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13話 獣達の庭園
06.アロイスのモーニングサービス
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早急に宿へ戻ったメイヴィスは目頭を押さえ、天井を仰いでいた。
というのも、図書館から戻ってすぐ昼もそこそこに借りてきた本を読む事にしたのだが、まあこれが長いのなんの。
結局、連れも居る事だし早く用事を済ますべきだと机に張り付き、活字を読み続ける事7時間。借りてきた本の半分を消化する事に成功した。
と言うわけで、現在の時刻は午後10時。なお、夕飯は気を利かせて宿屋の女将さんが持って来てくれたパンとミルクしか食べていない。一段落したら夜食を摂りに行くと言ったが、とんだ詐欺になってしまった。
しかし、その甲斐あってか召喚術の原理そのものは理解出来た。扱えるかは別問題として、それの何たるかは知識的な意味で理解出来たのだ。我ながら、ここ最近で一番の頑張りと言える。
主要部分をメモしつつ、ちらっとこの後の事を考える。この知識が忘れ去られる前にヴァレンディアへ戻り、アイテム作成に取り掛かる必要があるだろう。
であれば、夜が明けた瞬間に図書館へ行き本を返し、そして出立。その流れが好ましい。とはいえ、この計画だと無茶な時間に起床する必要性がある。アロイスに要相談と言ったところか。
時間はかなり遅いが、結局宿に戻ってからこっち、彼とは顔を合わせていない。失礼を承知で明日の事を伝えておくべきだろう。
日付が変わる前にはアロイスへ会いに行くべきだ。
使われ過ぎてヘロヘロの脳を顧みる事無く、上着を1枚だけ羽織ったメイヴィスは自室を後にした。護衛騎士とは隣同士の部屋にして貰っているのだ。重装備で行く程の距離は無い。
すぐ隣の部屋を遠慮がちにノックする。寝ていたら仕方が無い。いつも通りの時間に起床し、出来る限り早く帰れるようにしよう。
プランBを思い浮かべていると、急にドアが開かれる。はっとして顔を上げた瞬間――心臓が止まるかと思った。
「あっ、あ、アロイスさん!」
「メヴィか。何か用があるんじゃ無かったのか? 随分と驚いているようだが」
思わず挙動不審になってしまったのを、適当に言い繕って誤魔化す。
そして、逸る心臓を押さえながらそうっとアロイスを見上げた。
――改めて見てみるも、やはり彼はどこからどう見たって風呂上がりのようだった。髪を乾かさないのだろう。やや長めの髪からはポタポタと細く水が滴っている。首に掛けたタオルでさえ神々しく見えるのだから不思議だ。
水も滴るなんとやら。心臓に悪い光景を目の当たりにしつつ、驚愕の出来事で用事の部分が吹っ飛んだので肝心の用事が口から出て来ない。あたふたとしている間に、アロイスの方からアクションを起こした。
「何だか分からないが、用事があるのか? 廊下ではなんだ、中に入ると良い。とは言っても、宿だからな。飲み物くらいしか用意は出来ないが」
「あ、ありがとうございます……!!」
招かれるまま、部屋へと入る。彼愛用の大剣が壁に立て掛けてあるのが見えた。まさにアロイスが使っている部屋、という気がして更に頭が混乱する。
「何だか大変そうだった。午後7時と、8時半頃に何度か呼びに行ったが全然気付いて貰えなかった。勉強も良いが、あまり無理はしない方が良い」
「えっ、何度か来たんですか?」
「ああ。返事が無かったから、先に夕食を摂ってしまった。ちゃんと食事はしたのか?」
「え、ええ。まあ……」
咄嗟に嘘を吐いてしまった。
しかし、妙に頭の片隅が冷静になった事により当初の目的が脳内に蘇る。
「ああそうだ、アロイスさん。私、用事があったんです」
「そうだろうな。どうだ、思い出せたか?」
「はい。取り敢えず、借りた本はもう読み終わるので、明日朝一で本を返してヴァレンディアに戻りましょう」
「随分と急ぎだな。慌てなくて良いぞ」
「あ、いや、アロイスさんもずっとシルベリアにいたって、やる事無いでしょう?」
「お前がそう言うのであれば、そうするが……。あまり俺の事は気にしなくて良い。護衛とは、元来そういうものだ。とにかく、その予定にするのならば起きた後はお前を起こしに行くべきだろうか、メヴィ?」
正直なところ、アロイスに合わせて早起きが出来るかと言われれば自信は無い。なので、メイヴィスはそのサービスを謹んで受けることにした。
「はい、起こして貰って良いですか?」
「ふふ、分かった。では、起こしに行くとしよう」
よし、これで明日寝坊する事は無いはずだ。
早急に宿へ戻ったメイヴィスは目頭を押さえ、天井を仰いでいた。
というのも、図書館から戻ってすぐ昼もそこそこに借りてきた本を読む事にしたのだが、まあこれが長いのなんの。
結局、連れも居る事だし早く用事を済ますべきだと机に張り付き、活字を読み続ける事7時間。借りてきた本の半分を消化する事に成功した。
と言うわけで、現在の時刻は午後10時。なお、夕飯は気を利かせて宿屋の女将さんが持って来てくれたパンとミルクしか食べていない。一段落したら夜食を摂りに行くと言ったが、とんだ詐欺になってしまった。
しかし、その甲斐あってか召喚術の原理そのものは理解出来た。扱えるかは別問題として、それの何たるかは知識的な意味で理解出来たのだ。我ながら、ここ最近で一番の頑張りと言える。
主要部分をメモしつつ、ちらっとこの後の事を考える。この知識が忘れ去られる前にヴァレンディアへ戻り、アイテム作成に取り掛かる必要があるだろう。
であれば、夜が明けた瞬間に図書館へ行き本を返し、そして出立。その流れが好ましい。とはいえ、この計画だと無茶な時間に起床する必要性がある。アロイスに要相談と言ったところか。
時間はかなり遅いが、結局宿に戻ってからこっち、彼とは顔を合わせていない。失礼を承知で明日の事を伝えておくべきだろう。
日付が変わる前にはアロイスへ会いに行くべきだ。
使われ過ぎてヘロヘロの脳を顧みる事無く、上着を1枚だけ羽織ったメイヴィスは自室を後にした。護衛騎士とは隣同士の部屋にして貰っているのだ。重装備で行く程の距離は無い。
すぐ隣の部屋を遠慮がちにノックする。寝ていたら仕方が無い。いつも通りの時間に起床し、出来る限り早く帰れるようにしよう。
プランBを思い浮かべていると、急にドアが開かれる。はっとして顔を上げた瞬間――心臓が止まるかと思った。
「あっ、あ、アロイスさん!」
「メヴィか。何か用があるんじゃ無かったのか? 随分と驚いているようだが」
思わず挙動不審になってしまったのを、適当に言い繕って誤魔化す。
そして、逸る心臓を押さえながらそうっとアロイスを見上げた。
――改めて見てみるも、やはり彼はどこからどう見たって風呂上がりのようだった。髪を乾かさないのだろう。やや長めの髪からはポタポタと細く水が滴っている。首に掛けたタオルでさえ神々しく見えるのだから不思議だ。
水も滴るなんとやら。心臓に悪い光景を目の当たりにしつつ、驚愕の出来事で用事の部分が吹っ飛んだので肝心の用事が口から出て来ない。あたふたとしている間に、アロイスの方からアクションを起こした。
「何だか分からないが、用事があるのか? 廊下ではなんだ、中に入ると良い。とは言っても、宿だからな。飲み物くらいしか用意は出来ないが」
「あ、ありがとうございます……!!」
招かれるまま、部屋へと入る。彼愛用の大剣が壁に立て掛けてあるのが見えた。まさにアロイスが使っている部屋、という気がして更に頭が混乱する。
「何だか大変そうだった。午後7時と、8時半頃に何度か呼びに行ったが全然気付いて貰えなかった。勉強も良いが、あまり無理はしない方が良い」
「えっ、何度か来たんですか?」
「ああ。返事が無かったから、先に夕食を摂ってしまった。ちゃんと食事はしたのか?」
「え、ええ。まあ……」
咄嗟に嘘を吐いてしまった。
しかし、妙に頭の片隅が冷静になった事により当初の目的が脳内に蘇る。
「ああそうだ、アロイスさん。私、用事があったんです」
「そうだろうな。どうだ、思い出せたか?」
「はい。取り敢えず、借りた本はもう読み終わるので、明日朝一で本を返してヴァレンディアに戻りましょう」
「随分と急ぎだな。慌てなくて良いぞ」
「あ、いや、アロイスさんもずっとシルベリアにいたって、やる事無いでしょう?」
「お前がそう言うのであれば、そうするが……。あまり俺の事は気にしなくて良い。護衛とは、元来そういうものだ。とにかく、その予定にするのならば起きた後はお前を起こしに行くべきだろうか、メヴィ?」
正直なところ、アロイスに合わせて早起きが出来るかと言われれば自信は無い。なので、メイヴィスはそのサービスを謹んで受けることにした。
「はい、起こして貰って良いですか?」
「ふふ、分かった。では、起こしに行くとしよう」
よし、これで明日寝坊する事は無いはずだ。
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