通の声音。
「この辺に大きなギルドあるだろ。ちょっと場所が分かんねぇんだが、どの辺にあるか教えてくれねぇか? 見たところ、お前等もギルド関係者だろ」
その問いに答えたのはアロイスだった。物怖じした様子も無く、こちらも全く普通の口調で明確な答えを口にする。
「ああ。確かに俺達はギルド構成員だ。ギルドへ行くと言うのであれば、丁度向かう途中だし一緒に来るか?」
「おっ、助かるぜ。ありがとさん」
「構わないさ。では、行こうか」
――あ、一緒に行く流れかこれ!
勝手に警戒していたが、特に悪い人でも無さそうだ。依頼人かもしれないし、アロイスの言う通り丁度良いだろう。
歩き出すと自然な流れで道中加わった男の話へと話題がシフトしていった。
「ギルドへは何をしに? 依頼か?」
「ああいや、ギルド勤務の親父から急に呼び出されちまってよ」
「そうか。では、我々の臨時的な仲間という見方もあるな」
「まあ、そん時はよろしくな。力仕事くらいなら出来るぜ」
初対面の見本のような会話が右から左へと抜けていく。そんな中、メイヴィスの視線は男にぴったり寄り添って歩いている大きな犬へと釘付けだった。
正直、動物と触れ合う機会はそう多くなかったので新鮮だ。もこもことしていて、手触りが良さそうな生き物。今までは縁の無かった存在。
じっと見ていると飼い主にその様を気付かれてしまった。不意に声を掛けられて肩が跳ねる。
「お嬢ちゃん、アッシュに興味があんのかい?」
「アッシュ?」
「相棒の名前さ」
犬の名前はアッシュと言うらしい。呼ばれたと思ったのか、アッシュは主人の顔を見上げている。忠実そうだ。
「犬と一緒に来たんですか?」
「おうよ。6年前に親父がどっかから貰って来てよ。以降はずっと2人で旅してるぜ。いやあ、退屈しなくていいねえ」
「6年……?」
彼は一体幾つなのだろうか。アロイスと同じか、或いはもう少し若そうに見える。それで6年間旅を? 何歳の時から旅に興じていたのだろうか。不思議な話である。
ただ、具体的には何がどう可笑しいのか突く事も出来なかったので、曖昧な笑みを浮かべた。
「旅ですか。私はまだ、ヴァレンディアくらいにしか行った事無いです」
「旅はいいぜ。特に相棒とする旅は格別だな。一人旅にはもう戻れねぇかもしれないぜ」
――犬を飼う前から一人旅してたの?
この人の事は知れば知る程分からなくなる。あまり触らない方が良いのかもしれない。
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